マークへの報告
キャスリンは魔法部屋に戻った。コルトの過去を見たせいでスティーブのところまで転移してしまったので、部屋に戻って時間を見ると、時間をちょっと止めたはずがもう午後になっていた。
キャスリンはお腹が空いたのとマークにコルトの事を報告しようと部屋を出た。部屋の中のキャスリンが気になっていたのか、廊下にいたバーバラが飛んできた。
「キャスリン様、お昼ご飯を召し上がっておりませんよね。今準備しますね」
「ありがとう。ねえバーバラ、マークはどこにいるの?」
「今は確か執務室だったように思います」
「ありがとう。じゃあ部屋に戻ってるわ」
キャスリンは、部屋に戻ってソファでちょっとくつろぐだけのつもりが、いつの間にか眠ってしまったようだ。 バーバラのキャスリンを呼ぶ声で起きた。
「お嬢様、お疲れですか?」
バーバラは、テーブルに軽く食事の支度をしてくれていた。キャスリンは、むくっと起き上がると食事をとった。部屋でとっているので、食事を食べながらバーバラに話しかけても誰にも文句を言われないので、キャスリンは食べながらバーバラに聞いてみることにした。
「ねえ、バーバラ。あなたにはここに来る前の記憶って何かある?例えば前住んでいたところの事とか」
「いえっ、よく覚えていないのです。でも何か怖いことが起こった気がするんです。小さいころ夜になるとよく泣いていたって父が言っていましたから」
「そうなのね」
キャスリンはコルトの過去で見た光景をまた思い出してしまい、急に食欲がなくなってしまった。
「ねえ、バーバラ。あなたが思う一番怖いことって何?」
「それは、自分の親しい人、父やキャスリン様を失うことですよ」
「まあ、ありがとうバーバラ。私もそうよ。そうよねえ~。でもそんな親しい人がいないときはどうしたらいいのかしらね」
「まあそうですね」
キャスリンは食事を食べ終わると、さっそく執務室に行くことにした。バーバラが前もって連絡してくれているらしい。
キャスリンが執務室のドアをノックした。直ぐにマークが出てきてキャスリンを案内してくれた。
キャスリンが中に入ると父のスコット公爵がいた。
「どうしたキャスリン。何かわかったのかい?」
「はいお父様、この前言ったコルトという者の事ですが、彼の過去を見ました」
「「えっ!」」
父のスコット、そしてマークのふたりともびっくりして無意識に声を出してしまったようだ。
「本当かね」
「はい」
キャスリンは、そういってスティーブに見せた時のように黒い箱を魔法で出し、映像を二人に見せた。
スコットは食い入るように見ていたが、マークは仲間であるサイモクのあまりに悲惨な最後に絶句していた。映像を見終わった後は、部屋の中が重い空気に包まれた。
その空気を振り払うようにキャスリンが声を上げた。
「お父様!お父様にとって一番怖いことって何ですか?マーク!マークは何ですか?」
キャスリンはふたりに尋ねた。急に変な質問をしてきたキャスリンに、映像を見たばかりのふたりはまだショックを引きずっているらしく、意味がわからずぽかんとしていた。しかしいち早く我に返ったスコットがニヤッと笑ってキャスリンに言った。
「やはり毎日毎日悪夢を見ることなんじゃないか」
キャスリンとスコットの会話を聞いていたマークが、ポンと手を打って会話に加わってきた。
「そうですね、私も旦那様と同じ、何度も何度も殺される夢を見続けるのはつらいですね。寝るのが怖くなりそうです」
スコット公爵に負けず劣らず黒い笑みを浮かべた。
「そうだな。あと自分が殺した者に殺される夢を見るのも怖いなあ。どうかなキャスリン?」
「お二人のご意見とっても参考になりましたわ。ありがとうございます。さっそく魔術の訓練をやってみますわ」
「夕食を忘れないでおくれよ」
「お嬢様、よろしくお願いいたします」
「はいお父様!マーク任せてね」
キャスリンは、ふたりからためになる意見を聞けて、ホクホクしながら魔法部屋に戻った。先ほどのふたりの意見を聞いた時、彼女の頭の中で黒い箱から見た映像の事を思い出した。確か彼女ホラーといっていたわね。あれ使えそう。
キャスリンは、さっそく魔法の鏡を出して使いたい魔法をイメージした。すると直ぐにキャスリンは使いたい魔法を習得することができた。
今から行くわよ~コルト!待ってってね!
キャスリンは先ほどのふたりに劣らず黒い笑みを浮かべて、再びコルトの元へ転移していったのだった。
次回やっと1回目のざまあ回です。よろしくお願いいたします。




