表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません  作者: にいるず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/91

クミールの正体

 キャスリンは、クミールを毎日見張ることにした。クミールは下働きとしててきぱきと仕事をしているように見えた。重い荷物をさりげなく持ってやったり、大変な仕事を代わってやったりとよく働いているように見える。

 

 ただ持ち前の見た目の良さを最大限に生かして、公爵家で働いている女性たちにいろいろ声をかけまくっては、世間話をしていた。そして自分がほしい情報をどんどん仕入れていった。女性の方も耳触りのいい言葉を言ってもらい、時にはちょっとしたお菓子などをもらい、ホイホイ喋りまくっているようだった。

 

 ひとりひとりの情報ではそれほど役には立たないが、クミールのようにいたるところから情報を仕入れていると、結構な情報量になるものだとキャスリンはクミールを見ていて感心した。その様子を見てまるでコルトにそっくりだと思った。

 

 ある日の事だ。いつものようにクミールの情報の仕入れ方にひとしきり感心していると、誰かがクミールを呼ぶ声がした。

 声の主は厨房で働いているもので、いつものように食材を持ってきた業者がいたので、食材を運んでくれるようクミールに頼んだようだった。


 「ここは、やっておきますから。どうぞ厨房に戻ってください」


 「悪いな」


 厨房の者は、クミールと食材を運んできた業者を置いて厨房へ戻っていった。残った二人は厨房の者がいなくなったのを確認して、目くばせした。


 「やあ、クミール。お前下男が様になってるぜ。王都で女泣かせのクミールと呼ばれたお前がさ」


 そう言った業者の男がニヤッと笑った。


 「お前こそ、行商がよく似合っているぜ」


 ふたりはどうやら知り合いらしい。それもよくないほうの。


 「どうだ?うまくいったか?」


 「ああ、ここの厩舎の奴と執事見習い、あれはたぶん落ちるな」


 「そうか、やったなクミール。これでロング様も喜ぶぜ」


 「後は厩舎の奴を賭博場に連れて行って、借金だらけにすればいいだけだ」


 「それにしてもお前が作った報告書、ロング様がたいそう喜ばれていたぜ。しかも自分の名前も入れてるとはな。ストラ男爵もまさかお前が、ロング様に仕えているとは思っていないよな。さすが凄腕の情報屋だぜ」


 「ああ、まず欺くのは味方からってな。それより早くここを出たいよ」


 「あともう少しだ。待ってろ。そうしたらお前も晴れて貴族の仲間入りってわけだぜ」


 「あ~あ、楽しみだ」


 2人はそう笑いあって、食材を運んでいった。


 

 あとに残されたキャスリンは先ほどロングという名前が出てきてびっくりした。呼吸を整えて魔力が暴れださないようにするのに必死だった。ロングというのは、ハビセル侯爵家の当主であるロング侯爵の事だ。ひいては、キャスリンが婚約を結んだ第二王子の母である側妃の実家でもある。


 こんな時からダイモック公爵家に、ハビセル侯爵家のものが入り込んでいたことに唖然としたのだった。


 キャスリンは、すぐ執事のマークに報告しにいった。マークを見つけると、ちょうど後ろにあの執事見習いのタクシルが立っていて、キャスリンは自分の顔が引きつっていないか心配したほどだった。


 「ねえマーク、お父様いる?今度お兄様のお誕生日でしょ。何か差し上げたいの。ちょっとお話できるかしら」


 「はい、今から聞いてまいりますね。あっ、そうだ。タクシル?旦那様が執務室にいるかどうか確認してきてくれないか?」


 「はい、見てまいります」


 そういってタクシルはなんとなく顔を青くさせながら、執務室のほうに向かっていった。

 キャスリンはタクシルが執務室へ向かっていったのを確認してから、ほかのものに声が聞こえないようにバリアを張った。


 「ねえ、マーク。わかったわよ。報告書に印のあった厩舎で仕事をしているバスク、このままだとストラ男爵に使われるわ。あなたの仕事を手伝っている彼もそう。そうそう残りの一人は黒幕がハビセル侯爵だったわ。今、彼を執務室へ行かせたのはわざと?」


 「はい」


 キャスリンは、去っていくタクシルを見るマークの顔が少しひきつっているのを見た。キャスリンがマークにそう話している最中、キャスリンに何かが引っかかった。魔力を使い調べると、執務室におとりとしておいてあった報告書を誰かが触ったようだ。タクシルに違いない。


 「マーク、やっぱりタクシルはこの公爵家の動きを探りたいようね。今報告書に何者かが触ったわ」


 「そうですか...」


 マークはずいぶん信用していたのだろう。キャスリンの言葉にちょっと震えた声で言ったのだった。


 「ねえお父様はどこへ?」


 「今王宮です」


 「そう、じゃあ戻られたら、私の部屋に来てくださるようにお願いできる?」


 キャスリンはそう言ってマークと別れた。


 そうしてキャスリンは魔法部屋に行った。魔法部屋は一見すると、図書室のように見える。キャスリンが中に入ると魔法で、ただの広い部屋に戻るのだが、魔法で図書室のように見せておいてよかった。でなければ、今頃キャスリンの秘密もすべてハビセル侯爵に筒抜けだったことだろう。

 キャスリンがこの屋敷にかけた魔法では、まだクミールは引っかかっていない。今のところ情報収集しかしていないはずだ。もし悪意があって毒を入れたり害をなそうとするときには、魔法が反応するようになっている。


 しかしこのまま何もしないで相手の出方を待っているつもりはない。キャスリンはまた魔法の鏡を使ってとある魔法を習得するつもりだった。

 



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ