三話 波乱の初日
佐倉進太郎
主人公
能力名「???」
葉室穂乃香
幼馴染
能力名「???」
入学式を終えると、新クラスでのオリエンテーションの為に教室へと向かう。
「…たりぃな」
「初日からそんな事言ってどうするの? もっとシャキッとしなさいシャキッと!」
「お前は俺の母親かっつーの」
「似たようなもの?」
「殴るぞ…」
廊下を歩きながらくだらない会話をしていると、一年一組を示すプレートが見えてきた。
「ここか…」
「ワクワクするね!」
「はいはい」
『ガラガラ』と勢いよく穂乃香が引き戸を開ける。
「おっはよ〜ござい〜ま〜す」
唐突に教室全体に響いたその声は、即座に全員の目を奪う。
しかしそれは一瞬で、振り向いたあとは殆どが自分の席に戻っていく。
「失敗したなこりゃ…」
「う〜ん…」
小声で会話をしていると、後ろから何者かが俺の背中を蹴り抜いてくる。
「うおッ!?」
「邪魔だよ。お前……」
銀色のショルダーバッグを肩にかけた赤髪の少年はこちらをギロりと睨みつけると、すぐに自分の席についた。
「ちょっと…大丈夫?」
「痛てぇ……あぁ。ありがとう」
倒れた俺に、黒髪の少女が手を貸してくれる。
思わず、スカートの中身が見えそうになるが、間一髪で目を逸らす。
「もう。アイツったらごめんね? あとでキツく言っておくから」
「いや。こっちがあんな所で話してたのがわりぃよ」
「さてと。自己紹介くらいはしておかないとね! 私の名前は風切空色能力は『空間転移』あなたは?」
「…」
俺は絶句する。
生まれつき……いや。過去の出来事から一人を除いて人は利用し、捨てる生き物だと自然と思うようになっていたからなのか、能力を公言するいうものは自身の弱点や、戦闘スタイルなどを晒しているようなものだ。
明らかに迂闊すぎる。
どこか羨ましくもある。こんなに簡単に人を信頼できたならどんなに楽なのだろうか。
「佐倉進太郎。よろしく。それでこいつが…」
「槙野穂乃香! よろしく!」
「うん。よろしく」
風切は肩にかかった長い銀髪をたくしあげてポニーテールを作ると、席に戻っていく。
「そろそろ先生が来るわ。今度一緒にご飯でも食べましょう」
この風切空色に対して、不信感を抱きながらも、俺は席についた。