童話物語 上 一週間の約束
女の子は男の子と出会います。ですが楽しいことはすぐ去るんです。不可思議な物語の短編ですが、楽しんでくれたら幸いです。
とある大きな町の外れにある下町に住む女の子が一人立ち尽くしていました。
そこは寂れた閑散とした棄てられた公園でした。
人が来る気配はなく、女の子は毎日のように訪れていました。
残された遊具で遊ぶわけでもなく、だからといってなにかするわけでもなく、ただ立ち尽くしていました。
女の子はこう思っていました。
「なんて寂しい場所なんでしょう。せめて私だけでも一緒にいてあげましょう」
と。
そんな優しい心の持ち主の女の子は毎夜毎夜、一人で遊ぶわけでもないのに公園へと訪れていました。
でも、そんな女の子にも、こんな暮れて薄暗い時間帯に来るわけがあったのです。
それは家の事情です。
女の子は離婚してお酒で毎夜酔って暴力を振るう父親から離れてこの寂れた公園に来ていたの
です。
ですが、女の子はそんなことはもうどうでもよく、ただ、本当に誰もいない荒んだ公園のことが気になっていました。
初めて公園に訪れてから一度たりとも足跡を絶たせたことがありません。
そんな日が続き、ある日、父親から再婚話を持ちかけられました。
相手とは仕事先で知り合ったそうです。
女の子は勝手に離婚しておいて、他の人とくっつこうとする父親に怒りを感じました。
女の子は家出をしようと思いました。
家にある自分の荷物をありったけお気に入りのお花柄のリュックに詰め込み、家を飛び出しました。
これで公園と毎日一緒ね。
女の子は一人だと思わず、公園が友達だと思いました。まるで家族のように。
それから数日が経ち、女の子は痩せるようにくたびれていました。
それでも家に帰りたいとは思いませんでした。
なぜなら、そこに公園があるからです。
特になにもせず、ただそこにいるだけの女の子は、公園がそこにあれば、いてくれればそれでよかったのです。
そんな明くる日の夜。女の子は一人の男の子と出会いました。
「ねぇ、遊ぼ?」
男の子はそう言って女の子に手を差し出しました。
女の子は拒否をしました。
「自分には公園がいてくれる。だから他の子となんて……」
それでも男の子は無理矢理女の子の手を取り、すべり台、ブランコ、次々と遊びました。
段々と女の子は楽しくなりました。
女の子は毎日男の子と遊びました。それはもう疲れてを知らないのかのように。
そして男の子が来てから一週間。男の子は告げました。
「僕ね、もうすぐ消えるんだ」
その一言で女の子は怖くなりました。一人になることではなく、男の子に会えなくなることにです。
「でもきっと会えるよ。君が僕のこと覚えてくれてる限り、ね?」
だから今日はめいいっぱい遊ぼ?
男の子はそう言って女の子の手をいつもように引っ張りました。
そして次の日、とうとう男の子は来なくなりました。
女の子は泣きました。もう友達はいないんだ。こんな公園、友達なんかじゃない。
女の子は自分の家に戻りました。
「お父さん怒っているだろうな…」
そんなことを思いながら。
「お前どこ行ってたんだ?心配したんだぞ」
父親の言葉でまた泣きそうになりましたが堪えました。
「お前、半日もいなくなりやがって」
女の子は自分の耳を疑いました。
「半日?」
一週間はあの寂れた公園にいたはずなのに。
そして父親は言いました。
「俺さ……再婚止めたんだ。お前のこと考えたら、再婚より、今の時間を大切にしようと思ったんだ」
父親の言葉は女の子の耳に届きました。女の子は泣きました。
「あとな、この近くに一軒家があったろ?そこの領主がな、土地を売ることにしたらしいから、そこに住もうと思うんだ」
女の子は頷き、父親とその家を見に行きました。
なんとそこは、寂れた公園があった場所ではないですか。
女の子は驚きを隠せません。
「ここ、いいだろ」
その年に女の子と女の子の父親はその寂れた公園があったはずの場所に建つ家に住むことになりました。
その後、父親は母親とよりを戻し、一人の男の子を産みました。
そしてその男の子に大空と名付けました。
あとから聞いた話ですけど、男の子の名前は父親が昔この土地にあった思い出の公園の名前から取ったそうな。
童話なんでしょうか…wちょっと心配です。
ちゃんとまとまったのか……それも心配です。
不器用な執筆で心が痛みますが、楽しんでいただけたのなら幸いです。
ある人からの頼みは果たせたでしょうか?w
上ということは中も下もあるということですよ?w
それはまたの機会ということで。