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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第五章 始祖竜降臨篇
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第七十三話「ゼロドラゴン・ワールドエンド・ジェネシス」(激アツ回 ※未

「そんな怖い顔で睨むなよ。両刀使い」


 余裕の笑みを浮かべながら、金太郎きんたろうを茶化すように煽る歩夢あゆむ

 完全に歩夢ペースで進行していた試合だったが、先ほどの金太郎の超絶コンボによって流れが変わったはずだった。

 だが歩夢は、その流れをふたたび自分に戻したのだ。


 金太郎が闘志をむき出しにして歩夢に問いかける。

「おまえ……何者だ? いくら何でもこの状況で、リオールの召喚を目にしてその反応はありえない」

「何? 金将モンスターを進化させたくらいで、マウントをとれるとでも思ってたのかい? 確かにびっくりしたさ。だけど──言っただろ。僕もあんたと同じ次元を認識してるんだって」

 歩夢は一度言葉を止めて首をボキボキ鳴らしてから、金太郎以上の闘志をむき出しにして続きを口にした。

「僕が何者か……。それは時がくればわかることさ。そんなことより早くゲームを続けなよ」


 直後──

 不敵に笑う歩夢の瞳が、一瞬だけ翡翠のような色に光ったのを金太郎は見逃さなかった。

「……なるほど。これは一筋縄じゃいかなさそうだ」

 金太郎はやれやれといった表情で、歩夢の進化歩兵〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉の攻撃から逃れた数少ないモンスターの中から、銀将〈いつわりのワルキューレ〉を1マスだけ動かしてターンエンドした。


 次のターンからは歩夢もスキルを多用することなく、慎重に陣形を整えながらジワジワと金太郎の陣地へ近づいている。

 その理由は、やはり龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉の存在だろう。明らかに異質な存在──。警戒しないわけがないのだ。


 しばらくは序盤の荒れた展開が嘘のように、お互いを探り合いながらの陣取り合戦が続いているようだったが──

 十数手ほどが経過して、先に動いたのは歩夢だった。

 ある程度陣形が整ってきた歩夢が、桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉で金太郎の龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉を狙ってきたのだ。


「僕は桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉のスキルを発動する!」

 流れるような手さばきでカード上のルビー石を取りのぞき、桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉のカードを金太郎に向けながらスキルの効果を口にする歩夢。

「〈ハウリング・ワーウルフ〉のスキルは、自身の移動可能範囲内に存在する相手モンスターを選択することで発動できる! 選択するモンスターは当然──」


 金太郎が身体を低くして身構えた。

 歩夢も金太郎の次の動きを観察するような挙動を示している。


 そして歩夢の口から選択するモンスターの名が告げられた。

「──〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉だ!」


 だが金太郎は反応しない。

 歩夢が桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉のスキル発動条件を口にした瞬間、その対象が龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉になるだろうということは金太郎も予測できているはずだ。それでも動かないのは、まだ桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉の効果がハッキリしていないという点と、無駄に龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉のスキル効果を歩夢に知られるわけにはいかないという警戒心があるからなのだ。

 そして、このタイミングで金太郎が反応しないであろうことは、歩夢もまた予測していた。


「……動かないね。ま、こんなタイミングで反応しちゃうようなやつは三流だしね」

「御託はいいから、さっさと続けろ」

「おー、こわ!」


 金太郎の手がわずかにカードの方へ動くのを見て、歩夢がにやりと不気味な笑みを浮かべる。


「それじゃ、気を取り直して続けようか」

 そう言って、歩夢はスキル効果の説明に入った。

「さらに選択した相手モンスターと同じ属性の自軍モンスターを選択する! 僕は自軍の金将から《ギガント・ベヒモス》を選択! そして──」


 金太郎の指が一枚のカードに近づく。

 確実に龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉のスキルが発動することを確信した歩夢の表情に、ほんのわずか緊張が走る。

 未知のモンスターの知らないスキルを恐れないわけがないのだ。

 歩夢は覚悟を決めて、続きを口にした。


「──選択したお互いのモンスターの所有権を交換して、位置を入れ替える!」


 だが、次の瞬間──

「そうはいかない! 俺はおまえの〈ハウリング・ワーウルフ〉を選択して、〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉のスキルを発動する!」

 やはりというべきか。金太郎が龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉のスキルをカウンターで発動させてきた。

 もちろん歩夢も予測していた行動だ。

「……やっぱり来たね」

 歩夢は額に汗を滲ませ、期待と不安が入り混じったような表情で、金太郎が龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉のスキル効果を口にするのを待っている。


「選択したモンスターの耐性を無視して、そのモンスターを強制的に捕縛する!」

「耐性無視に強制捕縛か……。想像以上の強さだね」


 歩夢の桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉のスキルは不発に終わり、桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉は金太郎のスタンバイゾーンへと移動した。

 桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉のスキルが発動しなかったのは、単純に金太郎の龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉のスキルがカウンターで先に発動したからだ。それによって桂馬〈ハウリング・ワーウルフ〉自身がフィールドを離れてしまったため、発動タイミングを逃し不発に終わったのだ。


「ついでにカウンターで発動することで、相手のスキルを疑似的に無効化させることもできるってわけね。面倒くさい能力……」

 歩夢は龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉のスキル効果を冷静に分析している。

「今回の挙動だけじゃ完全にわからなかったのは、スキルの発動条件……。あとスキルの発動可能回数かな」

「なぜそう思う?」

「無条件にフィールド上のモンスターを選択して発動できるなら、とっくに僕のワールドエンドが狙われていたはずじゃないか。それをしなかったってことは、何らかの条件があるとしか思えない。それに──そもそもそんな無秩序な反則スキルがシステム的に存在しているとも思えないし」

 さらに歩夢は続ける。

「それから、スキル発動回数は普通2回ってパターンが多いけど、()()()は普通じゃないからね。例外パターンも想定していないと痛い目をみる」

「なるほど。思った以上に賢いヤツだな。確かに俺のリオールのスキル発動は無条件じゃない」


 金太郎の言葉を聞いて、勝ち誇ったような顔で続きを口にする歩夢。

「へへ。この化かし合いは僕の勝ちかな? ついでにもうひとつ──。今回は僕の〈ハウリング・ワーウルフ〉のスキル発動に反応したけど、恐らく捕縛宣言をしていたとしても反応したんじゃないかって予想しているんだよね」

「ほう……」

「恐らく、そのドラゴンのスキル発動条件は〝そいつの射程圏内に入ったモンスター〟とか……もしくは〝そいつを捕縛やスキルの対象にしたモンスター〟とか……大方そんなところじゃないのかい?」

「悪いがノーコメントだ。俺もあまり余裕がないんだよ」

「あっそ。まあ、だいたいわかったからいいよ」


 話が終わった途端、歩夢が纏う気の質が変わった。

 金太郎も、その歩夢の変化に気づく。

(なんだ……? ヤツの感じが変わった……?)


「たぶん、このまま続けても僕が勝つ自信はあるけど、試合が長引くのは目にみえている。──疲れるのは嫌いなんだ」


 そう言い放った歩夢の瞳が、激しくエメラルドグリーンの色に輝き始めた。

 同時に、フィールドの進化歩兵〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉と、歩夢が手にした進化歩兵〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉のカードも、同調するようにエメラルドグリーンの光を強く放っている。


「な────っ! なんだ、と……⁉」

 金太郎の鼓動が一回ドクンと強く脈打つ。


「あんたさ──。このクロスレイドの進化システムにおいて、謎に包まれてきた究極の進化形態があるのを知っているかい?」

「まさか……おまえ⁉」


 歩夢の口もとにニヤリと笑みが生まれる。

「みせてやるよ。あんたもその次元にいるのなら、いずれ到達できる領域さ」

 歩夢が空高く掲げた進化歩兵〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉のカードが、さらに強く輝きを増していく。

「〝金将の進化(おもしろいもの)〟を見せてもらったからね。そのお返しだよ!」


 歩夢は、手にしている進化歩兵〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉のカードを勢いよく金太郎の方向へと向けて、口上を唱えはじめた。



あらたなる幕開まくあけがもたらす時代じだい終焉しゅうえん! 覚悟かくご決意けついさきにある世界せかいすすむべき未来みらいは、このなかにある! 刮目かつもくせよ! すべてのはじまりとわりのて! 超進化ちょうしんか──! 未来創世みらいそうせい! 〈ゼロドラゴン・ワールドエンド・ジェネシス〉!」



 歩夢の口上が終わるとともに、フィールドにいた進化歩兵〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉から巨大なエメラルドグリーンの光の柱が上空へ向けて放たれた。


 直後──

 姿を現したのは〈ゼロドラゴン〉の新たな進化形態。駒に記された属性は『神王しんおう』。

 歩夢はエメラルドグリーンの瞳を金太郎へと向けて宣言した。

「これでしまいだ。──両刀使い!」


 金太郎に戦慄が走る。



 神王〈ゼロドラゴン・ワールドエンド・ジェネシス〉──────

 それは十三枚の翼を持った、世界の始まりと終焉を意味する神のドラゴン。

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