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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第八章 次元決戦篇
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第百十一話「竜崎王牙」

「ぐはっ…………⁉」


 銀子ぎんこの心臓部から男の手刀が引き抜かれる。

 少し後方へと身体をよろつかせてから、そのまま男にもたれかかるように倒れ込む銀子。


「ぎ……銀姉っ!」

 金太郎きんたろうが大声で銀子の名を叫んだ。


 漆黒の男は無言で金太郎たち全員を品定めするように見ている。

 その腕の中で意識を失っている銀子の魂が入った王将〈ブリュンヒルデ〉のアバター。

 手刀を引き抜かれたその胸の穴や口から、生々しい赤い血が流れていた。


 目の前で銀子が絶体絶命だというのに、まるで蛇に睨まれた蛙のごとく身体が動かない金太郎たち。


 かろうじて将角まさかどが恐怖を押し殺したような震えた声で言葉を口にした。

「お……おまえが竜崎りゅうざき王牙おうがか……?」


 漆黒の男は将角の方へとゆっくり視線を向けて、無表情のまま答えた。


「……いかにも。われが竜崎王牙だ」


 その目の下には、不気味なほど厚みのある真っ黒なクマが確認できる。

 そして、一点の光すらない吸い込まれそうなほどの黒い瞳を、金太郎たちに向けて話し始めた。


「貴様ら……本来ここに来るはずの魂じゃないな? どうやってこの次元の狭間に侵入してきた?」


 竜崎の口から出た言葉は金太郎たちに対する質問だった。

 逆に将角の顔に少し笑みが生まれた。


「それを聞いて少しホッとしたぜ……」

「……何がだ?」

「てめぇも分からねぇことがあるんだってことが分かって安心したんだよ」


 それでも、やはり得体の知れない竜崎に対して警戒心がなくなったわけではない。

 額に汗を滲ませて、竜崎を睨みつける将角。


「あたりまえだ。我とて神ではない」

 竜崎は将角を見下すようにそう答えたあと、今度は口角を少し釣り上げて言葉を付け足した。

「だが……もはやヒトでもない」


 竜崎と将角の会話の途中、竜崎の腕のなかでぐったりしている銀子の姿を見て、けいが小声で将角に話しかけた。

「ねぇ……。早くしないと銀子さんが……」

「……ああ。わかってる……」


 ふたりの頭の中にあったのは、飛鳥あすかの能力『事象の改ざん』。

 あの能力なら、心臓を貫かれた銀子を救えるかもしれない──と。


 当然、他の者も同じことを考えていた。

 そして飛鳥本人も────。


 この次元の狭間において銀子自身は魂でしかなく、その器はクロスレイドの王将モンスター〈ブリュンヒルデ〉の肉体を借りている。

 だが亞比あびからも聞いている通り、アバターに入った状態で死ねば、中に入っている魂も無事では済まない。

 その〝死〟という概念の先に何が待っているのか。それは誰にもわからない。


 ただ──

 いま目の前で銀子の魂が入ったブリュンヒルデの肉体が死を迎えようとしていることは事実だった。



 もし今の状態で死を迎えれば、銀子本人の肉体に生還できなくなる可能性がある────



 それが金太郎たち全員が共通して考えていることだった。


 どうやって銀子を竜崎の手中から奪い返すか──

 全員がその方法を考えている時だった。


 桂が竜崎に向かって飛び蹴りを放ったのだ。


「桂……⁉」

 思わず叫ぶ将角。


「今のうちに……!」

 答える桂の言葉に余裕は感じられない。

 得体の知れない竜崎に生身で飛び込んだのだから当然だ。


 桂が飛び蹴りを放ちながら召喚した〈カレント・ドラゴン〉が、桂の飛び蹴りをガードした竜崎に追撃を仕掛ける。


「ほぅ……ドラゴンか。なるほど……そういうことか」

 竜崎は何かを察したのか、ぼそりとひと言だけ口にして〈カレント・ドラゴン〉の攻撃を受け止めた。


 直後、隣にいる金太郎に話しかける将角。

「金太郎……頼めるか?」

「ああっ……! 任せてくれ!」


 そう言って金太郎は〈ゴールド・ドラゴン〉を召喚してから、間髪入れずに召喚口上を詠唱し始めた。

 同時に少し離れた後方にいた飛鳥と響香きょうか、さらには歩夢あゆむもすでに各々のドラゴンを召喚して、進化のための詠唱に入っている。


 金太郎が詠唱を唱えている間、その隣で〈ダークネス・ドラゴン〉を召喚した将角が金太郎の護衛をしていた。


欠落けつらくしていたのはたましいへのちかい──。尊厳そんげん内側うちがわにあるおもいのさきに、もとめるものは生死せいしをともにした金色こんじきこえふたたねがいのまえきばをむき、反逆はんぎゃく狼煙のろしをあげよ! 画龍点睛がりょうてんせい────〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉!」


 金太郎の詠唱が終わると、目の前の〈ゴールド・ドラゴン〉から黄金の光の柱が放たれ、その姿を〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉へと変化させた。


「ライトニング・オーラ!」

 金太郎の掛け声を合図に〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉が咆哮すると、金太郎と〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉が黄金のオーラに包まれた。

 これは〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉の必殺技。

 対象の身体能力を飛躍的に向上させる技だ。


 金太郎の準備が整ったタイミングで、すかさず飛鳥のもとへかけよる将角。

「……姉貴!」

「ええ! もう準備はできてるわ」

 飛鳥の左目から白い炎のようなエフェクトの光が噴き出している。

 これが覚醒の証。


 目的は『事象の改ざん』によって別世界軸にいる銀子の肉体の転写すること。

 ……というよりも、今の銀子と同じように〝ブリュンヒルデのアバターに入って次元の狭間に侵入している銀子の魂が入ったブリュンヒルデのアバター〟の転写。

 さらに飛鳥が召喚した〈ルミナス・ドラゴン〉も〈ルミナス・ドラゴン・リュミエール〉へと進化を終えて、戦闘準備も万全になっていた。


「手際がいいな。あとは任せたぜ、姉貴!」

「うん! 将角も早く進化して!」

「ああ!」


 すでに『ライトニング・オーラ』でドーピング状態となった金太郎と〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉が、桂と〈カレント・ドラゴン〉に加勢して竜崎と超高速バトルを繰り広げている。

 さらには響香と〈スパーク・ドラゴン・フンケ〉、そして歩夢と〈ゼロ・ドラゴン・ワールドエンド〉も加勢に向かっていた。


 仲間が銀子を奪い返すことを信じて、その場で待機する飛鳥。

 その隣で将角が〈ダークネス・ドラゴン〉を召喚し、進化口上を詠唱していた。



とらわれのたましい! 虚像きょぞううつわ! 永遠えいえんやみなげき、そのてに影響えいきょうけたいつわりのおうは、ひそかにその性質せいしつ深淵しんえんより姿すがたあらわす! その目に刻め──潜移暗化せんいあんか! 〈ダークネス・ドラゴン・オキュスプリテ〉!」


 将角の背後にいた〈ダークネス・ドラゴン〉が〈ダークネス・ドラゴン・オキュスプリテ〉へと進化する──。



「悠長に遊んでいる暇はねぇ……!」

 前を見据える将角の眼光が竜崎の姿を捉えていた。

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