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⑯ 『ロキ』

【前回のオレオー】

アースガルズへ旅立つロキ。シギュンはどこまでも彼についていくと決意した。やがて生まれる命。それは――――

 まるで丹沢山系だ。ずらっと山が並んで、さながら今いるのは大山。大山ならケーブルカーでも作っておいて欲しいところだがそうはいかぬが神話の世界、か。オーディン(じじぃ)ボディで昇るのはちとキツイわい。

 その山の中腹、白樺の森の中にパックリと口を開けた洞穴がある。アレ、か。


ズズゥゥゥン…


 どわぁっ⁈ 地震だよオイ。勘弁してくれよ、こんなところで滑落でもしたらゴロゴロ転がってふもとまで一直線だ。でなきゃ樹にぶつかって全身打撲でお陀仏か。

 さて、洞穴に入ってみれば…いやー、こりゃ…雰囲気出てるとでもいうか。灰色の壁が奥まで続いて表面は濡れてるようで外からの光でギラギラ光る。しかも苔臭いんだか鉄臭いんだか妙な臭いもしやがる。天井からの水滴か、ピチッって音が響いてくる。

 その最深部まで辿り着いたとき…オレは声を失った…

 大男が3つの大きな石に横たえられ、縛り付けられている。その頭のとこにはヘビがいて涎をダラダラ垂らし、それを小さな女が洗面器で受け止めている。これが…ロキと妻のシギュン、か。ロキはただ縛り付けられているだけじゃない。見るからに…あちこちに打撲の(あと)。トールは事もなげに、捕まえたと言っていたが、これは相当な荒事だったハズだ…

 オレの気配に気付き、シギュンが振り返った。驚いた顔は間もなく厳しく変わり、オレを睨み付けている。

「…オーディン様。どういったご用件で」

 掛ける言葉も冷たい。

「シギュン。これ、一体どういうことになってるんだ…」

「オーディン様。あなたが指示をしてやったことでしょう。何をシラを切っているのです」

「いや、すまん、オレの不在の間にこんなことになってたなんて…済まんがシギュン、何があったか説明してもらえるか?」

「…オーディン様が何をおっしゃってるか分かりませんが…ロキ様はご自分に危機が迫っていると知り、この山の頂に家をこしらえ、私たち家族はそこへ身を隠したのです」

 シギュンは事の次第を説明してくれた――――



「全員揃ったか!」

「はい、トール様!」

「これより我々は、我らの光であったバルドルを殺害し、あまつさえアース神族を罵倒した、憎きヨトゥン、ロキを逮捕、拘束する! あの山を見ろ。あの山頂へ密かに家を建て、そこに潜伏しているとの情報を得た」

「それってスカジ様がタレこんだんだろ?」

「俺はニョルズ様と聞いたぜ?」

「そこーっ! 何を話しておるーっ!」

「は!」「すみません!」

「まったく。さて諸君。君らも存じているように、ロキは己の身を他の人や動物などに変化(へんげ)させる特殊な能力を持つ。よって、想像以上にヤツの逮捕は困難である。そこのところを肝に銘じて、いざ、出動である!」

「捜査隊、前へ!」

 アースガルズの中央広場にはトールとその他多数の神々が集められた。目的はロキの逮捕。今彼らは隊列成して広場を出て、ロキが潜むとされる山へ向かった。



――――夜。山頂のロキ宅。普通なら一家団欒の時間帯なはずなのだが、小さな竈に焚火が一つ、その前には漁網を繕うロキと、それを見ているシギュンの姿があった。

「ロキ様。私たちはいつまでこうしていればよろしいのでしょう?」

「不満か? シギュン」

「不満と申しますか…いつまでロキ様はこのような目に遭っていなければならないのか、私は不安で」

「…ほとぼりが冷めるまで、だろうな」

「いつとは分からぬ、と」

「そういうことだ。ナリは?」

「眠っております。外に出してあげられないのが不憫なのですが」

「…すまんな。迷惑」


カラン カラン カラン …


「ちっ、来やがった!」

 ロキは編んでいた漁網を焚火にくべると

「シギュン。済まない。俺は」

「分かっております。ご無事で」

「…済まない。こんな目に遭わせて」

「さぁ、早く」

「ああ」

 ロキは仕掛けていた鳴子の音とは反対の方のドアから出ていった。

「それじゃ」

 近場の川までやってくると、そのまま川へ飛び込んだ。するとロキの姿は1尾の鮭へと変わり、上流へと泳ぎ去った。



「シギュン様、ナリ様発見! 確保!」

「確保了解! お二方には見張りをつけろ! 拘束の必要はない!」

「見張り了解!」

 震えて抱き合うシギュン、そしてその息子のナリ。二人の前に大男がやってきて、手持ちの明かりで二人の顔を照らす。暗闇から急に顔を照らされ、シギュンは眩しさに目を細めた。

「シギュン殿。久しいな」

「トール殿…夫が、ロキが何をしたというのです…」

「バルドル殺害の容疑とアース神族への侮辱。その2点だ」

「殺害…容疑…何かの間違いでは…」

「間違いかどうかは捕らえて話を聞いてみねばわからん。して、ロキはどこへ行った?」

 シギュンはトールから目を逸らして横を向き、口を一文字に噤んだ。

「フン。よかろう。悪いが家の中を調べさせてもらうぞ」

 トールは捜査隊員に矢継ぎ早に指示を出し、自分も家内を調べ始めた。

「うん? これは?」

 焚火の跡に燃えカスに奇妙なものを見つける。

「…なるほど、そうか。捜査隊、全員表へ集合だ!」



「これを見ろ」

 トールは先ほどの燃えカスを隊員に掲げてみせた。

「これは漁網の一部だ。おそらくロキは普段この網で魚を獲り、食料としていたのだろう。同時に。ヤツは変化(へんげ)が得意だ。すぐそこに川があったな。ヤツは魚に姿を変えて川へ逃げたに違いない。よって。これよりロキ捕獲作戦第2弾を発動する。現在の捜査員を2班に分け、シギュン殿とナリの見張りをする家宅捜査班、ワシを中心にロキ捕獲を目的とするロキ追跡班に分け、それぞれ行動する。家宅捜査班は班長と連絡係を決定、あとでワシに報告へ来い。ロキ追跡班は燃えカスから網の断片を集めて修復、大きな網を作る。夜明けよりその網でもってロキを確保する。以上だ!」



 山際が明るくなったころ、ロキ追跡班は川へ出て、彼の捜索を開始した。

「魚に化けたのなら頭は上流を向けるはず。ならば上流へ向かったとみるが最善手よ」

 そうつぶやくトールを先頭に、追跡班は川岸を上流へ向けて歩いた。

 歩き続けるうちにザァザァと水が落ちる音。魚が泳いで上れぬほどの滝へ行きついた。

「トール様。ここは地元ではフラナングの滝と呼ばれる場所です」

「ふむ…」

 見渡せば水の落下地点は大きな滝つぼとなっており、滝の裏には空洞が見えた。

「なるほど。総員川に入れ! 下流では網を張り、ワシを先頭に水中から上流に上がる! 魚は何でも構わん、とにかく捕まえたら岸にブチ上げろ!」

「総員川へ!」

 トールを先頭に数人が水中を手探りで魚を探す。追われて逃げた魚は網にかかれば捕まえられ次々と岸へ放り投げられた。捕まるのは小魚がばかりだったが…

「うぬ?」

 トールの手に何か大物の手応え。これはと思いそれを掴むがぬるりと逃げられトールが触れたのは尻尾。だが馬鹿力で尾びれの付け根を掴み、一気に抜き上げ岸に放り投げた。

「ロキ捕まえたりィッ!」

「ロキ確保! 急げ!」

 追跡班は次々と岸に上がり、トールが捕まえた魚――――全長150cm超える大きな鮭を取り押さえた。

 トールも岸へと上がり、捜査員へと指示を出す。

「ロキはここを下ったところにある洞穴の中へ縛り付けておけ。これで一件落着だ、ワシは帰るぞ。皆の者、大儀であった。現場はそれぞれの班長に任せ、任務完了次第各自解散じゃ。ガッハッハッハ!」

 大きな笑い声を上げながら、トールは山を下りていった。



 朝を迎えました。でも、私もナリも、一睡もできませんでした。ロキ様のご無事を祈ることしか今の私にはできません。

 そんな折、川から走ってきた人が一人。大声で叫びました。

「伝令! ロキ追跡班より! ロキ確保! 以上!」

「ああ…ロキ様…」

 私は目の前が真っ暗に。でもここにやってきた人は、まだいました。

「誰だ⁉ …スカジ様…?」

 ニョルズ様の元奥様のスカジ様。なぜこんなところに…それにもう一人…若い男の人を連れて…

「用があってきた。シギュン。ずいぶんと久しぶりだね。元気かい」

「スカジ様もご機嫌麗しゅう存じます」

「そうでもないさ。さっさと用をすませてしまおう。ヴァーリ!」

 名を呼ばれたその男の人は…見る見る姿を変えてオオカミに。

「シギュン。あなたには恨みはないんだけどね。でもこれ、アースの総意だから。やれっ! ヴァーリっ!」

 ヴァーリと呼ばれたオオカミは、息子のナリへ一直線に向かってきて、そして

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」

 ナリを…胴から…真っ二つに噛み切って…

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…」

 私には悲鳴を上げたそのあとの記憶がありません…



「スカジ様っ⁈ 何をなさるのです⁈」

 異様に目が据わったスカジに、捜査員たちは異常を感じて近づけなかった。

「オーディンの意思だ。この子はヴァーリ。オーディンとリンドの間に、復讐のために生まれた子。すでにバルドルを殺したヘズは始末した。そして…」


グジュッ グジュジュジュ…


 スカジは「ナリだったモノ」へ近づき、腸を引きずり出すと

「これをロキのところへ持っていけ。そしてこれでロキを束縛しろ」

 そばにいた捜査員へ手渡した。むろん捜査員の顔は蒼白である。



 腸を持たされた捜査員とスカジはロキを確保した洞穴へと向かった。すでにトールは引き上げた後。数人が鮭の回りに待機し、異常がないか見張っていた。そこへスカジたちが到着する。

「誰…スカジ様? それにお前…何もってんだ」

「ナリ様の…腸…」

「な…なんでそんなもん…」

「簡単に説明なんかできるかよ…とにかく、スカジ様はこれでロキを拘束しろと」

「訳が分からねぇ…が、やるしかないのか…」

 捜査員たちは3本あった腸を『鮭』に巻き付け、石と一緒に縛り付けた。その途端

「うわっ⁈」

「暴れんじゃねぇっ!」

 鮭だったものはロキの姿に戻って暴れ始めたので、ともかく手持ちのものでロキを殴りつけた。殴りつけ殴りつけ、おとなしくなるまで殴りつけ。

「静かにしろ」

 しばし姿が見えなかったスカジはいつの間にか洞穴の奥へ戻っていた。そしてその一言と同時に右手をロキへ翳すと、ロキを縛り付けた腸は鉄のごとく硬く締まり、ロキの体をより強く石へと縛り付けた。

「グガァァァ」

 ロキのうめきをものともせず、スカジは彼へ歩み寄り、いつの間にやら手にしていた毒ヘビをロキの頭上へ(しつら)えた。だらりと口を開けたヘビの牙からは毒のしずくがロキの顔へ滴り落ちる。

「ガアッ⁈ スカジ! なぜだ? なぜ同じヨトゥンなのにこんなことを⁈」

「ロキ。これが父殺しの恨み。そしてバルドル殺しの恨み。生きながらにして受ける苦痛。いつまでもいつまでも味わうがいい」

 スカジはそう言い残して洞穴を去った。

「な、なぁ俺たち…」

「これ、拘束されてるってことだよな…俺たちの役目は終わった、ってことだよな…」

「だよな…これで終わりだ。戻るぞ」

「ああ…」

 捜査員たちもまた、洞穴を去った。



「う…う、うう…」

「気が付かれましたか、シギュン様。では我らはこれにて。シギュン様が目覚めたぞー! 総員撤収!」

「もし。あの、夫は、ロキは? それと息子のナリは…?」

「…ここだけの話ですが、ご主人はこの山の洞穴に捕らえられているかと。ナリ様は…もう…」

「ッッッッッッッッッッッッッ⁉」

 …捜査員の方が目を伏せた方とは逆…そちらには…無残な姿になったナリがいました…胴から二つにちぎられて…血塗れになって…

 ナリを食い殺したヴァーリと言う男はもういませんでした。スカジ様も。捜査員も引き上げ、私は…ひとりでした。



 山を下りました。洞穴といえば心当たりはあそこしかない。果たして洞穴があり、その奥へ進むと…石に縛られたロキ様がいました。

「ロキ様!」

 私はロキ様を縛めているものを外そうと、それに手を掛けます。


バシィッ


「キャァッ⁈」

 触れたところから得体の知れない力で爆ぜられ、弾き飛ばされてしまいました。

「…シギュン…触れるな…何か細工がされグアアアアアアッ」

「ロキ様⁉」

 見上げればロキ様の頭上にはヘビがいて、口から毒を垂らし流していました。どうやらそれは途轍もない苦痛で、ロキ様の顔は歪んでいます。

「あの! 少しだけ! 少しだけ待っていてください!」

 私は洞穴を駆け出て家へ戻り、桶を一つ掴むと洞穴へ急ぎ戻りました。そして…私は何もできません。せめてロキ様の苦痛を和らげて差し上げられれば、と、ヘビの毒を桶で受け続けたのです――――



「…そんなことが…」

 シギュンはずっと洗面器を掲げたまま。オレに背を向けたままで顛末を話してくれた。

「…夫が…ロキが何か悪いことをしたというのなら、妻である私も同じ罰を受ける所存です。それが償いになるというならいくらでも、いつまでも受け続けようと構いません。でもナリは…ナリは関係ないではありませんか。ナリにはなんの罪もないではないですか。それなのに…あんなな仕打ちを…それがアースの総意であるというのなら…」

 そう静かに語るシギュンはやはり洗面器を掲げたまま。しかしオレをキッと睨み付け

「あなたたちアース神族は、もう二度と信用しないッ!」

 オレを睨み付けたその目は、怒りと悲しみと侮蔑と絶望と…ありとあらゆるネガティブな色をしていた。

 だがとにかく…

「むんッ!」


バシィッ


 ロキを縛り付けている何かをとにかく取ってやりたかった。それで力任せにぶっちぎってやろうとしたが、何か不思議な力で手元が破裂して、吹き飛ばされた。

「オーディン様っ⁈ 何をするおつもりですかっ⁈」

「とにかくコイツを外してやりたいんだが…何なんだこりゃ…」

「私も同じように弾き飛ばされて…」

「そう、か…」

 なんなんだこれ。触れた感じは鉄のように硬かったが、鉄のような冷たさはなかった。同時に外されることを拒むような何かが働いたことは感じた。なんだよ、これ…ん? …よく見るとその金属のようなベルトには文字…これ、ルーン、か。魔法によるセキュリティロック、ってとこだな。 …なら…フェンリルの時と同じように…やれるか? いや、やるっ!

 立ち上がり、そのベルトへ向け手を翳す。

「アース最高神オーディンの名において命ずる。ロキ(結び留める者)(いまし)めしもの、その(ばく)、解き放て!」


バシュッ バシュッ バシュッ


「これでよし!」

 ロキを縛り付けていた3本のベルトはすべて弾け飛んだ。

「オーディン様…なぜこのような…だって、これ、アース神族の…オーディン様の指示で…」

 ロキは起き上がり、その傍らでシギュンは目を丸くしている。

「オレは何も指示していない。オレがフェンリルたちに会いに行ってる間に、こんなことになっちまっていた…」

「フェンリル…? オーディン、フェンリルに会ったのかっ? 会えたのかっ⁈」

 想像以上にロキが驚いている。ってか、「会えた」って言い様から察するに、ロキは「会えなかった」ということか。

「ああ。フェンリルと会って話をした。アイツ、なんだか捕まってて、そりゃあんまりだと思って放してやったよ。ヨルムンガンドとヘルにも会った。 …あぁ、すまん、ヨルムンガンドは顔を見せなかったがな。でもよ、フェンリルも、ヨルムンガンドも、ヘルも、みんないい子たちばっかだった。お前とお母さんのことが大好きな、普通の子供だったよ。だから…」

 オレは地に膝をつけ両手をつけ頭を下げた。つまり土下座だ。

「ロキ! シギュン! 済まなかった! オレが直接関与してなかったとはいえ、すべて最高神たるオレの責任だ。すまん! 許してくれ!」

 おでこを地面に叩き付けんばかりに頭を下げた。土下座など、今までいくらでもやってきた。主に印刷所の所長相手だが。それはでも、締め切りを守れないアホ作家を守るためのポーズに過ぎない。オレは小説が好きだ。もちろん自分でも書いてはみた。だが書けば書くほど自分の中の言葉の貧しさに絶望する羽目になった。それで、書く側ではなくそれを世に出す側に回った。それはそれで楽しいものだったが…だが今は。これほどの苦痛を与えてしまった人たちに、謝罪する言葉をオレは持っていなかった。何をどう言えば、この精一杯の申し訳ないという気持ちが伝わるのか。言葉にできないなら行動で示すしかない。だからこれは、ポーズなんかじゃない、誠心誠意、本気の土下座だ。

「…そんな…オーディン様…最高神たるあなたにそれほどまでにされてしまったら、私は…私は誰を恨めばいいのですか…私のこの気持ちは…誰にぶつければいいのですかッ⁈」

「シギュン。もういい」

「ロキ様…」

「オーディン。俺はお前の息子を殺した男だぞ? それに頭を下げるのか?」

「それとこれとは話を分けたい。やったやられたでやりあってたら、いつまで経っても物事は解決しない」

「…オーディン、お前、変わったか?」

「ああ?」

 顔を上げればロキは不思議そうな顔でオレを見ている。

「お前、秩序こそが世界の摂理、みたいなヤツだったろ?」

「そんなこともあったかもしれねぇな…ただ、ロキ。教えてくれ。お前はなんでバルドルを殺した? 宴会の席でみんなをバカにするようなことを言ったんだ?」

「…分からない…」

「は?」

「分からないんだ。それをやった記憶はある。だがなんでそんなことをしたのか、する必要があったのか、考えてみても分からないんだ…なんというか…気が付いたらやっていた、と言うか…」

「なんだそりゃ…だがロキ。そんなワケわかんねぇ理由で世界を滅ぼされちゃ困るんだよ。だから約束してほしい。世界の終焉(ラグナロク)は起こさないと。フェンリル、ヨルムンガンド、ヘル。3人ともお前が言わなきゃ何もしないと約束してくれた。オレは、アイツらがいい子だと知っているから、だから約束を守ってくれると信じている。だからロキ、お前もオレと約束してくれないか?」

「…分かった。約束しよう」

「頼むぜ」

「ああ」

 互いに手を差し出し握手を交わした。これが世界を救う握手になることを切に願うぜ。

「とにかく今すぐお前たちはここから出ろ。この山はオレの権限で入山禁止としておく。それでも入ってくるバカはいるだろうが、ここから逃げ(おう)せる時間くらいは稼げるだろう」

「すまない、オーディン」

「お互い様よ。じゃぁな」

 オレは軽く手を振り二人に別れを告げ洞穴を出た。暗闇に慣れた目は、外のまぶしさに潰れんばかりだった。


あとがきはこちらにまとめました。

→「なぜ?なに?オレオー!」(N7423LN)

各エピソードで使用したネタとその解釈なんかを書いています。

本編と併せて読むとより面白く!

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