序章──正義の定義──
‐“正義”とは何か?‐
それは実に曖昧で、不確かなもの。
視点を変えれば“悪”にもなりうる、それはそれは頼りなきもの。
ある者にとって絶対的な“正義”に基づいた行いであれど、それが他者にとっての正義であるとは限らないのだ。
欲は罪を呼び、罪は悔恨を染め上げ、悔恨は狂気となりてまた、誰かを傷つけるような世界。
歯止めの効かぬ罪の連鎖。負の連鎖。螺旋状に堕ちてゆく人々の中にあって、果たして“正義”とは何なのだろう?
‐“正義”とは何か?‐
今一度問おう。
‐“正義”とは何か?‐
……この広い世界の中に、小さな小さな一つの命が生まれ落ちた時。世界は、改めて産声をあげる。
それは正義だった。
それは希望だった。
それは愚かにも……否、愚かであることを知りながらも、自らの正義を貫く光。
‐“正義”とは何か?‐
いつか、彼ノ者はこう答えた。
《正義とは、己が信念だ》
誰もが自らの正義を掲げる中で、その価値を決めるものこそが信念である、と。
さぁ、迷える者は道を開けよ。
揺れ惑う者に立ち塞がる資格無し。
彼こそが正義
彼こそが“王”
──これから綴られる物語は、いつしか“魔術師の王”と呼ばれた男の、自らの正義を貫いた人生の記録である。