七話 作戦会議
「繋がったかな……ジャック成功だ」
モニターに映っていたのは、紛れもなく血煙遼太その人だ。
このPCをジャックしてきたということは、こいつが穂乃香を誘拐したことは間違いない。
「早速で悪いけど、あんたが血煙遼太?」
「そうだ。俺がそこの佐倉進太郎の幼馴染を攫った」
「……何が目的?」
「教えるわけがないだろう」
「今すぐ……穂乃香を返しやがれッ!」
机に手を叩き付け、モニター越しに血煙に叫ぶ。
「悪いが無理な相談だな。俺にも目的があるんでな」
「目的だと? 穂乃香使って何する気だ!」
「何回も言うが、教えるわけがないだろう。返して欲しければ力づくで来い」
ブッと、PCの電源が落ちる。
「……ざけんな!」
「待って……再起動するから……」
電源ボタンを再度奥寺先輩が押すと、モニターがメールの受信を知らせる。
「何……これ……」
カーソルを動かし、受信ボックスをクリック。
ファイル名には、決戦場所と記されている。
「これ……アジト……?」
「そうみたいだね。何をしたいのか分からないけど、そこに行くしかなさそうだよね」
…何をしてでも、穂乃香だけは……救ってみせる。
「待って。そこに突入するにも問題はあるでしょ?監視カメラとか、奴らの仲間の異能者とかその他諸々」
この人はさすが副委員長とも言うべきか、いつだって慎重に行動している。それでいて、しっかり穂乃香を救うことを考えてくれて……何を考えているんだろ俺。人は利用するかされるかなのに。
「そこは見たところ、三年程前に廃校になった場所みたいね。だとしたらまだ新しい建物のはずだから、倒壊は心配無さそうね。さて、奪還作戦に参加するメンバーだけど、佐倉君は確定、谷口も連れてくといいわ。若林は〜」
藤堂先輩は若林先輩の方を見つめる。
彼女は「行かせてくれ!」というキラキラした目をしていたが。
「無理ね。却下」
「ちょっとなんでっすか!?」
…なんとなく分かる。この人絶対すぐに調子乗る人だからだろう。
「そういえば、あと一人一年のメンバーを紹介するわね」
俺の他にもう一人一年の奴が…どんな奴なんだ?
「入って」
「あら。奇遇ね佐倉君」
「かっ…風切!?」
***
「二人そういえば同じクラスだったわね〜」
「…いいのかよ。お前、血煙とは仲良かったんだろ?」
「構わないわ。仕事に私情は挟まない主義なの。私」
どこぞの凄腕スパイか暗殺者かお前は…
風切は髪をオールバックから横に結びツインテールの状態にする。
「うん。やっぱり風切はそっちの方が似合ってると思うよ」
「ふぇっ!? ありがとうございましゅ! 全先輩…!」
こいつこんなに分かりやすかったんだな。もっとクールで少し近寄り難いイメージがあったのだが意外な一面が見れたな。
「……また……メール」
カタカタと奥寺先輩がキーボードを打ち込んでいく。
『忘れてたが、俺達は屋上で待ってる。どうだ?決戦場所には持ってこいだろ?』
「…嘗めやがってッ……」
「奥寺ちゃん! 落ち着いてっす!」
突然奥寺先輩が部屋の棚から大量の割り箸を取り出し、一膳ずつへし折り始める。
「なんですか…あれ」
「あぁ。奥寺なりのストレス解消法だよ」
毎度あれやってるとしたら怖すぎだがな……
「だとすると、アンタ達は最長距離を駆け上がることになるわね。そこまでに敵がいないとも言えない……風切ちゃん。『空間転移』で窓越しに飛ばす事は出来る?」
「一応。そういうのは私ではなく、妹の方が得意なのですが……」
「分かった。ありがとね」
「僕の能力見せた方がいいかな?」
「うん。そうねお願い」
こうして、全員の異能を活用した作戦会議は続く。