つながっていました
キャスリンは頭の中の映像を整理してから、自分の部屋に戻っていった。バーバラを呼んでお茶を淹れてもらい、ほっと一息した。
「お嬢様なんだかお疲れの様ですね」
「さすがバーバラ。疲れたわ~」
ふたりでそう話していると、ドアをノックする音がして現れたのは、執事のマークと父のスコットだった。
バーバラを下がらせて、キャスリンは先ほど見た映像を話すことにした。部屋の外に漏れないように音の遮断と時間を止める魔法をかける。キャスリンが魔法をかけ終わったのを見て父のスコットが話してきた。
「先ほど報告書を見せてもらった。あとマークには少し聞いたよ。他に何かわかったのかな」
キャスリンは報告書に印のあった三人の話をした。特にクミールという男が、ハビセル侯爵であるロングの回し者だったと言ったとたん、父親であるスコットが息をのむ音がした。それから印のある後のふたりは、クミールの手先になるように仕向けられること。
それから、キャスリンは彼ら三人が歩むことになる将来を見た事を話した。
「どうなんだね」
キャスリンの言葉にスコットが食いつき気味に聞いてきた。
「私が経験した前の人生のようになってしまいそうです。執事もコルトからタクシルに変わるだけですし」
「執事が変わる?あっ」
キャスリンに聞いたとたん、スコットは執事のマークを見て申し訳なさそうな顔をした。
「気にしないでください。旦那様」
マークはそうにこやかに言ったが、あまりに冷え冷えした声にキャスリンとスコットは思わず顔を見合わせた。キャスリンは寒い空気を変えるべく、違う話をした。
「厩舎で働いているバスクはこのままだとジョージ第一王子の落馬事故にも関わりますし、タクシルはこの公爵家の情報をストラ男爵に流します。
あとクミールの未来を見た時にびっくりしました。前にダイモック公爵寄りの貴族たちばかりが、謎の流行り病で倒れたと言ってましたよね。どうもこれに関係してるようなんです。それもストラ男爵からその流行り病にかかる何かを譲り受けていた未来が見えました。たぶん薬だと思うんです。でもどうして薬がはやり病と関係するのかよくわからなくて。ただその未来にストラ男爵領にいるシムが見えました。彼が強く関係しているようなんです」
「シムが?」
キャスリンの言葉を聞いて、マークが思わずといった風で口から出てしまったようだ。
「確かシムという人物はアシュイラ皇国のものだったな。しかも薬師だとか。なにか引っかかるな。あとジョージ王子の件はどうしても防がないと」
「そうですよね」
「私、今からシムのもとへ行って未来を見てきます。それからストラ男爵のところにも」
「大丈夫なのかい?転移は体に負担がかからないのかい?」
キャスリンの言葉に父親であるスコットが心配した。
「大丈夫です。最近どんどん転移の力が上がったので。今から行ってきます。すぐに戻りますのでここで待っていてくださいね。お茶も用意してありますから。ちょっと冷めてますけど。この部屋の時間は止めていますから安心してくださいね」
キャスリンはスコットにそう言うが早いがすっと消えてしまった。スコットとマークはお互い顔を見合わせた。お互い微妙な顔をしていた。
「お茶でも貰おうかな」
「そうですね。準備いたします」
スコットが言い、マークは部屋の隅にあったお茶の道具を見てそちらに向かっていったのだった。
キャスリンといえば、まずシムの顔を思い浮かべて転移した。転移したのはシムの仕事部屋で、突然現れたキャスリンに驚いた風だった。
「ごめんなさい。急に押しかけて。悪いけど、シムあなたの未来を見せてくれる?」
キャスリンはシムにそういうなりシムに魔法をかけた。多少魔力のあるシムは、自分に魔法がかけられたことを知った。体の自由が利くようになると、キャスリンに尋ねた。
「未来とは?」
「今あなたがこのままだと将来訪れる未来のことよ。魔法で見せてもらったの」
「何かわかりましたか?」
「ええ、重大なことがわかったわ。またマークと来るから安心して。あなたたちの未来をストラ男爵のいいようにはさせないわ」
そう言うとキャスリンは消えてしまった。あとに残されたシムは茫然と突っ立ていた。
キャスリンは次にストラ男爵のもとへ飛んだ。ストラ男爵は昼間っから酒を飲んでくつろいでいた。テーブルにはおつまみが盛りだくさん用意されていた。ちょうど一人だったので、キャスリンは急いで魔法をかけた。魔法をかけ終わり、ストラ男爵の元を去るときにキャスリンは、たった今見たストラ男爵の未来に嫌な気持ちになりちょっとだけ魔法をかけて消えた。
ストラ男爵はいい気持ちで酒を飲んでいた。報告書の件で、手下になったクミールからいい話を聞けた。そのことをハビセル侯爵にも話すとよくやったと褒められて今日はご機嫌だった。
「やっぱりこの世の中は金だな。クミールというやつに金をちらつかせたら、すぐこちらのいいように動いてくれたわ。あ~あやっぱり仕事の後の酒はうまいわい」
そういってひとり酒を飲んだのだが。
ブブゥ____。
「何だこれ。ずいぶん苦いじゃないか。今までおいしかったのにいったい何なんだ?おい、誰かいないか?」
どうやら飲んだ酒が苦かったようで、ストラ男爵は慌てて酒を吹き出したのだった。
これはキャスリンの仕業だった。あまりに見た未来が嫌なものだったので、ストラ男爵が飲んでいた酒を魔法で苦くさせてやったのだった。
キャスリンはふたたび自分の部屋に戻った。ちょうどお茶を飲み始めたスコットは、急に現れたキャスリンにびっくりしてお茶を吹きだすところだった。
「ただいま戻りました」
「早かったな」
「はい、わかりましたわ。流行り病もすべて」
キャスリンは、意気込んで話し始めたのだった。




