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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第五章 始祖竜降臨篇
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第七十二話「黄金竜の奇跡」※未

 金太郎きんたろうの変化を前に驚きの表情をみせた歩夢あゆむだったが、すぐに何事もなかったかのように笑みを浮かべて奇妙なことを口にした。


「へえ……。あんたも()()出来るんだ」

「……どういう意味だ?」


 金太郎が怪訝な表情に変わる。

 だが歩夢は意地悪そうな含み笑いをしただけで、話を終えてしまった。


「さぁね。とりあえず僕の攻撃は阻止されちゃったからターンエンドするよ」


 金太郎は歩夢の言った言葉が気になったが、しつこく追及することはせずにそのままターンを開始。歩兵を1マス前進させるだけに留まった。


 続く歩夢のターン。

 歩夢の神王〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉は、金太郎の桂馬〈アイス・ファルコン〉に照準を定めたようだ。これまでと同様の方法でスキルを多用して、みるみるうちに桂馬〈アイス・ファルコン〉に近づいていく。

 次狙われるのは、まだスキルを発動していない桂馬のスキル持ちモンスター〈アイス・ファルコン〉だろうということは、金太郎も想定していたようだ。


 歩夢は、金太郎の歩兵〈くろダチョウ〉を捕縛すると、そのまま角行〈つばさえたワニ〉の捕縛宣言を口にした。だが、全く反応を示さない金太郎。


「……ねぇ、あんた。カウンタースキルで角行を守らないのかい? それとも……守れるスキルがない、とか」

「さぁな」

 さっきの歩夢の反応への当てつけと言わんばかりに、同じような反応ではぐらかす金太郎。

 歩夢は、痛いところを突かれたというような顔をしてから、金太郎に確認をとる。

「厚意で助言してやってるんだよ。前のターンで飛車を捕られたばかりなのに、本当に角行まで捕られちゃって大丈夫なのか──ってさ」 


 すると金太郎は、頭をボリボリと掻きながら下を向いたまま答え始めた。

「心配はありがたく受けるぜ。だけど──」


 次の瞬間──

 金太郎は鬼のような表情を歩夢に向けて、言葉の続きを口にした。

「──真剣勝負の最中に相手を気遣うな! ……覚えとけ!」

 

 怒鳴る金太郎の迫力に気圧される歩夢。

「な、なんだよ……? 人がせっかく────……」

 何か言い返そうとした歩夢だったが、金太郎の無言の圧力を前に黙ってしまった。


 歩夢は、ふてくされたような表情で金太郎の角行を捕縛してから、神王〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉のカードを手に取って金太郎を睨みつける。

「……だったら、もう終わらせてやるよ! 俺は神王〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉のスキルを発動する!」


 歩夢の神王〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉の効果範囲に存在するモンスターは、金太郎の歩兵モンスターである〈コールド・ドッグ〉と〈サイレント・インコ〉、そして銀将〈ベビー・ベア〉、桂馬〈アイス・ファルコン〉、香車グレイ・キャットの計5体だ。


 五体のモンスターのうち桂馬〈アイス・ファルコン〉を除いた4体がゲームから除外される。



 だが、その瞬間──────

 金太郎の瞳が、より強く黄金に輝き出した。



「俺はフィールド上の自軍モンスターから1体を選択して、王将〈ベルダンディ〉のスキルを発動するぜ!」

「なっ……にぃ⁉ このタイミングで、王将……だとぉ⁉」


 金太郎がカウンターで発動したスキルは、歩夢の神王〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉の効果範囲外のモンスターのスキルだ。警戒の外側から不意を突かれたように発動された、予定外のモンスターのスキルに動揺する歩夢。


「選択したモンスターを強制進化させる!」

「なんだと……! きょ、強制進化……!」


 歩夢の警戒心が、一気に最大まで高まる。


「選択するモンスターは────……」


 歩夢の呼吸が乱れ、徐々に荒々しく変化していく。

 歩夢の心臓の鼓動が、これまでにないほど激しく高鳴る。


 そして何かを期待していた歩夢の心は、全く別の意味で裏切られることになった。

 

「……──〈アイス・ファルコン〉!」

「…………え?」


(き、気のせい……? アイツから、とてつもないプレッシャーを感じたと思ったのに……)


 金太郎の選択したモンスターは桂馬〈アイス・ファルコン〉。

 フィールドに存在する金太郎のモンスターで、スキルを使えるモンスターは現状で3体しかいない。王将〈ベルダンディ〉、銀将〈偽りのワルキューレ〉、そしてこの桂馬〈アイス・ファルコン〉の3体のみ。


 王将は基本的に進化しないので、選択肢としては銀将〈偽りのワルキューレ〉か桂馬〈アイス・ファルコン〉しかいないのだ。

 そう考えれば、特別おかしい状況というわけではないのだが……。


 だが黄金に輝く金太郎の瞳をみた時、歩夢は確信したはずだった。

 〝自分と同じ〟だと──


 何かが起こることを覚悟したのに、あまりにも普通すぎる展開だったため、歩夢は拍子抜けしてしまったのだ。


「進化召喚! 現れろ! 〈ブリザード・ファルコン〉!」

「い……いまさら、そんな俺から借りた桂馬モンスターごときが進化ところで──」


 歩夢の言葉を無視するように、桂馬〈アイス・ファルコン〉が進化エフェクトに包まれる。

 そしてその姿を、進化桂馬〈ブリザード・ファルコン〉へと変化させた。


 だが次の瞬間、歩夢の神王〈ゼロドラゴン・ワールドエンド〉のスキル効果によって、進化桂馬〈ブリザード・ファルコン〉はゲームから除外されてしまった。

 その呆気ない一部始終を確認して、逆に唖然となる歩夢。


「ほ、ほらみろよ! だいたいカウンターで発動しているんだから、どうせ逆算処理して俺のワールドエンドの効果で除外されて終わりじゃないか! バカなのかよ……あんた⁉」

「慌てるなよ。まだこれからだ。さらに俺は〈ブリザード・ファルコン〉のスキルを発動するぜ」

「は……? そのモンスターはさっき──」


 何かに感づいた歩夢が口から出し始めた言葉をとっさに止めた。

 その額には、大量の汗が滲み出ている。


「気づいたか? 〈ブリザード・ファルコン〉のスキルは、自身がゲームから除外された時に発動する」

「──っ!」

「除外されている〈ブリザード・ファルコン〉以外の自軍モンスターの中から一体を選んで、その選んだモンスターを進化状態でフィールド上に転生召喚することができる!」


 金太郎は、1枚のカードを手に取って上空に掲げた。

 すると、そのカードがまたたく間に黄金の輝きを放ち始めたのだ。


「な……なんだ、この眩しさ……⁉」


 あまりの眩しさに、かろうじて片目を薄っすら開けた状態で、金太郎を確認している歩夢。 

 次の瞬間。歩夢は自分の耳を疑った。金太郎の召喚口上が聞こえてきたのだ。



欠落けつらくしていたのはたましいへのちかい──! 尊厳そんげん内側うちがわにあるおもいのさきに、もとめるものは生死せいしをともにした金色こんじきこえふたたねがいのまえきばをむき、反逆はんぎゃく狼煙のろしをあげよ!」



 眩しさに抵抗しながら、大きく見開こうとする歩夢の瞳の奥に戦慄が宿る。


「な……なんだよ? その召喚口上……⁉」

「見せてやるぜ──小僧! これが俺のドラゴンだ! 画龍点睛がりょうてんせい! 〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉!」


 とてつもなく巨大な召喚エフェクトの先に現れた黄金の光を放つドラゴンに、歩夢の目は釘付けになっていた。

 喉を一回ごくりと鳴らし、信じられない様子で龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉を見ている歩夢。


「な────……⁉ ど、ドラゴン……? どこから出てきた⁉」

「悪いな。俺としたことが、おまえの力を見誤っていた」

「え……? ど、どういう──」

「言い訳はしない。あのモンスターたちだけじゃおまえに負けていた」


 しばらく龍神〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉を眺めていた歩夢の口もとに笑みが生まれた。

「龍神……。まさか、そのモンスターって……金将を進化させたのかい……?」


「……ああ。よくわかったな。これを見て、そんな平然としているヤツ初めて見たぜ」

「さすがに平然とはしてないけどね……。おどろいた。金将モンスターが進化したところなんて初めて見たし、何より……まさかこの場にいないモンスターを召喚してくるとは思わなかったよ。だけど────」


 歩夢は笑みを浮かべているが、金太郎を見る目が明らかにこれまでとは違う。


「それは、あんたが()()()()次元にいるってことがわかったってだけの話さ」

「同じ、次元……だと?」


 歩夢の意味深な言葉に、金太郎の表情がわずかに歪んだ。

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