表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第五章 始祖竜降臨篇
72/188

第七十一話「覚醒の器」

 再び歩夢あゆむ領域テリトリー内に転生を果たした進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉。

 歩夢は初ターンと同様の手口で、じわりじわりと進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉を金太郎きんたろうの領域へと接近させていく。


 初ターンでは金太郎の王将を目掛けて真っすぐに直進しただけだったが、今度は他のモンスタースキルを利用して左側へと移動しながら前進している。


「……なるほど。ほとんどのモンスターをサポートにまわして、少数精鋭のモンスターのみで戦うスタイルか」

 金太郎の頬を汗が伝う。


「ご名答。次は、そっちの銀将と香車をまとめて狙おうかな」


 歩夢の左側──つまり金太郎が右側に配置している銀将と香車は、金太郎の数少ないスキル持ちモンスターだ。

 このまま進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉が、金太郎の右側の桂馬モンスターの目の前でスキルを発動すれば、この2体はまとめて進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉の餌食になる配置になっている。


「さて、お手並み拝見だ。これを止めないと、もう後がないよ。あんたに僕のワールドエンドが止められるかい?」


 歩夢の挑発に対して黙り込む金太郎。

 その目は死んでいない。

「……まだ諦めてないようだね。たった5体……いや、さっき金将のスキル持ちモンスターを潰したから残り4体かな? その4体で、どう僕のワールドエンドの攻撃を凌ぐのか──見ものだね!」


 金太郎の飛車前にいる歩兵モンスターを捕縛して、さらにその先にいる飛車モンスターまでも捕縛する歩夢。

 それでも何の反応も示さない金太郎に対して、歩夢は勝ち誇ったような表情を浮かべると同時に、そ警戒心を覗かせる台詞を口にした。

「飛車の捕縛……阻止しないのかい? 阻止できるスキルがないのか、それとも────」


 通常、飛車モンスターは捕縛されないように、スキルを発動してでも優先して守るのが定石だ。

 だが、ただでさえスキル持ちモンスターが少ない金太郎は、下手にスキルを無駄打ちできない状態なのだ。


 何よりそれ以前に、歩夢の言うとおり金太郎に進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉を阻止できるスキルがない可能性も高い。

 さらに言えば、仮に阻止できるスキルを持っていたとしても、金太郎にとっては如何に少ない被害で歩夢の進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉を討ち取るかの方が重要なことだ。

 飛車モンスターを守るためにスキルを発動するということは、その数少ないスキルの内容を歩夢に知られてしまうようなもの。

 そっちのデメリットの方が金太郎にとっては遥かに大きいのだ。


 お互いの思惑が交錯する──


 結局のところ、金太郎が飛車モンスターの捕縛をスキルで阻止しなかっただけでは何もわからない。

 歩夢ほどの実力者であれば、その程度の想定くらいは当たり前のようにしているということだ。


 金太郎の飛車モンスターを捕縛し、その右側の桂馬モンスターの目前まで到達した進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉。


 そこで歩夢に、わずかに沈黙が発生した。

 それは覚悟を決めている時間──

 実力があるからこそ警戒するのだ。


 時間にして、ほんのわずか。

 常人では気づかないほどの空白が挟まり、覚悟を決めた歩夢が進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉のスキルを発動した。


「──僕は進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉を除外してスキルを発動! 進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉の全方位1マス圏内に存在するモンスターを、耐性を無視してすべてゲームから除外する!」



 これにより歩夢の進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉のスキル対象となったモンスターは、金太郎の銀将〈いつわりのワルキューレ〉、桂馬〈飛行ひこうするクワガタ〉、香車〈ショック・タイガー〉、そして歩兵である〈しろ(さる)〉、〈サイレント・インコ〉、〈激太げきぶとりカバ〉の三体。

 計六体である。



 だが──

 この瞬間、金太郎が動いた。


「そうはいくか! 俺は香車〈ショック・タイガー〉および、銀将〈偽りのワルキューレ〉のスキルを発動する!」

「な……⁉ 二体同時だって……⁉」


「〈ショック・タイガー〉は、自身がスキルの対象になった時にスキルを発動できる! 〈ショック・タイガー〉を自分のモンスター捕縛ゾーンへ移動させる!」

 この効果により香車〈ショック・タイガー〉は、金太郎自身のスタンバイゾーンへと逃れた。


「さらに〈偽りのワルキューレ〉のスキルは、フィールド上の自軍モンスター1体を選択し、選択したモンスターと位置を入れ替える効果だ! 俺が選択するモンスターは王将〈ヴェルダンディ〉!」

「王将を選択……⁉」

 香車〈ショック・タイガー〉同様、銀将〈偽りのワルキューレ〉もスキルによって王将〈ヴェルダンディ〉のいたマスへと移動し難を逃れた。

 そして代わりに、王将〈ヴェルダンディ〉が銀将〈偽りのワルキューレ〉がいたマスへと転移する。



 王将モンスターは、いかなるスキルも無効化できる。

 たとえそれが耐性無視のスキルであったとしても──。


 歩夢の進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉の効果により、金太郎の桂馬〈飛行するクワガタ〉と、3体の歩兵〈白い猿〉、〈サイレント・インコ〉、〈激太りカバ〉の計4体がゲームから除外された。


 だが、肝心のスキル持ちモンスターである香車〈ショック・タイガー〉にはスタンバイゾーンへと逃げられ、銀将〈偽りのワルキューレ〉も王将〈ヴェルダンディ〉と位置を入れ替えられたことにより進化歩兵〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉のスキル範囲から逃れた。

 結果として、歩夢は狙った2体のスキル持ちモンスターをどちらも仕留め損ねたことになる。



「……やるね。ムカつくけど、さすが将棋とクロスレイドの両刀使い──ってことかな?」


 歩夢は笑みを浮かべて穏やかな口調で喋ってはいるが、内心はさぞ悔しいことだろう。

 だが、それでも圧倒的に金太郎が不利な状況が変わったわけではない。


「ま、別にいいけどさ。あんただって、もうこの状況で勝てるとは思ってないでしょ? 余計な悪足掻きするの辞めたら? 時間の無駄──────……」


 その瞬間、歩夢の言葉が不自然に途切れた。


 歩夢の目は大きく見開かれ、汗が頬を伝っている。

 そして少し沈黙してからゴクリと唾を飲む歩夢。


 まるで何かに恐怖をしたかのような表情だ。



 その歩夢の視線の先──

 ただならぬ雰囲気を放つ金太郎の瞳から、黄金に輝く炎のようなエフェクトがあふれ出していた。



「……時間の無駄? まだ終わってないぜ。勝負はここからだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ