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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第七章 次元激闘篇
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第百七話「事象の改ざん」

「あたしの……力?」

 キョトンとした表情で飛鳥あすかが言った。


「そこにいる角田かくた正男まさおが『洗脳』という能力を保持しているのと同様に、あなたのなかに眠っている力です。そして本来は、人間としての一生のうちでは知ることがないはずの力」

「一生のうちで……知ることのない…………はずの、力」


 女神の言葉を復唱するように口にしているのは銀子ぎんこ。これまでの自分のなかにあった常識外の出来事を受け入れるのに必死なのだ。

 だがそれは銀子だけではない。響香きょうか桐生きりゅうも、そして角田も似たような気持ちで女神の言葉を聞いていた。


 女神は説明を続ける。

「それは人間に与えられた五感だけでは到達することのできない感覚を知らなければ、得ることのできないはずの力だからです」

「五感だけでは……到達できない感覚、だと?」

 桐生も女神の言葉を興味深く聞いている。

「そうです。あなたたちが言う第六感というものに相当する感覚です。例えば……わかりやすい例で言うならば、霊能力や超能力などと称されているものがそれです」


 続けて桐生が質問する。

「そんなものが本当に存在するとでも言うのか?」

「もちろん、あなたたちが人間界で認知している存在は、自称霊能力者や自称超能力者という場合も多いでしょう。……ですが、そこに紛れて確実に本物も存在しています」


 女神の答えを聞いて険しい顔になる桐生。

 他の者たちも真剣に話を聞いている。


 そして女神は、さらに言葉を続ける。

「ただし──。それらも不完全な覚醒なのです。人間の世界で真に覚醒の門をくぐった人間は、現時点で後にも先にも御堂みどう金太郎きんたろうただひとりのみ────」


「な、なんだと……? あの……バカ弟子が…………」

 驚く桐生。


 これには飛鳥も驚きの声を漏らした。

「金ちゃんが……?」


 女神の言葉が続く。

「ええ。それから七海ななうみ歩夢あゆむという少年──。彼もまた覚醒の門を開けるところまで到達しています。これまでの歴史で人間が覚醒することなどなかったのですが、クロスレイドというツールの影響で人の器に施されたリミッターが解除されたのでしょう」


 非現実的な話に、この場の全員が言葉を失っている。


「そしてすめらぎ飛鳥あすか。すでにあなたも覚醒の門の目の前に立っている状態です」


「飛鳥ちゃんが……」

 飛鳥を横目に驚いた表情で銀子が呟いた。


「これまでにあなたが耐えがたい苦悩を克服してきたこと。それがクロスレイドの持つ力と相まって、あなたを覚醒の高みに近づけたのは間違いありません。……ですが、そこの角田かくた正男まさおに他人の能力という異物を無理やり体内に入れられてしまったことも要因のひとつでもあるでしょう」

 飛鳥の表情がわずかに歪む。

「角田正男にされた行為は到底受け入れがたいものだったかもしれませんが、奇しくもそれがあなたを覚醒の門の前に立たせたのです」


 女神が飛鳥に顔を近づけながら言葉を口にする。

「あとはもうその門をくぐるだけ──。ほんの少しだけ私が力を貸してあげましょう」


 言葉を終えた女神が、手を飛鳥の方へ向けて伸ばす。

 すると、女神が出てきたクロスレイドの駒の隣にあった謎のカードが、飛鳥の胸の中心部に吸い込まれていった。

「……え? カ、カードがあたしのなかに……⁉」「


 次の瞬間、飛鳥の全身がとてつもない光に包まれた。

 あまりの眩しさに、その場にいる全員がたまらず目を閉じる。


「こ、これは────⁉」

 銀子は目を瞑ったまま飛鳥の方へ顔を向けて言葉を口にした。



 光がおさまり、全員がゆっくりと目を開ける。

 何事もなかったかのような光景。


「い、いったい何が……?」

 響香が思わず口にした。


 響香だけではなく、その場の全員の視線が飛鳥と女神に集まる。



「皇飛鳥。いま、あなたは覚醒の門をくぐりました。……自覚はありますか?」

「……わ、わかりません。ただ────」

 自分の両手を眺めながら言葉を口にしている飛鳥。

「──なんか……頭がすっきりしているような…………? 今までにないくらい落ち着いてる……」


 飛鳥の返事を聞いて女神が言った。

「やはり外からの力による覚醒では、自らすべてを悟るのは難しいようですね」

「し、失敗ですか?」

 飛鳥が恐るおそる言葉を返す。


「いえ。ただ自力での覚醒ではないため、自らが覚醒したことに気づけずにいるだけです。深層心理下では、すでに悟りを開いているはず──」

「よ、よく……わからないんですけど…………」

 不安を口にする飛鳥。


「わからなくて大丈夫です。今のあなたが知るべきは、自らの覚醒の真偽ではなくその能力の価値と使い方」

「あたしの……能力」

「自力で覚醒の門をくぐった御堂金太郎ですら、自らの能力自体には気づいていないのです。どちらにしても、竜崎りゅうざき王牙おうがの暴走による世界の崩壊を阻止するために、あなたには自分の能力を知ってもらう必要があります」


「あ、あたしの能力って……その、そんなに重要なんですか……?」

 下を向いて自信なさげに言う飛鳥に、女神が答える。

「もちろんです。あなたの持つ能力は、もはや人間の領域を超えています。あの御堂金太郎の持つ能力と比べても遥かに稀有レアで貴重──。あなたはもう神の領域に足を踏み入れたと思って頂いて結構です」


「か、神の──領域だと……⁉」

 これ以上ないくらい驚いた表情で、そう言葉を口にしたのは桐生。


 さらに女神の言葉を聞いて顔をあげた飛鳥を見て驚きの声をあげたのは銀子だった。

「飛鳥ちゃん…………そ、その目……⁉」


「……え?」

 驚く銀子の言葉に振り返った飛鳥の瞳────



 これら一連のアクションに釣られて、他の者たちの視線がすべて飛鳥の瞳に集中する。


「う、嘘でしょ……? あの時の金太郎と……同じ?」

 全員が言葉を失っている中、思わず銀子が言葉を漏らした。



 飛鳥の瞳は、吸い込まれそうなほどの白い光を放っていたのだ。

 これまで誰も見たことがないような──すさまじいまでの白とでも言うべきか。




「皇飛鳥──」

 女神の呼びかけで飛鳥が女神の方を向くと、女神は飛鳥の能力についての解説に入る。



「あなたの能力は『事象じしょうの改ざん』とでも言うべきですかね?」

「事象の……改ざん?」

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