得体のしれない門
ー自衛隊仮設本部ー
「う〜む…」
仮設本部長の本田は唸っていた。
先程実物を見てきたが、あの門は危険な気がしてならない。地下だからなのか、あの怪しげな光のせいか分からないが、自衛隊員の勘がそう言っている。
現在、この門の中の調査については防衛省の回答待ちだ。部隊はフル装備で門の前で待機させている。
トゥルル、トゥルル、ガチャ
「本部長、防衛省からです。お繋ぎします。」
「はい。」
「幕僚長の大石だ」
ブフォ!!ば、ば幕僚長!?
「どうした?」
「いえ、すみません。最近咳が続いておりまして。」
「そうか。復興支援中だからな。あまり無理をするなよ?」
「ありがとうございます…」
「それでだ、瓦礫の撤去中に見つけた門についてだが、調査の許可が出た。十分に注意しつつ調査を行うように」
「そうですか…了解しました。」
「ん?どうかしたのか?」
「いえ、わたしはどうもあの門の先は人が立ち入っては行けない領域な気がするのです。」
「君の気持ちは分からんでも無い。人類は進化し、震源地で得体のしれない門が見つかり、不安なんだろう?」
「はい…」
「だが、我々はなんだッ!自衛隊員だろ!あらゆる敵から国を守るのが我々の職務だ!違うかっ!」
「はいっ!その通りであります!」
「よしっ!いい返事だ!だが門の中はどうなってるか分からん。十分に注意して調査を行うように!以上!」
「了解しました!」
幕僚長との電話が終わり、本田はふと自分を見てみるといつのまにか立ち上がっていた。全身の血が熱い。本田はフッと笑ったのち顔を両手で思い切り叩いた。そして自室を後にした。
ー地下鉄内 門前バリケードー
自室を後にした本田はバリケードで待機している隊員に向け話し始めた。
「防衛省から調査の許可が出た!これより調査を行う!今回は私も調査に行く!行くぞッ!」
本田は門に向けて歩く。その姿は戦国時代の武将のように堂々としていた。
その時、待機していた隊員同士が小さな声で話し合っていた
「どうする?作戦計画あるけど、本部長入る気満々で声かけづらいな…お前言えよ」
「いやだよ…お前が言えよ」
「あー!もう入りそうだぞ…誰か止めてくれ」
その時救世主が現れた。
のしのし歩いていく本部長の前に女性隊員が立ち塞がった
「本部長待ってください!」
「なんだっ!」
「あの…部隊が入る前に安全の為ドローンで中を調査したいのですが…」
その瞬間、本田はハッと我に帰り周りを見渡すと申し訳なさそうな顔でこちらを見る隊員達が目に入り、戦国武将のような感じで入って行こうとしていた自分を思い返し、先程とは違う血の熱さを感じた。そして顔を赤めながら
「そっそうだな、ドローンを中に入れてくれ…」
そう言って足早に仮設のモニタースペースに向かうのであった。