改革ー②
〜さらに15年が経過した〜
引き下げを行った当初は多少のデモが行われたが、すぐに収まった。食費なので大した額では無かったからだ。だが、田中総理の政策そこで止まらず、地下空間に住居を作り住居費用を引き下げそこに生活保護者を住まわせようとした。その住居は最低限の生活が保証された空間をそのまま具現化したような住居群だった。
ーとある生活保護者ー
「今日はパチンコでも行って、酒でも飲むかなぁ〜。つまみはホルモンで〜っと!」
今日は受給日だ。
パチンコの軍資金を下ろすためにATMに向かう。
暗証番号を入力し、金を下ろす。下ろした後の残高を見ると、いつもよりかなり少なくなっている。
「ハァ〜!?なんやこれ!」
コンビニの店内で怒鳴る。男は全速力で役場に向かう。ちなみにこの男だが、足が悪いし働き口が無く働きたくとも働けないと申告している。
役場に着き、窓口に行く。
いつもより職員が多いが、今はそんな事はどうでもいい。金や金。
「いつもより口座に振り込まれとる金が少ないんやが、どないなっとるん??」
男はイライラしながら職員に問いかける。
職員は顔を見た瞬間、何のことか察して答える。
「お手紙お送りしたと思いますが、見られてません??」
「知らん!!」
男は怒鳴る。
職員はコピーを取り出して男に渡し説明する。
「法改正で住宅扶助が現金から現物に変わったんですよ。引越しにかかる費用は国が持ちますので、ご安心ください。」
そう言って職員は住居の間取りと写真を見せる。
男は資料を見て絶句した。
今住んでいるマンションよりはるかに狭く、しかも風呂とトイレが共同と書いてある。
「刑務所と変わらんやないか!舐めとんのかワリャァ!ワシは絶対に住まんぞこんなとこ!」
職員は冷静に答える。
「しかしもう決まったことですので、私どもとしてもどうすることもできません。」
男は発狂して幼児のようにその場で地団駄する。
職員はその様子を見て、笑いを堪える。
この職員は前々から働かないでそれなりのマンションに住んでいるこの男が気に入らなかったのだ。
男と目が合った。
職員はしまったと思い、顔を戻すが遅かった。
「キイイイィィーー!!」
男が奇声を上げ、職員に掴みかかったその瞬間、いつのまにか後ろにいた職員によって地面に叩きつけられる。
男は咳き込みながら怒鳴る
「離さんかい!離せェェーーー!」
男は暴れようとするが、上で抑えている職員の力は半端では無く万力で固定されたかのように身体は動かない。かろうじて動く首を回して己を押さえつけている職員を睨む。
その職員の腕はデスクワークをやっている人間の腕とは明らかに違い、大木のように太く、表面の血管は強く脈を打っている。上体はワイシャツの上からでも分かるほど引き締まっている。
職員は静かに言う。
「黙れ。お前を連行する。」
声の主は職員に変装した警察官だった。
男は手錠をかけられ、外に連れて行かれる。
警察は予めこういった事態に備えて、警察官を配置していたのだ。職員に変装していたのは、これを機に不穏分子を一掃するためである。
厳戒態勢はまだ続く…