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どういうことでしょう

 キャスリンはふと目が覚めた。思い切りのどをかきむしりそうになる。しかしのどの焼ける様な苦しさがない。

 よくよく周りを見渡せば、ここは王都にある屋敷のキャスリン自身の部屋だ。あの貴族用牢屋でない。

 

 キャスリンが状況を理解できず、思考停止に陥っていると不意にドアをノックする音がした。

 キャスリンが返事をする余裕がないせいで、外にいる人物はどうしたものかと思ったらしく今度声がした。


 「お嬢様、よろしいでしょうか」


 聞き覚えのある声を聞いて、キャスリンは飛び起きた。

 そのままの恰好でドアを開ける。


 「お嬢様!」


 声の主はいきなり開けられたドアにびっくりした声を出した。そしてドアを開けたものを見て今度は目を丸くした。

 いきなり部屋の主が扉を開けて、自分に抱き着いている。

 

 「バーバラ!」


 キャスリンは懐かしい声を聞いて、いてもたってもいられなかった。キャスリンが抱き着いているのは、乳姉妹であり幼馴染であり唯一の友達でもあった人だ。

 

 「どうしたのです、悪い夢でも見たのですか」


 そう言って背中を優しくなでてくれているのは、やはりキャスリンがよく知っているバーバラに他ならない。

 夢でも見たのだろうか。それともやはり天国に来たのだろうか。そうに違いない。やはり先ほどの事は、夢ではなく現実にあったことなのだ。でなければバーバラがいるわけがない。バーバラは三年前に死んでいるのだから。

 キャスリンはしばらくバーバラのぬくもりを全身に感じていたが、顔を見ようと体を離した。


 そしてバーバラを見てびっくりした。

 目の前にいるバーバラが若返っているではないか。やはりここは天国なのだ。天国では自分の好きな頃に戻れるのかもしれない。

 キャスリンはバーバラが立っている横の壁に立てかけてある大きな鏡を見た。

 やはり自分も若返っている。どう見ても自分が死んだあの時より5歳は若い。


 「バーバラ、ここはまるで私の部屋みたいね。私もバーバラも若返っているし。幸せね~。のども痛くないわ」


 バーバラはキャスリンの言葉を聞いてぎょっとした顔をしたが、キャスリンの一つの言葉に反応した。


 「お嬢様、のどが痛いんですか」


 「ううん、もう痛くないわ。さっきは死ぬほど痛かったけど。あ~あ死んじゃったのよね」


 「えっ」


 バーバラは真っ青な顔になって、慌てて部屋を出て行ってしまった。ドアを開け放したまま。

 そのためバーバラが何を叫びながら、飛んでいってしまったのかすべて聞こえてきた。


 「バーバラったら何を慌てているのかしら。それにしても天国ってまるで今までいた世界と少しも変わらないのね」


 キャスリンはなんだかまた眠くなってまたベッドに戻っていった。

 うとうとしていると、耳元でいろいろな声がした。


 「キャスリンはどうだ?」


 「お嬢様は大丈夫ですか」


 キャスリンは聞き覚えのある声にいぶかりながら、パチリと目を覚ました。


 「「「キャスリン!」」」


 「お嬢様!」


 そこには泣きはらした両親、兄のクロード、そしてバーバラがいた。そして後ろにおまけのように医師が立っていた。


 「どうしたのみんな?あらっ、お父様とお母様、お兄様まで天国にいらしたの?」


 キャスリンが起き上がって皆を見ると、皆顔色がずいぶん悪い。


 「まあ~、みんな顔色がずいぶん悪いわね。やはり死ぬと顔色も悪くなるのかしら。でもバーバラはさっき顔色はそれほど悪くなかったわよね」


 キャスリンがポロリとこぼした言葉を聞いて、皆の顔色がよけい悪くなった。


 「旦那様、ジョージ王子がいらっしゃいましたが」


 開きっぱなしのドアの端で執事のマークがキャスリンの父を呼んでいた。


 「マーク!あなたも天国に来たの?そういえばマーク、さっきジョージ王子と言ってなかった?」


 みんなの肩越しにいる執事のマークにキャスリンがそう声をかけると、マークもぎょっとしたように顔を青くさせた。


 「マーク、ジョージ王子にはちょっと待っててもらってくれ」


 ダイモック家当主であるキャスリンの父がマークにいい、執事のマークは慌ててドアを閉めて出ていった。

 

 「キャスリン大丈夫?」


 母親のミシェルがベッドサイドに来て、泣きながらキャスリンの手をにぎった。その手は温かかった。


 「お母様の手温かいのね。わぁぁ__!」


 キャスリンは母ミシェルに抱き着いて泣いた。

 キャスリンのその小さな背中を父であるスコットと兄のクロードが優しくなでていたのだった。


 そのうちキャスリンは泣き疲れたのか、母親に抱き着いたまま再び眠ってしまった。

 キャスリンを抱きかかえ、ベッドに横たえたスコットは思わずつぶやいた。


 「どうしたのだろう、キャスリンは。先生キャスリンの容態は?」


 父親であるスコットが困惑した顔で、後ろに立っている医者に尋ねた。


 医者はすぐにキャスリンのもとに行き、脈を見ようと長袖をまくって固まった。


 「これは?いったいどうしたことなんだ?」


 袖をまくられて現れたキャスリンの白い腕には、赤黒い斑点がいくつも散らばっていた。

 よく見れば、顔以外、首にも見える。もしかしたら全身にあるのかもしれない。


 これには家族全員が驚くこととなった。 



 

 

 


 

 


 

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