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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第一章 英雄の器篇
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第七話「チュートリアルⅢ」改済

 それからは、また地味なターンが続いていた。


 そして数ターン後──

 ついに智樹ともきが、新たに覚えるべきルールを再現するための環境が整った。


「よし! いよいよモンスターを進化させるぞ、智樹!」

「進化?」

「ああ。正式には進化召喚っていって、基本的には将棋でいう『成り』と同じ動きなんだけど、クロスレイドにはカードがあるから少し余計に覚えることがあるんだよ」



 クロスレイドでは将棋の成りと同様の行為を『進化召喚』または『進化』と呼んでいる。

 ちなみに捕縛した相手モンスターを自分のユニットとして再利用することを、クロスレイドでは『召喚』と呼んでいるわけだが、進化する場合も形状が変化することから同じように召喚という言葉が付けられているのだ。



「説明は後回しにして、まずは進化召喚してみようか?」

「うん!」


 そう言って金太郎きんたろうの指示どおり角行モンスター〈プテラノ・クィーン〉を飛鳥あすか領域テリトリーへと侵入させる智樹。

 智樹は、飛鳥の領域に侵入した先にいるモンスター〈ハッピー・ラビット〉を捕縛し、その場で〈プテラノ・クィーン〉を裏返して配置した。


 金太郎に教えられたように、台詞も完璧にこなす智樹。

「僕は、お姉ちゃんの歩兵〈ハッピー・ラビット〉を捕縛して領域に侵入──進化召喚する! 現れろ、進化召喚! 〈プテラノクィーン・ブレード〉!」


 智樹の口頭での宣言と、実際の動作。そしてレイドシステムによる補助ナビ。それに飛鳥が従い動作することで、お互いの盤面がシンクロしあう。



 そして智樹の角行〈プテラノ・クィーン〉が進化する──。



 大きな竜巻のエフェクトが〈プテラノ・クィーン〉を包み込んだ。

 その直後──

 そこに現れたのは、全身に刃を身にまとったような姿に変貌した〈プテラノ・クィーン〉の新たなる形態だった。


「うわあ! かっこいい! 僕のモンスターが変身した!」


 飛鳥の領域内で激しく咆哮する智樹のモンスター〈プテラノクィーン・ブレード〉。

 智樹は、進化した自分のモンスターが動いている姿を見て夢中になっている。

 だが進化召喚させるための作業はまだ終わっていない。


「智樹。モンスターが進化したということは、別のモンスターになったってことだ。つまり手もとに置いてある〈プテラノ・クィーン〉のカードも、進化先の〈プテラノクィーン・ブレード〉のカードに変えなきゃならないんだよ」

 説明を続ける金太郎。

「モンスターが進化するとスキル自体変わることがほとんどなんだ。進化したモンスターのスキルがわからなければ自分も困るだろ?」

「うん」


 智樹が納得するように誘導したうえで、金太郎は次の段階に進む。


「よし。だったら進化召喚の仕上げだ。手元にある〈プテラノ・クィーン〉のカードの裏に、もう1枚カードがあるはずだ。何のカードがある?」

「えーと……。あ! 〈プテラノクィーン・ブレード〉のカードだ!」

「そう。実は各モンスターカードの下に、進化後のモンスターカードが重ねてある。モンスターが進化した場合、進化前と進化後のカードを入れかえて、進化後のモンスターカードが表面に来るようにするんだ」


 金太郎に言われたとおり〈プテラノ・クィーン〉と〈プテラノクィーン・ブレード〉のカードの順番を入れかえる智樹。

 そうすることによって、表面に〈プテラノクィーン・ブレード〉のカード、その下に〈プテラノ・クィーン〉のカードが置かれている形になった。


「ちなみに将棋でもそうだけど、捕縛したモンスターを召喚して再利用するときには、また進化前の状態に戻るから。そのときは、またカードの順番を戻すんだぞ?」

「わかった!」


 最後に金太郎が説明を付けくわえる。

「スキルの話のとき、最初に俺は『20枚のカード』って言ったよな? あれは厳密には違っていて、実際には37枚あるんだ」

「37枚……?」

「そうだ。見えてるのは20枚だけど、今〈プテラノ・クィーン〉のカードの下に〈プテラノクィーン・ブレード〉のカードがあっただろ?」

「うん! あった!」

「……ってことは〈プテラノ・クィーン〉のカードがあったところには、実際カードが2枚あったことになる。ほかのユニットのカードも基本的には下にもう一枚、進化後のモンスターカードが隠れているんだ」

「え? それじゃ全部で40枚じゃないの?」

「いや。王将と金将は将棋でも成りがないだろ? クロスレイドでも進化できないんだよ。王将モンスターは1体。金将モンスターは2体いるよな? ということは、この3体分のカードだけは1枚ずつしかない」

「あ! だから37枚なんだ!」

「頭いいな、智樹! そうだ。俺たちがクロスレイドで扱うカードの総数は37枚」



 ここまでに基礎を中心に、進化召喚の概要まで説明してきた金太郎。

 続いて金太郎が教えたいと考えたのは、モンスターの行動権についての知識だ。

 今までの基礎とは違って少し難しいところもあるが、智樹の理解力を信じて説明に踏みきる金太郎。



 モンスターを行動させる方法として、もっともシンプルなのが通常行動権だ。

 通常行動権については、すでに金太郎が簡単に説明しているが、つまるところターンごとにプレイヤーに与えられる権利のことである。

 各プレイヤーは自分のターンが回ってくる毎に、1回だけモンスターを動かす権利が与えられているということだ。


 そして智樹に新しく覚えてもらう別の行動権──

 それはスキルなどにより発生する特殊な行動権についての認識だ。


 モンスターの行動に関与するスキルというのは、思ったよりも多種多様である。だが根本的に覚えなければならないのは『強制的な行動』と『行動範囲の変化』の違いだけだ。

 前者における行動は、通常行動権とは別に行動する権利を得ることができる。つまり通常行動権による行動を行ったうえで、スキルを発動して再度行動することも可能だということだ。

 だが後者については、指定したモンスターの行動範囲だけを変化させるというものなので、通常の行動権とは別の行動権を得ることはできない。つまり行動自体は、あくまで通常行動権を使用しなければならないのだ。

 仮に『このターンのみ行動範囲を拡大する』というような条件つきの効果である場合、通常行動権を使うまえにスキルを使用しなければ、スキルの無駄遣いになってしまうというデメリットが発生するのが特徴だ。


 また、前者は総称して『強制行動スキル』などと呼ばれているが、強制行動スキルには色々なタイプのスキルが存在している。

 たとえば『1マス前進させる』というような、すでに行動先が確定しているタイプのスキルもそうだ。

 ほかには『行動先を範囲内から選択できる』というような行動先が不確定のタイプも、結果的にはスキルだけで行動まで成りたつため『強制行動スキル』に含まれる。

 さらには『転移』といった特殊なタイプの移動も同様である。

 

 とにかくスキルの効果によって、モンスターを動かすことができるものが『強制行動スキル』と呼ばれるカテゴリに属しており、通常行動権とは関係なくモンスターを動かすことが可能だということだ。


 また各モンスターが1ターンにスキルを発動できるのは1回までとなっている。

 だが違うモンスターであれば特に回数に制限はない。

 つまり──

 フィールド上に存在する20体のモンスターすべてのスキルを同ターンに発動することは理論上可能なのである。



「ここまでは理解できたかな?」

「うん。大丈夫!」

「そうか。それじゃ、あとひとつ簡単なルールを覚えてから、ひと休憩しようか」


 そう言って、金太郎が最後に教えたのが『王とスキルの関係性』だった。


 クロスレイドには『モンスターのスキルを使用したターンに王将モンスターを捕縛してはいけない』というルールがある。なぜならスキルを使用した場合、それによって理不尽にゲーム終了となってしまうおそれがあるからだ。


 ただしスキルを発動したターンは何でもかんでも禁止というわけではなく、可能なアクションも普通に存在している。

 たとえばスキル発動後であっても王手までなら可能だ。それに王将モンスター以外の捕縛であれば問題はない。つまり『スキルを利用して王将モンスターを捕縛する』という行為が問題なのであり、禁止されているのはその部分なのだ。


 またスキルには『相手のモンスターを対象とした弱体効果のスキル』というのも存在するが、王将モンスターにはそういったデバフ効果を始めとする相手からのスキル全般を無効にする効果などがあらかじめ備わっている。


 小休止のまえに金太郎がぶち込んできた王将とスキルの関係性の話。

 それは、いよいよこのレクチャーが基礎から離れはじめたことを意味していた。



 これまでレイドシステムによる立体映像バトルにおいて、かなりの知識を身に着けてきた智樹。

 ただ、やはり今の智樹にとって本当に必要なのは、クロスレイド盤を利用した対戦におけるルールのほうなのだ。


 残り時間で、どこまで智樹に教えることができるのか。真剣な顔つきで今後の算段について整理する金太郎。


 その手には間違えて買っちゃった青汁の缶が握られていた。

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