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僕が抱いた感情。

作者: 暁 愛織

「ナツトは鉄のような人ね。」

何もない静かな病室で囁いたのはあまり、

僕に触れた事のない''妻''だった。


これは僕が''妻''に出会った最初で最後の恋のお話

僕が''妻''に抱く事のできる感情である。

「ナツトは鉄のような人ね。」

そう静かな病室で囁いたのはあまり僕に触れた事のない''妻''だった。

もともと、ベタベタと隣に居たりする事を好まないと云ったらそうなのかもしれない。

だから、僕は''妻''にこう言った。

「サユ、甘えてもいいんだよ?」

そうすると、''妻''は不自然な程の笑顔で

「貴方の心にいつも触れているから、それだけで私は充分よ。」

と言うのであった。


これは僕が''妻''に出会った最初で最後の恋のお話。



僕には1年付き合っていた''彼女''がいた。

''彼女''は2歳年下で趣味があうことから知り合った、可愛らしい方だった。

僕にとって''彼女''は、最初の恋人であったから、付き合った当初は不安な事も多く、友達などによく相談した事を覚えている。

けれども僕はある事に気づいてしまった。

1年も付き合って、、、

デートも喧嘩も数え切れないほどした。

電話もメールも数え切れないほどした。

しかし、僕が''彼女''を抱いた事は1度たりともなかった。僕も抱きたくないわけでは勿論ない。だけれども、''彼女''を大事にすればするほど、抱けなくなっていった。

この不安と云うのはどうしても友達に相談できなかった。


だから、僕は逆に、告白する事に決めた。


高級レストランを予約して完璧な計画をたて、勇気を振り絞って''彼女''に

「サユさん、僕と結婚して下さい。」

と。

''彼女''は黙った。

僕も黙った。

すると、''彼女''の頬に美が流れた。

涙を美と表現するのはいけないのかもしれない。けれども、僕は、僕は、

それほどの美をみたことがなかった。

これほど美しいと思った事がなかった。

僕がハンカチを出すと彼女はすぐさま口をひらいた。

「ごめんなさい。」

と言ってまた、更に口をひらいた。

正直その先は聞きたくないと思った。今にでも耳を塞ぎたいと、。

「私、まだナツトさんに言っていなかった事があるの。」

何を言われているか。

僕は理解不能なまま相槌をうった。

「HIV感染者。AIDSなの。」

僕は分からなかった。

それがどれ程の病気なのか、保健の授業程度の医療知識しかない僕は、HIV を知らなかった。

そうしてうまれた、無神経な僕はこう言ってしまった。

「HIV の人は結婚できないの?」


''彼女''は涙を堪えながらこう言った。

「できないわけではないわ。でも、子供はつくれないし、ナツトさんの可能性ある人生を壊してしまうかもしれない。私はナツトさんの事が大好きだから、それが1番怖いの。それでも、私と結婚できる?」

''彼女''のその言葉に考えさせられたのは間違いはないけれど、それでも良いと、僕はそれでもそれでも''彼女''と結婚できるならいいと思ったから、ハッキリと伝えた。

「僕はサユさん、貴方と結婚したいです。結婚して下さい。」

すると''彼女''も

「はい。」

と、涙をながしては、こたえた。


僕はあの時''彼女''に告白をしたとき勇気を振り絞ったと云ったけれども今ならどれだけ''妻''が勇気を振り絞って僕に、病気の告白をしたかがわかる。

あれから、たくさん勉強をした。

''妻''の為に。

愛する''妻''の為に。


医学の進歩のおかげで薬を投与すれば、死に至らない病気にはなってきたが、

もともと体の弱い''妻''は薬の副作用が出ていて病院へ行く事が多く、他の病気の検査入院も度々ある。

すると

''妻''は僕に、

「ごめんね、こんな''妻''で」

と言うけれど、

僕は''妻''がどれだけ頑張っているか、この目で見ているから、

「いいよ?」

と言うしか、他に選択肢などない。


ある日突然、''妻''が自分の過去の話を始めた。

それは病気に関しての偏見であった。

僕にはかかえきれない思いが''妻''の心にはあった。

泣いても泣ききれない。

さけんでもさけびきれない。

その思いが、深く深く心の奥にあると。

話の最後に、

「貴方も私も好きなあの歌を聴いても耳に届かなくて、イヤホンで大音量にしても耳に届かないくて、頭が可笑しくなってしまった、と思うくらいの気持ちがずっとあったわ。」

と僕に向かってこう、優しい声を放った。

到底理解できっこない。そんな気持ちだが、甘える事を知らない。

だから、なんでも聞いてみる事にした。

例えば、''妻''が良いと思う音楽は全て聴き。

''妻''が行きたいと思う所があればどこだって旅行へ行き。

服だってこだわりを持ち、

食事だって健康的に、

家だって清潔に、

そう、これがもしかしたら当たり前なのかもしれない。

でも僕は知らないから。

何かしたいわけではない僕には''妻''は生きる希望であるから。


そんな 大好きな''妻'' の頬に唇を落とし、今日も静かに二人で暮らしている。

この作品を読んで下さり誠に感謝致します。

作品を投稿するのははじめてで、全くの未熟ものですが、これからもお願い申し上げます。



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