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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第七章 次元激闘篇
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第百一話「向こう側の真実」

 ガブリエルを倒した金太郎きんたろうたち一行は、竜崎りゅうざき王牙おうがのもとを目指しながら、銀子ぎんこ響香きょうかの話を聞いていた。

 道中、銀子たちの口から明かされているのは、合流までの経緯いきさつだ。


「……いろいろと大変だったのよ」

 銀子が少し疲れたような表情で、そう口にした。


 ガブリエル戦に参戦する際に、別々に現れた銀子と響香。

 ふたりの話によれば、こちらの4.5次元へと侵入して最初のうちは、金太郎たちと同様に召喚システムを身体で覚えたりしていたそうだ。

 身体をこちら側の環境に適応させながら、金太郎たち一行との合流を目指していたらしい。


 だが、途中で遭遇した王将モンスターが思いのほか厄介なヤツだったというのだ。

 〈バッカス〉と名乗ったその王将モンスターは、戦闘能力においてはそこまで脅威を感じるほどではなかったが、その固有スキルが問題だったという。


「その固有スキルって?」

「多重転送よ」

 歩夢あゆむが質問し、銀子が答えた。


 ちなみに──

 ガブリエル撃破後に金太郎がふたりに歩夢を紹介しているため、すでに銀子たちも歩夢の存在を認知している。

 もちろん歩夢の方にも銀子たちを紹介済みだ。


「多重転送?」

 金太郎が首を傾げながら聞き返した。

「〈バッカス〉は消滅する直前に、わたしたちをそれぞれ別々の場所へと転送してしまったんです」

 金太郎の問いには響香が答えた。

「それって……」

「ええ。わたしたちはバラバラにされてしまって、別々に金太郎さんたちのもとへ向かっていました」

「マジかよ……」

 あっけにとられる金太郎。


「それが別々に現れた理由か」

「……おかげでボクは助かったけどね。ありがとう」

 横から口を挟んできたのは将角まさかどけいだ。 

 ガブリエルとの戦闘中は完全に戦意を喪失して放心状態の桂だったが、道中でだいぶ気持ちも回復してきており、元に戻りつつある。



 さらに銀子たちの話は続く。

 〈バッカス〉と遭遇する前に、それなりに4.5次元に適応していたこと。そして、すでに金太郎たちの気配を探りながら向かっている最中だったこと。そのため個別になってもやるべきことが明確になっていたこと──などがパニックに陥らずに済んだ要因だったようだ。


 結果的に、銀子が先に合流。やや遅れて響香が合流という形に至ったようだ。



「そういえば、飛鳥あすかは……?」

 金太郎が一番知りたかった疑問を口にした。

 ガブリエルとの戦闘中、ずっと気になっていたことだ。


 銀子が現れ、しばらくして響香も現れた。

 ふたりは飛鳥を探す役を引き受けて元の世界に残ったはずだ。


 そのふたりがここにいるということは──



「飛鳥ちゃんも一緒にこっち側へ来たわ」

 銀子が答えた。


「よかった……無事だったんだな」

 ホッと胸を撫でおろす金太郎。


 だが金太郎の言葉のあとに、響香が少しだけ戸惑った表情を見せた。

 響香の反応が金太郎の不安をかき立てる。


「え……? なにかあったの?」

 金太郎が恐る恐る銀子たちに尋ねた。


 銀子が少し困ったような表情で言葉を濁す。

「うーん……」

「な、なんだよ……銀姉? 心配になるだろ!」


 迷っている銀子の隣で、響香が口を開く。

「ねえ、銀子。もう全部……話してしまった方がいいのでは?」

「……そうねぇ」

「な……なんだよ?」


 銀子は少しなにかを考えるような素振りを見せてから、慎重に言葉を口にし始めた。

「アンタたちと別れたあと……。わたしたちが飛鳥ちゃんを探して、最後に辿り着いたのは角田かくたくんの住処だったのよ──」

「か、角田の……住処…………だって?」

 金太郎が、これ以上ないほど絶望的な顔に変わった。


「だ、大丈夫よ……! な、なにも……なかった()()、だから────」

「なにもなかったはずって……ぎ、銀姉の反応が、逆に不安なんだけど…………」

「……わたしたちも正直なところ、よくわからないのよ……」

「どういうことだ……?」


 狼狽うろたえる金太郎の横で、アイコンタクトをとる銀子と響香。

 金太郎に気づかれないように軽く頷き合ってから、銀子が話を続ける。

「わたしたちが角田くんの部屋に侵入したあと、すぐに角田くんが入ってきて──」

「その背後から……飛鳥さんが現れました」

 銀子の言葉の途中、続きを響香が話した。


 その後の経緯についても銀子が主体で話が進んだ。

 少し口論になってから角田たちと将棋で勝負することになってしまったこと。

 その場に桐生きりゅう宗介そうすけが現れたこと。

 飛鳥が変貌してしまっていたことは伏せつつも、角田に洗脳されてしまっていたことまで話した。


 ただ、それは金太郎も想定していたことだった。


「桐生先生は『あんたにお願いされた』って言ってたけど……?」

 話の途中、銀子が金太郎へ問いかけた。

「ああ……。俺も飛鳥の件で角田がチラついて不安だったから、こっちに来る前に先生に相談しておいたんだよ」

「なるほどね……。それじゃ、やっぱりあんたも角田くんを警戒していたのね」

「そりゃそうだろ……? あんなことがあったんだから……」

 やや疲れた表情で金太郎が答えた。



「……で、その後どうなったんだよ?」

 少し沈黙を挟んだあと、金太郎が会話の続きを促した。

「そうね──わたしたちがわかってる範囲で話すわね」



 銀子は思い返すように、金太郎たちと別れたあとの一部始終を語り始めた。


◇ ◆ ◇


 角田行きつけの将棋道場──。


 飛鳥と銀子、そして角田と桐生が向かい合って座り、対峙している。


 話は数日前にさかのぼる。

 飛鳥を捜索する銀子たち。角田との遭遇。再洗脳された飛鳥の出現。そして桐生宗介の参戦──。

 

 飛鳥奪還のため、将棋対局でのチームバトルに挑んだ銀子たち。

 飛鳥と銀子が互角の勝負を繰り広げている傍らで、桐生を前に絶望した表情で震えている角田。



「まだ続けるのか────? 正之進のせがれよ」

 桐生の鋭い眼光が、角田を睨みつけた。


 もはや大人と子供。試合は一方的なものとなっていた。

 急に桐生と将棋対局することになった角田の精神状態が不安定だったこともあるが、相手が桐生宗介の時点でやむを得ない結果だったのかもしれない。

 別に角田が弱かったわけではない。桐生が強すぎたのだ。


「ぐっ……⁉ き、汚ねェぞォオオオオオオ! なんでアンタがそっち側なんだよォオオオオオオ……⁉」

 顔面いっぱいに脂汗を滲ませて、角田が叫んだ。



「……まだ続けるのか? ──と聞いておる」

 桐生の質問に答えずに発言した角田の言葉を無視するかのように、再度同じ質問を繰り返して口にする桐生。


 ただ──

 角田に向けられている威圧感は、先ほどよりも増していた。

 桐生の圧をもろに受けた角田は、桐生を直視することが出来ずに下を向いてしまっている。



「さっさと答えんか!」

 さらに桐生は、角田に向けて殺意に近い圧を放った。

 すると角田の身体がビクンと大きく痙攣してから、小刻みに震えはじめた。


「お、俺様の負けだァ……」

 蚊の鳴くような声で負けを宣言する角田。


「さて────。あとは、あっちの勝敗次第か」

 桐生は、銀子と飛鳥が対局している方へと視線を向けて言った。

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