変わりゆく日本ー④
そして佐藤は現在に至る。
ー地下空間アパート前ー
前にいるものが続々と鍵を貰い、自分の番が回ってきた。自衛官が自分の名前を呼ぶ。
「佐藤さんですね。3階の301号室になります。」
そう言って佐藤に鍵を渡す。
佐藤は「ありがとうございます。」と言い、軽く会釈をしアパートに向かう。
階段を上がりながら
「佐藤だから三階なら310号室かと思ってたのにな」とくだらない冗談を言いながら階段を上がる。
そして自分の部屋の前に着いた。
鍵を開け中に入る。
家の中は非常に簡素だった。
廊下は人二人がギリギリ通れるくらいの広さで、右側にトイレと浴室、左側にはコンロと炊事場。突き当たりのドアを開けるとリビングがあり、リビングの上に小さなロフトがある。
リビングの中央を見てみると梱包された段ボールが置いてある。これが支給された日用品の事だろう。
ちなみに家電だが、生活していく中で必要な物は予め設置されている。至れり尽せりだ。
あとは、ベランダだ。
佐藤はカーテンを開け、窓を開ける。
ベランダの外には青々とした木々が等間隔で並び、枝の上では小鳥たちの歌が聞こえる。
佐藤はベランダの手すりに寄りかかり、目を閉じた。佐藤は今は亡き祖父母の事を思い出していた。
「ばあちゃん家もこんなだったな〜…」
佐藤はしばらく思い出に浸ったあと、部屋に戻る。
部屋の真ん中に座り込んだ佐藤はボーっと外を眺める。すると徐々に今までの事が胸の奥から、湧き上がり、やがてそれは涙に変わっていった。佐藤は勢いよくその場で正座し、頭を下げる。
そしてベランダの外の地下空間に対して、
「ありがとうございます。ありがとうございます…」と何度も何度も感謝の言葉を言い続けた。
気がつくと夕方になっていた。
佐藤はゆっくりと立ち上がり、整理に取り掛かった。
そして、夜。
梱包されたままの段ボールがいくつかある部屋に佐藤は布団を敷き、灯りを消す。
佐藤は目を閉じる。完全な暗闇の中で寝るのはいつぶりだろうか。辺りは耳鳴りがするほど、静寂に包まれている。
佐藤はここから再スタートするという強い気持ちを持ちつつ、眠りについた。