ハンカチと四葉のクローバー
部屋を飛び出した彩七。外に出ても、自分の感情が抑えられない。
「ヒックッ、ヒッ、ウッウッ――――――りょウゥなんか…………」
両親のいるコテージに帰りたくても、こんなグチャグチャな顔や気持ちでは帰れない。気持ちが落ち着くまで、仕方なく近くを歩く事にした。
歩きながら、何がどうしてこんな事になったのか、考え始める。でも全くわからなかった。さっきの彼の力が入った腕を思い出すとまた震えると、段々心細くなっていく。そして、彩七は昨日出会った颯太の事を想うのだった。
颯太さんの優しく微笑む顔が浮かんで、どうしようもなく恋しくなる。会いたい、今すぐ会いたい、そう思うと居ても立ってもいられなくなって、身体が勝手に動き出した。
颯太がいるかもしれない場所へ小走りで彩七は向かっていた。会いたい一心で、それ以外は、何も考えられなかった。
今居る場所はコテージが建ち並ぶ場所からそんなに離れてはいない。そのおかげで思っている以上に彼のコテージに辿り着いた。
颯太のコテージの位置は、彩七が泊まっているコテージの真裏にあるので、迷う事もなくコテージ前に行けた。
木で出来たコテージのドアを恐る恐る叩く。すぐに扉は開いたけど、出て来たのは見た事もない男性だった。予想もしていない事が起きて声が出せないで、呆然としている彩七。
「彼女、何か用かな?」
ハッと出てきた男性の声で状況を理解した彩七。そして、声を絞り出した。
「あの……えっと」
彩七は考えながらも、一生懸命に身振り手振りで颯太の事を説明する。
「ちょっと、中に入って待ってて」
彩七がコテージの中入ると、男性はコテージの奥に入って言った。
すると奥からは数人の男女の声が聞こえて胸が高鳴る。その中には颯太さんがいるはずだから、やっと会える。
颯太さんはどんな顔をするかしら?
彩七が急に来たの……迷惑だったかな。どうしよう……顏、大丈夫かな……泣いてたってわかるかもしれない。ヤダッ本当にどうしよう――――――話したい事がこんなにうまくまとまらないのは……なぜ?こんなにも颯太さんに会いたかったのに、なんだかここからすごく逃げ出したくなるのは…………どうしてなの?颯太さんが現れたら胸が張り裂けてしまいそう。
早まる胸の鼓動は、彩七が想像する以上に思い通りには動いてくれない。そして、自分の気持ちとは裏腹に、現れたのは先程の男性だった。
「ごめんね。今はもう颯太はココにはいないんだ。写真の準備で今さっき地元に帰ったみたいで」
困った彼の顔を彩七がとても残念そうに見つめる。彼はそれでなんとなく彼女の気持ちを悟った。




