改革ー①
ー15年後ー
地下空間の開発が始まって15年が経った。
日本の食糧自給率は100%を遥かに超え、食糧は掃き捨てるほど大量にあまり、保存食として備蓄されたり、輸出するようになった。原因としては、当初3倍〜5倍程の速さで育っていた食物が地下空間の人口が増えると比例してその速度をさらに加速させたのだ。家畜に関しても、地下で育てた家畜は大きく、繁殖力が地上のより格段に上だった。日本で飢えている者は居なくなり、病にかかる者もほとんど居なくなった。
ー総理官邸ー
「15年でここまでとは…。」
田中総理は秘書官が作成したグラフと数字を見て唸った。様々な数字がもう一生見ることが出来ないほどのV字回復していた。
「あとの問題はこれか…」
目の先の数字は150万人と書いており、その数字は現在生活保護を受けている人数だった。
「15年で100万人減らせたが、何故まだ居なくならないんだ??今はどこも手を借りたい状況だぞ!?」
秘書官はため息をつきながら答える。
「どうもこの人達は一度は地下空間で働くみたいなんですが、すぐに問題を起こして生活保護に戻るようです。」
「地下空間の職場環境は悪いのか??」
「いえ、むしろ地上より良いくらいです。自殺する人は居ませんし、初めの求人を出してからすぐに来た人達は誰一人辞めていません。」
「では、働きたくないからわざと問題を起こしていると?」
「おそらくは…」
「何か考えはあるか??」
「今の日本の食糧自給率ならば、食費から削り、生活保護者用の食料品店を作り、配給制にしてみては??地上の各都道府県には消費できない食料品が備蓄されているので」
「良い考えだな!!食糧に関しては消費出来ず廃棄しているしな。生活保護者の食費と廃棄処分費がまるまる食糧の流通に回せるし、新たに雇用が生まれる!早速資料の作成を頼んでも良いか?」
「分かりました!」
そう言って秘書は執務室を後にした。
〜数日後〜
国会議事堂で生活保護の引き下げの法案が可決された。一部必死に反対している政党があったが、他の議員に白い目で見られたり、嘲笑されていた。
当然である。この全国放送で、あの資料を見せられてまだ反対するということは=政治生命の終わりだ。日本での世間での生活保護に対する風当たりはそれほど強い。おそらくネットでも相当叩かれている事だろう。
この日2つの法案が可決された。
1.生活保護費用の引き下げ
2.刑務所を地下空間に建設し、囚人は地下に移送。後に開発の一部を刑務作業で行わせる。