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大切なあのひとを失ったこと絶対許しません  作者: にいるず


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マークと男の元へ会いに行く

 魔法部屋の壁の隅には父のスコット、兄のクロード、バーバラが立っている。部屋の真ん中に執事のマークとキャスリンが立った。母のミシェルはお友達と大事なお茶会があるというのでいなかったが。 


 「いい!マーク行くわよ」


 「はい」


 キャスリンの隣に立つマークは固く目をつぶり、今から死地へと向かうばかりの悲壮な顔をしていた。思わずぷっと吹き出してしまったが、気持ちを入れ替えてあの男の家を思い浮かべた。


 キャスリンとマークがかき消えた後、部屋に残った三人は唖然としていた。


 「すごいな」


 「そうですね」


 「大丈夫でしょうか?」


 三人がそれぞれ感想を漏らしたのだった。


 



 「キャスリン!いったい今まで魔法部屋で何をやっていたんだね。クロードから聞いたよ」


 キャスリンが夕食のため、テーブルに座ったとたん、久しぶりにテーブルに座っている父のスコットからお小言を食らった。

 キャスリンは思い切り兄のクロードをにらんだ。


 「仕方ないだろ。すべて報告しろと言われてるんだから」


 兄のクロードは自分は正しいとばかりに胸を張っていた。


 「お嬢様、私も旦那様にお伝えしました。すみません」


 執事のマークもキャスリンに頭を下げた。


 「お父様、大丈夫よ。今までだってもう何回もやってるもの。しかも過去まで行けるようになったの。スティーブにも会えたのよ」


 キャスリンが自信満々に言うと兄のクロードがニヤッと笑った。


 「まさか寝顔を見に行ってるんじゃないだろうな」


 キャスリンは飲んでいたスープを吹いてしまった。これには家族全員が顔をしかめた。キャスリンが寝顔を見に行ってしまったことを白状してしまったようなものなのだ。


 「駄目よ。まだ12歳といってもれっきとした女の子なんだから」


 すかさず母親のミシェルがキャスリンの行動をたしなめた。


 「大丈夫よお母様。過去に戻るときには犬になっちゃうんだから」


 今度は兄のクロードがスープを吹いた。

 ミシェルが兄のクロードに顔をしかめる。


 「ごめんなさい。だってあまりにキャスリンが変なことを言うからさぁ。でもキャスリンどうして犬になるのさ」


 「犬になるほうが、魔力の効率がいいらしいのよね」


 「そんなものなのか。魔法は不思議なものだなあ」


 「あなた、ちゃんと叱ってくださらないと」


 「そうだった。キャスリン、危なくはないのかい?」 


 「大丈夫よ。マークから聞いてると思うけど、私を見ることができるのは魔力のある人だけだから。ねえお父様、マークを連れて行ってあげたいわ。もしかしたらアシュイラ皇国の人かもしれないのよ」


 キャスリンは、いかに自分が魔法を使いこなしているか家族にとくとくと説明した。

 そして気を付けなさい!との言葉を家族全員から10回以上もらいやっとOKが出たのだった。


 


 キャスリンとマークは、男の人の家の薬草が干してある部屋に転移した。マークは一瞬ここがどこかわからなかったらしくあたりをきょろきょろしている。


 「マークついたわよ」


 「そうですか。ここが...」


 「これからどうする?勝手に人の家に入ってるけど」


 「そうですね。もう一方の部屋には誰かいるんでしょうか?」


 2人が小さくもない声でしゃべっていた時だった。

 不意にドアが荒々しく開いて、目の前に棒のようなものを持った男が立っていた。


 「誰だ!」


 「ちょっと待ってー」


 「シム?」


 自分の名前をふいに呼ばれた男は、棒を上に掲げたまま固まった。

 そして小さくつぶやいた。


 「マークなのか?」


 「そうだよ、マークだよ!」


 マークはシムと呼んだ男の前に行き、棒を持っていないほうの手を握った。手を握られた男の目から涙があふれていた。

 シムはマークに抱き着いた。


 「よくぞ無事でいたな」


 「おおっ」


 お互い半分涙声で、互いの背中をたたきあっている。

 ようやく二人は、突然の再会に満足して離れた。

 シムと呼ばれた男は、やっとちょっと離れたところに立っていたキャスリンに気づいてはっとしたようだった。


 「この前にもうちに来てなかったかい?」


 「はい。やっぱり見えていたんですね」


 「どういうことだ?」


 困惑したシムがマークに聞いた。

 

 「話せば長くなるんだが」


 「そうか」


 「ちょっとここの椅子に座っていてくれ。今、かみさんと子どもを連れてくるから」


 そういって男は部屋から出ていった。

 男が部屋を出たのを確認して、キャスリンが言った。


 「やっぱり知り合いだったのね」


 「はい、この時代に転移してきたときに一緒にいたものです」


 「そうだったの」


 やがて男は一人の女性と男の子を連れて部屋に戻ってきた。

 女の人は手にお盆を持っており、お茶を出してくれた。

 

 「妻と息子だ。双子が向こうで寝ている。あと彼女の娘がいるんだが...」


 この前見た男の子は、ちょこんとこちらに頭を下げた。

 妻と呼ばれた女性も挨拶してくれた。やはりイソベラに似ている。きれいな人だった。


 後で双子を見てくれと言って、シムは妻と男の子をもう一つの部屋に戻らせた。

 キャスリンが言った。


 「今から長い話になるので、ちょっとこの部屋の時間を止めますね」


 シムの目が大きく見開かれた。

 

 

 

 


 


 


 

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