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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第三章 黄金竜覚醒篇
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第四十一話「ゴールドドラゴン・リオール」改済※挿絵あり

「俺のターン──」


 金太郎きんたろうの視線は、遥か遠くを見据えている。

その視線の先に何が存在しているのか──


「俺は〈次元じげん魔術師まじゅつし〉のスキルを発動する」

「あたしの知らないモンスターのスキル……⁉」


 幼馴染である飛鳥あすかは、金太郎のモンスターをおよそ把握していた。

 だが今回、金太郎が編成した飛車〈次元の魔術師〉は、飛鳥にとって所見のモンスターだったのだ。当然スキル効果については未知数である。

 飛鳥の警戒感が一気に限界まで高まる。


 味方である将角まさかども、金太郎の雰囲気が一変したことに戸惑っている。

 当事者の中でただひとり角田かくただけが、金太郎を中心に空気が変化したことに気づいていない。


「な、何、なにィ……? みんな、ナニぃイイイ⁉」

「わ、わからない……。だけど、何か──御堂みどうくんから、とてつもないプレッシャーが……!」

 意味が解らず慌てふためく角田と、目を見開いて金太郎を凝視しながら言葉を口にする飛鳥。

 もはや飛鳥は、主人である角田へ気配りをしている余裕すらない。


 どこか緊張感が入り混じった空間。

 ただならぬ気配を身にまとった金太郎が、淡々とスキルの内容を口にしていく。


「こいつのスキルは、ゲームから除外されている全モンスターから1体を選択して発動するスキルだ。俺はゲームから除外されている〈ゴールド・ドラゴン〉を選択する」


 金太郎の一言一句に恐怖し、戦慄する飛鳥。

 金太郎は眉ひとつ動かさずに、言葉を続けていく。


「そして〈次元の魔術師〉をゲームから除外して、選択したモンスターを自軍領域(テリトリー)内の任意のマスに強制召喚するぜ」


 敵味方問わず、除外されているモンスターを強制的に自軍モンスターとして召喚するスキルを持つモンスター。

 そんなものが金太郎のユニットセットに編成されていたことに、飛鳥は驚きを隠せずにいる。


 飛鳥はそれを知らずにいたが、味方である将角は当然知っていた。

 それでも、その将角ですら、金太郎から感じる凄みに言葉を失っているのだ。



 だが飛鳥も将角も、除外されていた金将〈ゴールド・ドラゴン〉を奪いとった金太郎の行為そのものに動揺しているわけではない。

 それ以上に、その行為を行っている金太郎自身からあふれだすプレッシャーに、かつてないほどの脅威を感じているのだ。



 もともと〈ゴールド・ドラゴン〉は、将角が所有する〈ダークネスドラゴン・オキュスプリテ〉のスキル効果との相性は非常に悪い。


 自らをスタンバイゾーンに移動する〈ゴールド・ドラゴン〉。

 相手のスタンバイゾーンの全モンスターをゲームから除外する〈ダークネスドラゴン・オキュスプリテ〉。


 つまり──

 金将〈ゴールド・ドラゴン〉にとって、龍馬〈ダークネスドラゴン・オキュスプリテ〉は究極のアンチテーゼとも言える存在だ。

 ある意味、最悪の天敵とも言えるだろう。



 実際に角田から金将〈ゴールド・ドラゴン〉を奪い返すという意味では、ゲーム中に奪うことに何ら意味はない。

 なぜなら金将〈ゴールド・ドラゴン〉のユニットとカード自体は、終始角田のもとに存在しているからだ。


 結局、本当の意味で奪い返すには勝負に勝つ以外に方法はないのだ。


 だが、それでも金将〈ゴールド・ドラゴン〉および、飛車〈ルミナス・ドラゴン〉自体が、ゲームにおいて脅威であることには変わりはない。

 単純にゲーム中に奪うことが目的ではないが、あくまで相手の持つ厄介なモンスターであるドラゴン種2体を封じること──あわよくば、奪うことができれば巨大な戦力となる。


 そもそも金太郎が、ユニット編成セットの飛車モンスターを〈黄金おうごん不死鳥ふしちょう〉から〈次元の魔術師〉へと差し替えていたのは、すでに将角とそういったことを前夜のホテルで話し合っていたからなのだ。



 飛車モンスター〈次元の魔術師〉。

 ゲームから除外されたモンスターを、ふたたびフィールド上に召喚するという特殊なスキルを持つランク5の激レアモンスター。


 その効果自体かなり希少で珍しいスキルだが、仮に使うにしても相手のモンスター編成に除外スキル持ちのモンスターがいなければスキル自体が腐ってしまうため、好んでデッキに入れている者はあまり多くない。



 今回金太郎が、わざわざこのたぐいのスキルを持ったモンスターに入れ替えてきたのは、将角の龍馬〈ダークネスドラゴン・オキュスプリテ〉とのシナジーが目的だったのだ。


 だが、それを知っている将角ですら、金太郎の放つ得体のしれない気配に汗を滲ませていた。


 圧倒的なオーラを放出しながら、金太郎が言葉を口にする。

「俺は自軍の領域内──王将〈ギルガメッシュ〉の眼前に〈ゴールド・ドラゴン〉を強制召喚する!」

「き……金太郎、おまえ……」

「──さらに!」


 将角の言葉が聞こえていないのか、無視するように言葉を続ける金太郎。


「俺はフィールド上のモンスター1体を選択して〈操術そうじゅつマリオネティック・ゴースト〉のスキルを発動する。選択するのは──〈アリスティック・ワイバーン=ビアンコ〉!」

「なァあ……⁉ てめぇ、御堂ォオオオ! オレ様の〈アリスティック・ワイバーン=ビアンコ〉をォオオオ……!」


 金太郎は進化銀将〈操術マリオネティック・ゴースト〉のスキル効果によって、龍馬〈アリスティック・ワイバーン=ビアンコ〉を行動可能範囲内において任意のマスに強制移動させることができる。


 金太郎が、このスキルを発動した目的──

 それは龍馬〈アリスティック・ワイバーン=ビアンコ〉の強制移動ではなく、その()()()()自体にあった。


 ついでに角田が、もっともいやがりそうなマスへと龍馬〈アリスティック・ワイバーン=ビアンコ〉を移動させる金太郎。

 そして、さらなるコンボを展開する。


「俺は〈アリスティック・ワイバーン=ビアンコ〉の行動宣言を対象にして、自ら王将〈ギルガメッシュ〉のスキルをカウンターで発動する!」



 ()()()()()()()()()()()()──

 それこそが金太郎の狙いだ。

 そして同時に、それが金太郎の王将〈ギルガメッシュ〉のスキル発動条件でもある。


 金太郎の複雑なコンボを、会場中が息を飲んで見守っていた。


「お、王将だとゥ…………⁉」

「俺の〈ギルガメッシュ〉のスキルは、相手モンスターの行動宣言に反応して発動できるスキルだ。その際にフィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。俺が選択するモンスターは────〈ゴールド・ドラゴン〉!」



 角田、飛鳥、そして将角──

 さらには、銀子ぎんこけいまでもが、金太郎の言葉に一斉に反応した。

「あるぇエエエ……⁉ お、オレ様の〈ゴールド・ドラゴン〉?? どこいったァ……⁉」

「御堂くん、いったい何を……?」

「な、何をする気だ……金太郎⁉」

「金太郎、あなた……」

「あ、あれが……金太郎くん?」



 金将〈ゴールド・ドラゴン〉の実物ユニットは、角田側のプレイヤー盤上に配置されていたはずだった。

 だがそれは、いつの間にか忽然と姿を消して金太郎の手中しゅちゅうに──


 そして角田の前に置いてあった金将〈ゴールド・ドラゴン〉のカードも、いつの間にか金太郎の前に並べられている。


 金太郎は、その黄金に輝く瞳を遥か地平の彼方へと向けて、力強く言葉を口にした。

「俺の〈ギルガメッシュ〉の効果は、行動宣言をした相手モンスターの行動を無効にして、選択したモンスターを強制進化させるスキルだ。〈操術マリオネティック・ゴースト〉のスキルによって、強制的に行動をすることになった〈アリスティック・ワイバーン=ビアンコ〉の行動宣言を無効にして────」



「ば、ばかなっ……⁉」

「あ、ありえないわ──!」




「俺は────〈ゴールド・ドラゴン〉を()()()()させる!」




 クロスレイドにおいて、通常、金将のモンスターは進化召喚することができない。

 将棋の金将に『成り』がないのと同様に、クロスレイドの金将モンスターも『進化』ができないのだ。

 それは金将〈ゴールド・ドラゴン〉も例外ではないはずだった。



 だが──


 金太郎は〈ゴールド・ドラゴン〉のユニットを手に取り、空高く掲げながら進化詠唱を唱え始めた。



欠落けつらくしていたのはたましいへのちかい。尊厳そんげん内側うちがわにあるおもいのさきに、もとめるものは生死せいしをともにした金色こんじきこえふたたねがいのまえきばをむき、反逆はんぎゃく狼煙のろしをあげよ!」



「し、進化詠唱だとっ……⁉ 金太郎、おまえ正気か──⁉」

「うぅ……おぉおお──っ!」


 隣で驚きを口にしたのは将角。

 その将角の言葉をよそに、金太郎が雄叫びをあげる。


 会場中に響きわたる金太郎の声。


 金太郎の詠唱とともに、上空にかざしていた金将〈ゴールド・ドラゴン〉のユニットが眩いほどの黄金の光を放ち始めた。

 同時に金将〈ゴールド・ドラゴン〉のカードも光を放っている。



「う、うそでしょ──⁉」

「金将モンスターが…………進化する、だとっ⁉」



 口もとに両手を当てて、大きく驚きを表現する飛鳥。

 将角も目を大きく見開いて、半信半疑の言葉を口にした。


 会場全体が注目するなか、金太郎は凄まじいほどの闘気を放ちながら、その進化詠唱を唱え終えた。


「俺の魂とともに……目覚めろっ──〈ゴールド・ドラゴン〉! 画龍点睛がりょうてんせい────〈ゴールドドラゴン・リオール〉!」

挿絵(By みてみん)



 一閃──

 金太郎は空高く振りかぶった金将〈ゴールド・ドラゴン〉のユニットを、フィールド上のあるべき場所へと、狙いを定めて力強く振り下ろした。

 心地よく響いた駒音とともに金将〈ゴールド・ドラゴン〉のユニットとカードから放たれていた黄金の光が静かに収まっていく。


 つぎの瞬間、中央レイドフィールド上に姿を現したのは、進化金将とも呼べるモンスター〈ゴールドドラゴン・リオール〉の姿だった。


 全身を黄金の鱗に包まれたランク6のドラゴン種モンスター。

 神秘的なまでのその神々しい輝きは、まるでこの世のものとは思えぬ美しさである。



 辺りが──

 静まり返る。



 金太郎のもとには〈ゴールドドラゴン・リオール〉が描かれたモンスターユニットとカードが、その場を支配するように存在している。

 さらに〈ゴールドドラゴン・リオール〉のユニットとカードには『龍神りゅうじん』という見慣れない属性表記が施されていた。


「ちょ、ちょっと…………なによ、これ……?」

「りゅ──龍神、だと⁉」


 飛鳥は目の前で起こった非現実に、困惑した表情を浮かべている。

 将角も味方が起こしたありえない奇跡を前に、動揺を隠せずにいた。



「い、イカサマだァアアア……! 偽造品だぞォ、アレはァアアア⁉」


 角田がそう叫んだことで、止まっていた会場全体が一気に我に返ったかのように動き始めた。

 ざわつく観客たち。


 だが、しばらくして事実を知らせるアナウンスが会場に流れた。


『こ、これは……。なぜ金将のモンスターが進化できたのか、我々にもわかりません。ですが少なくともレイドシステムが読み取って、立体映像を反映している時点で、本物であることは疑いようがありません……』


 会場中を包んでいたざわめきの声が、大きな歓声に変わっていく。



 中央レイドフィールド上には、金太郎のモンスター龍神〈ゴールドドラゴン・リオール〉が美しい金色の身体をうねらせながら、天に向かって咆哮をあげている。


 さらに金太郎たちのプレイヤー盤に配置されている『龍神』と書かれた〈ゴールドドラゴン・リオール〉のユニット。

 それに飛鳥たちのプレイヤー盤のほうにも、しっかりと〈ゴールドドラゴン・リオール〉のユニットが電子表示されていた。


 もちろん金太郎の前に置かれた〈ゴールド・ドラゴン〉のカードも〈ゴールドドラゴン・リオール〉のものに変わっている。



「き、金将モンスターが……進化しやがった────!」

「し、信じられない……」

 夢でも見ているかのような表情で、龍神〈ゴールドドラゴン・リオール〉を眺めている将角と飛鳥。


 角田も声を失い、唖然としていた。




「──俺たちの勝ちだ」



 黄金の光を放つ金太郎の瞳。

 会場にいるすべての者の視線が龍神〈ゴールドドラゴン・リオール〉に釘付けになる中、金太郎は静かに勝利宣言を口にした。

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