二話 学園生活の始まり
「…」
無人駅だ。
日本の首都である東京のど真ん中に俺は立っている。
そこは石壁で囲まれていて、閉鎖的。
ほかの都市から独立したその区画でも、一応街としての役割は果たしている。
最低限の生活ができるようなスーパーだの娯楽施設だのは確保されているし、俺達には不自由ない生活が用意されている。
「特区って…あんま普通の街と変わらないのな」
「だろうね〜。さすがにあからさまに違ったらいかんでしょ? 特区入口って駅があるぐらいなんだから」
目を爛々と輝かせながら、少女は今にも街を詳しく見ていきたいという表情で俺を見てくる。
「これから入学式だろ。あとでゆっくり見ればいい」
そう言って俺たち能力者の学生が集う高校へと歩み始める。
「ちょ…! 待ってよ〜」
***
十分ほど歩くと、直線状の桜並木の先に俺達が通う紫炎学園が見えてきた。
「広いね…」
「中高一貫校だかんな」
「ワクワクしてきた!」
「何がだ?」
「ここでの学生生活。寮もあるんでしょ? 新しい環境で、新しく出来る友人と過ごすなんてワクワクするでしょ?」
少女はそういうが、俺はコミュ力がゼロに等しい陰気な人間なので全くワクワクしない。
むしろ鬱だ。
***
門を潜り、校内へ足を踏み入れる。
するとすぐに教師達にクラス分けの紙を配られた。
『一年 一組』
「一組か……」
ここの学園について、来る前にネットで調べておいたのでクラス分けについては知っている。
一組から六組までが存在し、順に能力者としての才能とか実力とかが分けられる。
つまり一組の俺はエリートって訳だ。
「皆さん!ご入学おめでとうございます。早速ですが、入学式を執り行います。生徒の皆さんは、体育館へお集まり下さい」
…行くか。