どんより曇り
飲んでいたカフェラテもいつの間にか冷めていた。マスターとの過去に何があったか、全て話した。一緒に住んでいたこと、仕事から帰ると突然彼の荷物が全てなっていてポストに鍵だけ入っていたこと、この間会って思ったことも今の気持ちも全て。
「そうか。マスターとはそういう関係だったんだね。そこからは、連絡も取ってなかったの?辛いことなのに話してくれてありがとう。」
瀬戸さんの声は、苦しかった私の心を癒してくれた。窓から差し込む光が顔にあたっていて、それのせいなのか何故か寂しそうに見えた。この話をしている時、私は涙を零してまた困らせてしまうかもしれないと心配していたが、不思議と涙は出なかった。むしろ、話すことで自分の心の整理ができ吹っ切ることが出来た気がする。「こちらこそ、聞いてくれてありがとう。なんだか、すっきりしちゃった。もう、忘れて次に進むことにするよ。」
そのあとは、カフェを出て夕食を食べて家の近くまで送って貰った。「今日は本当に楽しかった。ありがとう。じゃあ、また月曜日。おやすみなさい。」
「こっちこそ、楽しかったよ。良かったらまた、出かけないかい?」
とても嬉しかった。今日初めて瀬戸さんと出かけて、なんだか安心感があり暖かい感じがした。「もちろん!次は重い話なしでね。」
私がいうと瀬戸さんはにっこり笑って頷いてくれた。手を振り彼の背中が見えなくなるのを確認してから、家に入った。
いつもは家に入るとお風呂をシャワーで済ませ、すぐに布団に向かい動画を見るが今日はお湯をためて入浴剤まで入れて長湯した。上がってからも、足のマッサージやらをひて久しぶりに女性らしいことをした。寝る前に、瀬戸さんに今日のお礼を連絡して。
翌朝、9時に起きた。休日にここまで寝ていたのは何年ぶりだろうか。朝の習慣は、昨日吐き出したおかげで抜けたのだろうか。さぁ、今日から私は新しい私だ。機嫌よく起き上がり一歩踏み出すと、テーブルで足の小指を打った。上機嫌だったのに、最悪だ。
カーテンを開けると外は、どんより曇り空だ。今日は一日曇りだろうな。