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その人の名は狂気――influence panic――  作者: 無道
第5章 誰が為の正義
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決離

中途半端な所から始まったうえに短いです。

「まだやる気かよ? 今尻尾巻いて逃げるなら、見逃してもいいんだぞ?」

「ふざけんな! ここまでやられて退けるかよ! お前はここで――」

大和(やまと)! 時間だ!」


 鉈男が歯をむき出しにし、まさに攻撃を開始しようとした瞬間、向こうの角から鋸を持った男が息を切らしてやってきた。


「邪魔すんな酒井! コイツは俺が――」

「――奴が来た! もうすぐそこまで来てる! 残ってもいいけど、お前だけ死んじまうぜ?」

「――ッ!」


 皮肉気にそう言った男の言葉に、鉈男は目に見えて分かるほど動揺する。忌々しそうにこちらを見ると、舌打ちして鉈を収めた。


「――お前! 今度生きて会ったら、この借りは絶対返すぜ!」

「見た目に加えて喋ることまで雑魚だな。いいからさっさと尻尾巻いて失せろや」

「~~ッッッ!! おい行くぞ!」


 再度の智也の挑発に、鉈男は肩を怒らせるが、踵を返しその場を走り去っていく。

 残されたのは俺と智也と功、そして数人の亡骸。俺は立ち上がり、功の前に一歩出ると、油断なく智也を見据える。


「八代、お前なんで生きて……いや、その前に、この騒ぎもお前の仕業なのか?」

「おいおい、久しぶりに会ったっていうのに随分な言い草だな。世の中全部の悪事を俺のせいにするのは

流石に理不尽だろ。俺はあれからずっとここに入院してたんだぜ? ――それよりもだ。俺は少し気になることが出来たからあっちの方を見てくる。お前は功を連れて南門に行け。そこに千尋を隠してるから、そいつも連れて、ここから脱出しろ」

「ッ! 待てよ! 何で俺がそんなことを――」


 当たり前のように言ってきた智也に、俺は言い返すと、奴は面白そうに目を細めた。


「へえ……。ちょっとは変わったみたいだな。俺の説教を少しは聞き入れる気になったのか? ――まあいいぜ。お前にその気がないって言うなら別に強制はしない。けど、お前が見捨てたら、功は確実にここで死ぬぞ。それを踏まえたうえでどう答えを出すのか、まあ少ない時間でよく考えるんだな」

「ッ!」

「じゃあ、またな。――お前が生きてて俺も嬉しいぜ」


 皮肉気に嗤うと、智也は足早にその場を去っていった。奴の向かう先は、俺たちが先ほど逃げてきた銃撃戦の繰り広げられる病院棟の入り口方面。あんな危険な所に奴は何をしに行くというのか。


「お兄ちゃん……まるで別人だった……」


 隣で功の呆然とした声が聞こえる。振り向けば、功は信じられないという表情で遠ざかっていく智也の背中を見つめていた。


「僕の事……死んでも構わないんだ……。皆の言ってることはやっぱり……本当だったんだね……」

「功……」


 一度は決意したが、やはり実際に目の当たりにすると辛いのだろう。尊敬する人に裏切られ俯く少年を見て、放っておけない気持ちになるのは人として仕方のないことだろう。俺は自分にそう言い訳して、このときばかりはこの少年を護ると即決する。

 智也の言われた通りに行動するのは腹立だしいが、こればっかりはしょうがない。


「……行こう。あいつの話じゃあ姉ちゃんの方は南門の方にいるらしい。ここが感染者の巣窟になる前に合流して早く脱出しよう」

「……うん、そうだね。お姉ちゃんだけでも、守らないと……」


 顔を上げた功は、先ほどまでの悲壮感が消え、高台にいた時の力強い意志が瞳に戻っていた。

 俺はそれを見て何か言おうかと思ったが、あえて口を閉ざし、功の手を引くと走り出した。功も何も言わず、ぎゅっと小さな手で俺の手を握り返してきた。


「お姉ちゃんは……お姉ちゃんだけは……」


 ただうわ言のようにそう繰り返す功の握った手は、驚くほどに冷たかった。


次回で5章終わりです。なので、今回つまらなかった分、次回は流石に話が大きく進みます。多分、皆さん好きな展開じゃないでしょうか?笑

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