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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第二章 悪夢の失墜篇
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第二十六話「ダークネスドラゴン・オプスキュリテ」改済

 ◇ ◆ ◇


 金太郎が迷いを吹っ切ってからは、ほぼ互角の勝負が続いていた。

 試合は終盤に差しかかっており、残り時間も迫ってきている。


「くくっ! それでこそ、かつて俺がただひとりライバルだと認めたヤツだ」

「ライバルで──親友、だろ?」

「ああ……そうだったな」


 少し寂しげな表情を見せる将角。

 だが、すぐにいつもの鋭い眼光にもどり、ゲームを再開させた。


「しけた話は勝負が終わってからだ! ひさしぶりに見せてやるぜ──俺のドラゴン!」

「将角の……ドラゴン…………!」


 金太郎の顔に緊張の色が浮かぶ。

 

「いくぜ、俺のターン! 俺は〈デッドリー・ヴァンパイア・サバス〉の効果を発動して、おまえの角行の斜め前方にいる歩兵モンスター〈休息きゅうそくのかたつむり〉を強制捕縛する!」

「しまった……⁉」

「もう遅い! 俺は角行〈ダークネス・ドラゴン〉で、おまえの角行〈爆炎ばくえんのサラマンダー〉を捕縛して領域テリトリーに侵入──進化召喚させる!」


 将角が常に狙っていた角行の侵入経路。

 金太郎が将角のドラゴンを警戒していたこともあり、お互いの角行周辺はあまり手がつけられていなかったのだ。


 角行を護っている歩兵モンスターを効率的に除外するには、うってつけのモンスター〈デッドリー・ヴァンパイア・サバス〉。

 いくら金太郎が警戒していたとはいえ、強制捕縛によって無理やりこじ開けられてはお手上げだろう。


 もちろんカウンタースキルによって対抗することは可能だが、試合が終盤に差しかかっている今、金太郎のモンスターたちの残りスキルも少ない。

 そこを将角に狙われたのだ。


 将角が角行〈ダークネス・ドラゴン〉のユニットを手にとって、召喚詠唱を口にする。



とらわれのたましい──虚像きょぞううつわ! 永遠えいえんやみなげき、そのてに影響えいきょうけたいつわりのおうは、ひそかにその性質せいしつ深淵しんえんより姿すがたあらわす! その目に刻め────金太郎! 潜移暗化せんいあんか! 〈ダークネスドラゴン・オプスキュリテ〉!」



 詠唱終了とともに、その真の姿を現した〈ダークネス・ドラゴン〉の進化系モンスター。全身が漆黒の鱗に包まれた、将角の持つ最上級モンスターだ。

 進化するまえと比べると、あきらかに桁違いの威圧感を放っている。


「くっ! ひさしぶりに見たが、なんてプレッシャーだ……⁉︎」


 その圧倒的なまでの存在感が、否応いやおうなしに金太郎を戦慄させた。

 逃れられない金太郎に向かって、激しく咆哮する将角の最強モンスター──龍馬〈ダークネスドラゴン・オプスキュリテ〉。


 まるで建物全体が悲鳴をあげて震えているかのような感覚に陥る。

 金太郎たちが戦っているレイドスポットのフィールドは、大会同様の巨大立体映像投影装置レイドシステムを搭載しているため、その迫力は桁違いなのだ。


 将角は、そのまま目の前に並べられていた〈ダークネスドラゴン・オプスキュリテ〉のカードを手にとると、金太郎にカードを向けながら宣言した。


「俺は〈ダークネスドラゴン・オプスキュリテ〉のスキルを発動する! 相手のスタンバイゾーンにあるユニットをすべてゲームから除外し、次のターン相手はスキルを発動することができない!」



 クロスレイドにおいて、ドラゴンは特別な扱いとなっている。

 その異常ともいえる希少性の高さは圧倒的で、常にクロスレイドをプレイする者の憧れの存在となっているのだ。


 また、ほかのモンスターと比べて、スキルも非常に強力なものが多い。

 そんなドラゴンの中でも、将角の持つ龍馬〈ダークネスドラゴン・オプスキュリテ〉は、頭ひとつ抜きん出ている強さだった。


「や、やべぇ……! くっそ……相変わらず、とんでもないスキル効果だぜ……!」


 金太郎がこれまでに将角から捕縛してきたモンスターは、すべてゲームから除外され、さらに次のターン金太郎はスキルが発動できないのだ。金太郎がたじろぐのも無理はない。


 だがそれでも、金太郎が将角に向けている闘志は消えていない。


「くくく。俺のドラゴンを前にして、戦意を喪失しなかったのは褒めてやる! 俺はターンエンドだ!」


 将角のターンから金太郎のターンに変わる。

 このターン金太郎はスキルを発動できないため、通常行動権によって金将〈ズラトロク・ノヴァ〉を1マス前進させるだけにとどめて、ターンを終了した。


 だが──

 この時、将角が怪訝な表情に変わった。


 この試合の中で、序盤から金太郎がじわじわと前進させていた金将モンスター〈ズラトロク・ノヴァ〉。

 それが今回のターンで、将角の領域の1マス手前まで到達したのだ。


「……金太郎。てめぇ何か企んでるな?」


 将角は、単身乗り込んできた金太郎の金将〈ズラトロク・ノヴァ〉に、異常な警戒心を示した。

 実際に〈ズラトロク・ノヴァ〉の目と鼻の先には、将角の歩兵モンスターがズラリと立ちはだかっている。


 金太郎は将角の言葉に返事を返さない。

 ただ少なくとも、その目は死んでいない。


「……いいだろう。てめぇが何企んでんのか知らねぇが、まんまと罠にかかってやるよ! 俺は歩兵〈てんえる狼男おおかみおとこ〉で、てめぇの〈ズラトロク・ノヴァ〉を捕縛するぜ!」


 だが、この将角の捕縛宣言に対して、金太郎が動いた。


「そうはいくか! 俺はこの瞬間、歩兵〈リトル・ブラウニー〉の効果を発動するぜ! フィールド上の自軍モンスター3体をゲームから除外して捕縛を無効にする!」


 この〈リトル・ブラウニー〉の効果は、自軍モンスターが捕縛宣言を受けたときに発動できるスキルだ。

 そのスキル効果によって、将角の捕縛は無効化された。



 『アクションの無効化』。

 スキルの効果などにより成立するルールで、主には『捕縛の無効化』や『行動の無効化』などがそうだ。

 特に行動権の扱いについてだが、たとえスキルの効果などによって行動や捕縛が無効にされようとも、そのアクションを行うために宣言した行動権の消費自体が無効になるわけではない。



 金太郎は〈リトル・ブラウニー〉のスキルを発動するためのコストとして、フィールドにいる自軍モンスターの中から適当な3体を除外した。


 捕縛を無効化されたが、将角はあまり驚いてはいない。

 おそらく将角は、この展開を想定していたのだ。


「ふん……。やってくれるじゃねぇか。俺はターンエンドだ」


 これまでの言動から、将角が警戒していることを金太郎も察知している。

 そして、その警戒の先にあるのが金将〈ズラトロク・ノヴァ〉だということも、金太郎は予測しているのだ。

 ふたりの駆け引きが激化していくなかで、ついに金太郎が狙っていたコンボを実行に移した。


「いくぜ、俺のターン! 俺は〈ズラトロク・ノヴァ〉のスキルを発動! 全方位2マス圏内にいる相手モンスターの中から1体を選択して捕縛することができる! まずは目の前にいる歩兵〈天に吠える狼男〉を捕縛するぜ!」


 金太郎は止まることなく、そのまま言葉を続ける。


「続けて〈ズラトロク・ノヴァ〉のスキルを発動! 俺は〈ズラトロク・ノヴァ〉の右斜め2マス前にいる、おまえの金将〈デビル・ガーゴイル〉を捕縛する!」

「──だろうな。もともと俺のモンスターだ。そのモンスターが、1ターンに何度もスキルを発動できる効果があることくらい知っている。だが〈ズラトロク・ノヴァ〉のスキル発動回数は2回だ。……もう弾切れだな」


 通常、クロスレイドでは『1体のモンスターが1ターンに発動できるスキルは1回まで』とルールで決まっている。

 しかしこの金将〈ズラトロク・ノヴァ〉は、1ターンに何度でもスキルを発動可能という例外的な効果を持っているのだ。


 そして金太郎が〈ズラトロク・ノヴァ〉を将角の陣地に向かわせていたことから、将角はこの金太郎の戦術を予想していたのだ。



 だが──

 金太郎の行動は将角の予測を超えた。


「──まだだ! 俺は〈ズラトロク・ノヴァ〉を選択して、王将〈アメノウズメ〉の効果を発動する!」

「なにぃ……王将、だと……⁉」


 予測できなかった金太郎の行動が、未知の脅威へとその姿を変え、将角に襲いかかる。

 将角の表情に焦りの色が浮かんだ。


「〈アメノウズメ〉のスキル効果によって、〈ズラトロク・ノヴァ〉のスキル回数は最大まで回復する!」

「くっ……! やってくれんじゃねぇか……金太郎!」

「俺は行動権を使って〈ズラトロク・ノヴァ〉を1マス前進させてから〈ズラトロク・ノヴァ〉のスキルを発動! おまえの王将の2マス圏内にいる残り2体のモンスターも捕縛するぜ!」


 デフォルトの2回分、追加で2回分──

 つまり〈ズラトロク・ノヴァ〉は、この1ターンで計4回分のスキルを発動したことになる。


「俺は、これでターンエンドする!」


 スキルを使用したターン中に、王将モンスターを捕縛することはできないため、金太郎はターンを終了したが──

 すでに将角の王将モンスターの周りには、王を護るためのモンスターが1体もいない状態となっている。


 金太郎の強引なコンボによって、将角は一気に窮地に陥った。

 将角の所有する最強モンスター〈ダークネスドラゴン・オプスキュリテ〉のスキルも、状況的に使い物にならない。

 角行モンスターとして戦力にはなるが、スキルのないモンスターがたった1体で出来ることは、たかが知れている。



「お、俺のターン……! 俺はスタンバイゾーンから、歩兵〈グリーン・スライム〉を自分の王将の前に召喚してターンエンドだ……!」


 この歩兵〈グリーン・スライム〉は、将角のスタンバイゾーンに残っていた唯一のモンスターだった。

 勝負の終わりが近づいていたことから、将角はほとんどのモンスターを召喚してしまっていたのだ。

 悔しそうな表情でターンを終了する将角。


「もうあとがないな、将角」

「うるせぇ……早くやれよ! てめぇのターンだろ……⁉」


 将角は、すでに負けを覚悟しているようにも見える。


 金太郎はそっと目を閉じた。

 そして深呼吸をしたあと、ゆっくり目を開いてから言葉を口にする。



「……ああ、わかった。いくぜ、将角……! 俺のターン! 俺は────」

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