② 『Club Nornir』へようこそ-ノルニルはぐらかし-
【前回のオレオー】
転生したらオーディンだった⁉ しかし揉め事の真っ最中。どうにかその場は収めたものの――――
あれからオンタイマーでも入ってるかのように定期的にキレるトールを宥め(よほど頭に来たのか今まで溜まっていたのか「ぬっ殺す!」とまで言っている…)、オレは『とある有名人たち』がいるというウルズの泉へ向かった。その有名人たちとは…ノルン三姉妹。すなわちウルズ、ヴェルザンジー、スクルドの3人である。見覚え聞き覚えがあるだろ? そう、かの有名なマンガのキャラ、そのモデルになった3人だ。彼女たちは『運命』を司るという。そしてこの先のこと、すなわちラグナロクについてもよく知っているとのことなのだが…
オレは一瞬行くべき場所を間違えたのかと思った。だってよぉ、そこにはボディコンギャルとコギャルとメスガキがいたんだぜ? キャバクラのイベントデーかと。しかしあいにくだが天国とは程遠く…
「うわだっさ、オーディンだし」
「まじキモい。また来てるんですけどー」
「ざーこざーこ。ここに何の用?ざこオーディン。ざーこざーこ」
なぜこれほどまでに罵倒されなければならないのか…キャバクラだったらめっちゃチヤホヤされるのに。オーディンって最高神じゃなかった? 気のせい?
「だっさ」と言ったのは青のラメ入りボディコンワンピースを着たウルズ。ピンクのジュリ扇が似合いそうだ。「キモい」と冷ややかな目でオレを見るのはヴェルザンジー。どう見ても着てるのが着崩した制服なんだが…神話の世界にも高校あんのか? そして下から覗き込むように「ざーこ」と煽ってくるのがスクルド。胸にヒラヒラが付いたピンクのブラウスにチョコレートブラウンのスカート。いわゆる「量産型」。一時トー横でよく見たヤツ。そして3人並ぶとまるでギャルの変遷を見ているかのようだ。勉強になるなぁ…じゃなくて。
「なぁ。ノルン三姉妹ならこの世界の未来を知ってるって聞いたんだが。ちょっと教えてくれるか?」
「うわだっさ。こないだ来たばっかりなのに」
そうなのか。
「まじキモい。おじいちゃん、ボケちゃったん?」
「ざーこざーこ、ボケオーディンざーこ」
質問しただけでどうしてこれほどまでに罵倒されなければ…
「あのさぁ、オレこれでも神なんで、あまりバカにしないでもらえるかな?」
穏便に事を済ませようとわからせ棒を使いたくなる衝動を抑えつつ。
「うわだっさ。オーディンってば罵倒されるのが良かったんじゃいの?」
「まじキモい。罵倒してってお願いされたから言ってるんですけどー」
「ざーこざーこ。物忘れオーディンざーこ」
女装はするわ罵倒されるのが好みとか、知りたくもない旧オーディンの性癖ばかりが明るみになるんだが。
あー、早く要件済ませてもうお家帰りたい。ワンルームの狭い部屋だが住み心地は悪くなかった。あ、ゴミ出してなかったな…って思ったりもしたが、そこへは帰れないんだなぁ、と今さらながら気付いた。
なんかしんみりしてきちゃった。遠路はるばる歩いてきてコレかよ、とガックリうなだれ、疲れも手伝いその場にへたり込んじまった。その姿を見て
「ざこオーディンちゃん、泣いてるの? おー、よしよし」
とスクルドがそばへにきて頭を撫でる。なんだコイツ、いいトコあるじゃんか、と思った矢先。耳元へ口を寄せると
「ざーこ」
と囁いてピンポンダッシュのごとく逃げだった。こンガキャァァァ!!!
「頼む…未来を…この先の事を教えてくれ…」
とにかく要件を済ませたいオレは恥も外聞も無く土下座だ。下げる頭はいつでも持ち合わせている。今こそ編集者の社畜魂が発揮される時。
「うわだっさ。オーディンってば未来とか信じてるとかマジだっさ。占いとか好きそー。どうせ終わっちゃうんだから聞いてもしょーがなくなーい?」
「そこのところを詳しく!」
「だーめー」
しかしウルズはオレの土下座にはなんら興味も示さず、視線は明後日の方へ。
「何でだよっ⁈」
「うわだっさ。だってこないだ教えたしー。無闇矢鱈にしゃべっちゃダメーって言われたしー」
「誰からだよ⁈」
「えっとー、特秘事項、です♡」
くっそー! 聞き覚えのあるセリフを見覚えのあるポーズつけてヌケヌケとーっ!
「オーディン必死キモっ。ウチらじゃなくってミーミルに聞けばいいのにー」
「ミーミル…?」
ミーミル…って…なんだ? 誰だ? 乳酸菌飲料か?
「あー、ああそうねミーミルね、ミーミル。 …で、そのミーミルってどこにいんの?」
「うわだっさ。オーディンってミーミルと仲良しじゃなかったっけ?」
今の今までソッポを向いていたウルズが驚いたように振り返りこっちをマジマジと見る。マズイな。あまり長話すると「オーディンだけどオーディンじゃない、ちょっとだけオーディン」な新オーディンだということがバレちまう。
「ざーこざーこ。うちの隣のミーミルの泉にいるんだけど。ざーこ」
スクルドがその方向を指し示す。よし助かったナイスフォロー。それさえ聞ければ長居は無用だ。どうせ教えてくれなさそうだし。っていうか、ここもうヤダ。いくら相手が美人揃いだとしても罵られプレイには耐えられない。旧オーディンとは違うのだよ。
「そっか。邪魔したな」
オレはさっきスクルドが指差した方向へ旅立ったのだった。
◆
「ねぇ、ウルズ姉ちゃーん。今のホントにオーディンおじいちゃん?」
「ウチも思った。あの高飛車で高圧的なオーディンが頭を下げるとかまじキモい」
「真面目そうなおじいちゃんが顔を赤らめて羞恥に耐える姿がカワイかったのにぃ… …どっかで誰かと入れ替わったのかしら? 一応上に報告しておくか…」
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あとがきはこちらにまとめました。
→「なぜ?なに?オレオー!」(N7423LN)
各エピソードで使用したネタとその解釈なんかを書いています。
本編と併せて読むとより面白く!




