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魔道具を見せてもらいました

 キャスリンの部屋にいた者たちであるキャスリン家族とバーバラは、執事のマークが住んでいる公爵家屋敷の横にある離れに皆で行くことにした。

 玄関のすぐ横にあるマークが仕事部屋として使っている部屋に入った。そこには机といす、そして壁際に本棚が置いてあるだけのシンプルな部屋だった。マークは皆を壁際に立たせ自分は部屋の真ん中に立った。そして何やら呪文のようなものをつぶやいた。するとアシュイラの花が光った時のような真っ白い光が部屋の真ん中で起こり、光が消えるとそこには一つの小さな箱があった。

 マークが箱を開けると、中にはいくつか入っていた。


 「みなさんこちらへ」


 皆が箱を覗きこむ。よく見るとそこにはまた小さな箱が一つと何やら鏡のようなもの、そして一冊の本が入っている。マークが小さな箱を取り出し蓋を開けると、そこにはきれいな宝石で飾られた指輪とネックレス、それらに対になっているイヤリング、そして一つだけ黄色い石のついたシンプルな腕輪が入っていた。


 「お嬢様、この腕輪に触ってみてください」


 マークに箱ごと差し出されたキャスリンは、腕輪を手に取ろうと触った。するとあっという間に腕輪がキャスリンの白い腕に巻き付くかのようにはまった。箱の中では大きく感じたのだが、今キャスリンの腕にはまっているものは箱の中にあった時より小さく感じる。

 キャスリンは何度も腕を動かして腕輪を見たが、腕輪の金具が見当たらない。どうやって腕にはまったのかもわからない。


 「マーク、これどうやってとるの?金具が見当たらないけれど」


 「この腕輪は持ち主を選ぶのです。王家の秘宝と言われるもので、その継承者だけが使えるといわれております」

 

 「マーク、私はアシュイラ皇国の者ではないわ。なのにどうして?」


 「それはわかりません。ただお嬢様がまとっている魔力は王族のものです。だから反応したのだと思うのですが。もしかしたらスティーブ王子がお嬢様のために何か魔法をかけたのかもしれません」


 キャスリンはマークの話を聞いて、再び腕輪を眺めた。きれいな細工が施された腕輪は見る限りではただの腕輪に見える。ただキャスリンが心の中で外そうと思ったとき、いつの間にかその腕輪は先ほどまで入っていた箱の中に納まっていた。


 「すごいな」


 その様子をじっと見ていた兄のクロードが思わずそうつぶやいた。


 「その腕輪は何か仕掛けとかあるのかな?」


 クロードが好奇心を隠し切れずマークに聞いた。


 「この腕輪は持ち主を守るとされています。あと魔力を使いやすくするとも。お嬢様ぜひはめておいてくださいませんか」


 そういわれてキャスリンはまた腕輪に触った。腕輪はいつの間にか再びキャスリンの腕にはまっていた。


 「ほかの装身具はどんな使い道があるのだろうか」


 今度は当主であるスコットが聞いた。

 

 「この装身具は王妃がつけておられました。これもまたつけている者を守るとされております。あとこの鏡具は、魔道具を作るときに用いられるものです。それとこちらにある本は、継承者しか読むことのできないものとなっています」


 そういってマークは皆の前に本を見せた。スコットが受け取って中を開いてみたが、中は真っ白で何も書かれていなかった。スコットがキャスリンにその本を手渡した。

 キャスリンがその本を持った途端キャスリンが消えた。


 「「「キャスリン!」」」


 マークとバーバラを除いた三人が叫んだ。

 三人はびっくりしてあたりをきょろきょろしている。

 

 ほんの一瞬のあとキャスリンが現れた。本を持ったまま。


 「どこにいたんだね」


 思わずといった風で父のスコットがキャスリンに聞いた。


 「えっどこかしら。真っ白な空間にいたの」


 キャスリンはそう言いながらマークを見た。


 「お嬢様は時の狭間に行かれていたのです。どうでしたか」


 「あっ、頭の中に膨大な情報が詰め込まれたみたい。なんだか眠いわ」


 そう言ったとたんまたキャスリンは大きく体を揺らした。とっさにマークとクロードが支えなかったら床に転がったことだろう。


 「大丈夫?」


 母親のミシェルとバーバラがキャスリンに駆け寄った。キャスリンはクロードに抱きかかえられていた。

 キャスリンが倒れたことでびっくりして気づかなかったが、先ほどまであった装身具やら鏡具など入っていた箱ごと部屋から消えていた。

 

 「マーク、先ほどまであった箱がなくなっている」


 キャスリンが穏やかに眠っている様子を確認したスコットがマークに箱のことを聞いた。

 

 「持ち主がお嬢様になったことで箱はまた消えました。お嬢様が必要だと思うときに箱が取り出せるようになっているのです」


 皆はキャスリンの腕にしっかりとはまっている腕輪を見て、さっきの出来事が夢でないことを確認したのだった。

 

 「でもどうしてキャスリンは倒れたんだ?」


 「王家に伝わるとされる魔法を一度に頭の中に詰め込まれたせいかと」


 「一体どんな魔法が使えるのかね」


 「それは私にもわかりません。ただ昔王がこう言われておりました。魔法は諸刃の剣となると。使い方を誤るととんでもないことが起きると」


 そうマークから聞いたスコットの顔は険しかった。


 


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白いです。先の展開が愉しみ。
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