7 作中のキャラクターへの扱いについて考える
硬そうなサブタイトルですが、あまり深く考えてはいないです。例えて言うと「創作物の海の波打ち際でパシャパシャと水遊びをしている」ような感じでしょうか。不快な方はブラウザバックをお願いします。
また、以下の作品のネタバレを含みます。ネタバレが懸念される方はやはりブラウザバックをお願いします。
コミック「あしたのジョー」「タッチ」「アオイホノオ」「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」。
アニメ「勇者ライディーン」「超電磁マシーン ボルテスV」「新世紀エヴァンゲリオン」「魔法少女まどか☆マギカ」。
拙作「うつし世は夢 夢こそまこと」「チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話」「彼を殺したのは」「地下......階」「窓に映る影」「本当の光が差す時には......」。
1 自作のキャラクターへの扱いについて考える(前半)
家紋武範様の「夢幻企画」参加作品の「うつし世は夢 夢こそまこと」。 https://ncode.syosetu.com/n6280gr/
たくさんの感想、レビュー、ポイントありがとうございます。
さて、この作品。冒頭部の父親と4歳の娘の掛け合いが良いとの感想をたくさんいただきました。
ただ、これが当初構想を変更する基になったのですね。
裏話をすると、家族3人が見る夢はもっと酷い内容の予定だったのですよ。
当初構想では地獄へ行ってしまう。そこを長い黄泉平坂を登って脱出しようとするのだけれど、獄卒に見つかると惨殺されて、また地獄の底に落ちる。そして、また黄泉平坂を登って脱出しようとするという設定でした。
獄卒と戦う力などはありません。逃げることしか出来ない。そして、見つかると苦しい思いをして殺され、地獄の底に落ちる。地獄の底でも責め苦に遭うという……
これが書けなくなってしまったのですよ。何でかと言いますとね。4歳の女の子をここまで酷い目に遭わせるのもどうかなと。
それで現在の形に落ち着いたのですが、私には前科があります。
私のなろうのデビュー作のSF長編「チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話」。
https://ncode.syosetu.com/n6292fn/
メインヒロインのラティーファの親友エウフェミアが敵の組織に洗脳され、ラティーファに襲い掛かる。しかし、逆襲され、瀕死の状態で正気に戻ったエウフェミアは、親友のラティーファに止めを刺してくれることを最後の願いとする。
涙を飲んで止めを刺したラティーファは敵の組織への怒りを募らせる。これが当初の構想。
だけど、書いているうちにエウフェミアに情が移り、洗脳が不完全なうちに救出され、作品の最後まで生き延びて、砂の惑星のファーストレディになるという展開に変更。
うーむ(^_^;)。他の方の活動報告で、「これから作品中のキャラクターがひどい目に遭うストーリー展開を予定している。何だか可哀そうで筆が進まない」という方もいました。
それに対し、自分はあまりそういう経験はないという人もいました。
では雑談を挟んで、後半に続くっ!(←ここ声優のキートン山田氏の声でお願いします)
うららー うららー
2 商業作品のキャラクターへの扱いと受け手の反応について(雑談)
自作についてもあるのですが、ここで商業作品でのキャラクターへの扱いについて、知ってることを記してみます。これはあくまで私の個人的見解で雑談です。
2-1 1970年代。実体験はなく聞いたお話
この辺はリアルタイムでなくて、先輩方から伺ったお話です。
私の知る限りの最も早い例は「あしたのジョー」。主人公の矢吹丈の最初で最高のライバル力石徹でしょう。
フィクションの人物の死に対し、葬儀が行われたのです。
創作物のキャラクターへの接し方については革命的な出来事だと思いますが、先輩曰く「先駆的なことだったので、周囲の人間には『大人になってもマンガを読む変人たちの奇行』という評価も多かった」そうです。
さて、1970年代も後半になってくると明確な流れが見えてくるようです。
ここで取り上げさせていただくのは、「勇者ライディーン」のプリンスシャーキンと「超電磁マシーン ボルテスV」のプリンスハイネルです。
プリンスシャーキン。彼の死には凄まじい数の抗議のハガキが製作現場に送られたそうです。
あ、そうそう。昔は抗議のハガキにカミソリを貼って送ったそうですよ。怖いですねー。というか危険物の郵送ということにならないのかしらん。ご存知の方教えて下さい。
恐らくこの手のことで初めての例だったと思います。製作現場はもうびっくり。なんで敵役の幹部が死んで抗議がくるの? でしょうねえ。
このプリンスシャーキン。仮面をかぶっているとカッコイイ。「機動戦士ガンダム」のシャア・アズナブルのモデルではと言われるほどです。
でも、仮面を外すとイマイチって、私に抗議のハガキを送らないでくださいm(__)m。
そして、プリンスハイネル。彼はまごうことなくカッコイイでしょう。ご存知の方も多いかと思いますが、ご存知ない美形好きの女子の方はググる価値はあると思います。
さて、物語の進行と共にどうもプリンスハイネルは死ぬのではないかと予感する美形好き女子の方は増えて行きます。続々と製作現場に届く「彼を死なせないで」という嘆願のハガキ。
この時の制作現場の方の感想。「彼の死が近いと何故分かるのだ? 美形好き女子恐るべし」。補足しますと家庭用の録画ビデオとか全然普及していない時代のお話です。
2-2 1980年代~90年代 ちょっと遅れたものもあるけど ほぼリアルタイム
はい。この時代。この作品を挙げましょう。「タッチ」です。
あまりに有名なカっちゃんこと上杉和也君の死。これについて、島本和彦氏の自伝的作品「アオイホノオ」で裏話が披露されてました。
この頃には、作品の人気キャラを死なせると、猛烈な抗議が来るということは常識として定着。そのため、少年サンデー編集部の方針は「カっちゃんは死なせるな」。しかし! 作者のあだち充氏と担当編集者はストーリー展開上、死なさない訳にはいかない。
かくて、担当編集者は編集部を通さず、直接印刷所に原稿を持ち込むという手法をとる。編集部が気付いたのは既に印刷されてから。どうにもならない。そして、発売と同時に抗議の電話が殺到。
島本和彦氏はフィクションと言ってますから、全て本当でもないのかもしれませんが、まるっきりの作り話でもないのでしょうね。
個人的な話をすると、私がいた下宿の一室で友人が「タッチ」の単行本を読みながら、ぼそりと「殺しちゃうんだもんな」と呟いたのは、忘れがたい思い出です。
じゃあ編集部のみなさんが優しいかというとそんな訳でもなくて、「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」とかでは、序盤、弱虫だったポップは「いらないから殺せ」と言われたと原作者の三条陸氏が語っています。
「人気キャラにはなりえない」と思ったのでしょうね。「こいつはこれから頑張る」と説得したそうです。
2-3 21世紀では
はい。ここでは「新世紀エヴァンゲリオン」と「魔法少女まどか☆マギカ」を取り上げさせていただきます。
「新世紀エヴァンゲリオン」では二人のヒロインが死、及び精神が崩壊しています。「魔法少女まどか☆マギカ」では一人がそれはそれは凄惨な死。メインヒロインはそもそも存在がなかったことになる。これは今まで紹介した中でも一番ひどいのではないかと。
でも、話題にはなりましたが、かつてのような抗議の嵐というお話は聞かないのですね。私が知らないだけかもしれませんが。
聞いてる限り、作っている人があの人ならこれくらいやると受け取り手が分かっているというか。衝撃はあるのでしょうけど。それだけ文化が成熟したのかなあとも思ったりします。
3 自作のキャラクターへの扱いについて考える(後半)
いろいろ書いてきましたが、実は私も自作のキャラクターに酷い目に遭わせていたりします。
「彼を殺したのは」
https://ncode.syosetu.com/n4473fs/
主要登場人物3人が謎の奇病で死ぬ
「地下......階」
https://ncode.syosetu.com/n8672gk/
好奇心から入り込んだ立ち入り禁止の場所で奇妙な男になぶり殺しにされる
「窓に映る影」
https://ncode.syosetu.com/n8469gj/
これが一番酷いかも。何気なく漏らした愚痴がもとで狭い世界に閉じ込められる
上記の3つはホラーなんですが、SFでもやってます。
「本当の光が差す時には......」
https://ncode.syosetu.com/n4704gk/
主人公の兄が射殺される
うーん。ちっとも優しくないですな。私は。
でも、あまり後悔はしていない(おい)。
ストーリー展開上、無理はしていないという思いがあるからでしょうか。
大変とりとめのない話になってしまってごめんなさい。
少しでも楽しんでいただけていたらよいのですが。
©砂礫零様