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② ビッグスネーク、カモン!

【前回のオレオー】

言質を取ってフェンリル解放。しかしラグナロク関係者はまだいるぞ。次に行ったのは――――

「オーディン様、いらっしゃるのであればご連絡いただければよかったものを」

 次なる目的地、ヒュミルの館に到着。ヒュミルってのは巨人族(ヨトゥン)の一人。だから場所もヨトゥンヘイムというヨトゥンの自治区ともいうべき世界にある。スレイプニルの俊足のおかげで大陸間レベルの移動も早いのなんの。とはいえ1,2時間で、というわけにはいかんから途中例によって森の動物たちから食料を…でも貰えるのはやっぱり酒ばっか。スレイプニルがどれほど快適に走ってくれるとはいえ、アルコール漬けな上にユラユラ揺らされ続ければかなり「クる」ものがある。正直キモチワルイ…スレイプニルにも勧めたが

「私、馬ですよ? 草食ですよ?」

 と正論で返された。もっともな話である。

 話が逸れたが、今言った通りヒュミルは巨人。ミーミルから聞いていたときにゃ、そりゃぁでっけー「ヒト」を想像したが、このあたりにオレたち現代人との間に認識の齟齬がある。巨人と言われりゃ、ビルよりでっかい人を想像するだろ? ビルよりでっかい某地球防衛隊の女性隊員とか、ドリンク一つでビルよりでっかくなる某お嬢様とか。でも実際にはオレたち現代人よっか体格いいかな、おっきいかな程度。あのロキだって巨人枠だぜ? いや、でっかい奴だなとは思ったけど、それは「体格差」レベルで収まる話。日本人男子の平均身長を170cmくらいとすれば、それプラス15~20cmくらいというのが「巨人」と呼ばれる連中だ。ヒュミルもそのくらいだよ。

「急な用事でな。それでヒュミル、トールとヨルムンガンドを釣ったというのはこの海で間違いないか?」

「ええ。私の船で出ましたので、この屋敷の沖合になりますが…オーディン様もヨルムンガンドを釣り上げるおつもりで?」

「いやいや、そんなことはしねぇよ。ただヤツと話をしてみたくってな」

「話? …ですか」

 ヒュミルはなんとも不思議そうな顔をしているが…オレがここへやって来た目的、それは『ラグナロクの災厄三兄妹』ともいえる内の2番目、ヨルムンガンドっていうヘビに会いに来た。なんでも今オレたちがいるアースガルズの下の世界「ミドガルズ」を一周ぐるっと囲むほどの大蛇だという。ソイツもラグナロクのときには陸に上がって大暴れ、トールと戦うってんだ、できれば海から出てこずにいて欲しい。その辺の話をつけておこうという魂胆だよ。

 で、海岸線は岩場。たしかに海辺に館を建てれば岩々が自然の港を作ってくれそうなロケーション。実際、京都には舟屋っていう船のドックと生活の場が一体となった建物があって、それと同じように館の一部が海まで入り、その中に船がある。

「あの、船を出しましょうか…?」

 とヒュミルは提案するが、断った。というのもヒュミルはトールに請われてヨルムンガンドを釣りに出たことがある。だがヒュミルはあまりにもデカいヨルムンガンドにビビってトールの釣り糸を切っちまったそうだ。怖いと思っている相手を無理に連れ出すのはかわいそうだからな。それよりなにより…オレは船酔いする(断言)。アルコールもしっかり回ってんだ、「撒き餌」をしちまう自信がある。だから岸から呼びかけようってこった。岸釣り(オカッパリ)ってヤツさ。さて…

「ヨルムンガンドー! いるかー!」

 沖へ向かって精一杯叫ぶ。青春のバカヤロー!的な感じだが、あいにくオレは…じじぃになっちまってるからなぁ。

「ヨルムンガンドーっ!」


ボコッ ボコボコッ


 何やら海面に泡が立つ。


ボコッ ボコボコボコ… ガベガバゴボ(誰か呼んだ)


 泡の中から声が聞こえる…

「オレだ! オーディンだ!」


ゴボガバゴボガボ (僕を不法投棄した、)ゴボゴボガベガバゴボ(あのオーディン)


 …この世界にも不法投棄って概念があるのか。不法投棄はイケねぇよ、なぁオーディン(じじぃ)

「おう! そのオーディンってヤツだ! ちとお前と話がしたいんだが、出てきてくれるか?」


ゴボ。ガボガバゴボ(えー。めんどくさーい)


「まぁそう言わずに。ちょっと顔出してくれるだけでいいからよ」

「あの、オーディン様。オーディン様には何か聞こえるのでしょうか?」

「ん? …まぁな」

 ヒュミルにも分からんのか。

「スレイプニルは分かるかい?」

「いえヒュミル様、私にもさっぱり」

 俺の後ろじゃ分からない組がどういうことやらと顔を見合わせている。


《陸になんか上がったら腰痛くなっちゃうよー》


 ヘビの腰、とは。

「お前、海の中の方が住み心地良かったりすんの?」


《海の中はいいよぉ。体重感じなくてのびのびできるから。口を開けてるだけで魚が入ってくるから食べ物にも困らないしー》


 そりゃぁミドガルズを一周するほどすくすくと育つわけだわ。


《トールもいるの?》


「いや、アイツは来てねぇよ!」


《アイツさー、僕を釣り上げようとしたんだよねー。久しぶりの牛肉だ!ってよろこんで食べたら釣り針が付いてやがってさー。大体、ミドガルズを囲ってる僕を釣り上げたらミドガルズが崩壊するって、脳筋だと分かんないのかなぁ? あったまワルー》


 コイツ…結構毒舌だぞ? …ミーミルが言っていた「ヨルムンガンドは毒を吐く」っての、毒舌(コレ)のことじゃねぇのかな?


《まだ口のとこに釣り針残ってるんだよー。僕、手が無くて取れないからさー》


「おー、そうか! 顔出してくれれば取ってやれるぞ!」


《えー、めんどー》


 えー、って言いたいのはこっちだよ! なんかコイツとは話が噛み合わんな。

「それは残念だな! それならそこで聞いてくれ! これから先、世界の終わり(ラグナロク)ってのがやってくる! 首謀者はロキだ! そのときお前はどうする? 海から出てきてオレたちと戦うのか?」


《もちろんだよー。パパが言うならやるよ! パパ大好きだもん! もちろんママもね! 腰が痛くてもはりきっちゃう!》


 そこはあるのかどうかわからん腰を大事にして欲しいところなんだが。 

「つまりパパがやるなと言えばやらないのか?」


《当然だよー。オーディンあったまワルいなー。あ、でも海に不法投棄してくれたことはちょっと感謝してるよ。楽だし。海最高!》


 …コイツってば、ただの「口の悪い引きこもりニート」なんじゃないか…? 現代だったら日がな一日ネットに張り付いてSNSであちこち荒らしまわるような。

「そうか分かった! それじゃ引き続き海ライフを満喫してくれ!」


《おー! ねぇオーディン聞いてよ。こないだ目の前におっきな魚がいた! おいしそう!ってがぶって噛り付いたら自分のしっぽだったんだよぉ! 痛かったぁ。それでね》


 …このあとしばらく「引きこもりニート」の海中引きこもり生活の一部始終を聞いてやることになった…ヘソ曲げられてやる気出されたら困るからな…

 とにかく言質は取った。災厄三兄妹だからな、もう一人会わなきゃならんヤツがいる――――


あとがきはこちらにまとめました。

→「なぜ?なに?オレオー!」(N7423LN)

各エピソードで使用したネタとその解釈なんかを書いています。

本編と併せて読むとより面白く!

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