星降る空での運命の出会い
神様、彩七はとてもいけないコです。
彩七には婚約予定の幼馴染がいるのですが……。
胸がときめくような、そんな激しい恋に彩七は憧れています。
と、密かな想いを抱き、本木彩七はたくさんの星ボシが散りばむ夜空をコテージのベランダから見上げている。
彼女がいるコテージは美しい針葉樹が青々と広がる山中にある中のひとつ。そして、周辺には同じ様なコテージがたくさんあるのだった。
今日が彩七にとって初めての家族旅行となった。
実は五年ほど前まで彼女は生まれつき心臓が悪く、父親が勤める病院に入院していた。
ところが、ある日、ドナーが突然現れると心臓を移植してもらう事になった。そのおかげで身体はすっかり健康を取り戻したのである――――――とは言っても、完璧な健康体とは違い、たくさんの薬を飲まなけらばならないが。
今、彩七にとって瞳に映るすべての世界が色鮮やかで美しいのだ。
「今日も星空がとってもキレイね」
しばらく、キラキラ輝く星空を眺めていると夜空には流れ星が……
彩七は瞳を静かに閉じると呟くように流れ星へと願う。
「胸が焦がれるような恋がしたい――――――――こんな星空の下で彩七は素敵な人と巡り会いたいです――――」
瞳を開けた彩七の目の前には無数の流れ星が雨粒のように夜空いっぱいに降る。
「なんて…………キレイ……なのかしら」「――――なんて、綺麗なんだ」
そう言った彩七の言葉と同時に少し遠くからか男性の声も微かに聞こえた。
驚く彩七が夜空から視線を移す。
どこからか聞こえた声を確認する為、周りにある近隣のコテージを見る。距離にしたら、約2メートルほど離れている向かいのコテージに、ひとりたたずむ男性がいた。
彼は幼さが少し残る同じ年頃の男性のよう。彼も美しい夜空を同じように見上げているようだった。
彩七はその男性と目と目とが合うのだった。
一気に胸の鼓動が高鳴って身体全体が熱くなる。押しつぶされるかもしれないくらい胸が締めつけられた。
「なんだか息苦しい、それに熱があるみたい……」
彼から視線をそらす事ができない。はじめてみる姿なのに強く惹かれている自分がいるのを感じた。
そして、生まれて初めて感じた熱く高鳴る胸の鼓動。
跳ねあがる鼓動にとまどう彩七は男性を見つめたまま、声を出す事さえできずにいる。何も言えないでいると、少し寂しげな表情をみせては、男性が微笑む。すると、彼は何も言わないでそのまま部屋へと戻っていくのだった。
「あっ……」
やっと声が出た時にはもう男性はいなくなっていた。
彩七は仕方なく部屋に戻る事にした。
翌朝、ドアをノックする音で目覚めたら、寝ぼけたままで自分の眠たい目を擦った。