⑦ アングルボザの窓④アースガルズ
【前回のオレオー】
気持ちとは裏腹に突き放してしまったアングルボザ。でもロキはちゃんと戻ってきた。そして二人は結ばれて――――
今年もヨトゥンヘイムに夏がやってきた。暑いねぇ。え? ロキかい? うふふ。アタイらも熱くやってるよ。なんてね。
ただアイツは相変わらず。あいさつ代わりにイタズラしてるって感じ。あれはもうどうにもならないね。女としては落ち着いてほしいなと思うけど、でも大人しくなったロキなんかアイツらしくない。いつまでも野性味のある、イイ男でいて欲しいからさ。そんなところにアタイは惚れちゃったんだから。惚れた方の負けだよね。
◆
今日は珍しくアイツと会わなかった。いつものところで待ってたんだけど、全然来やしない。またどっかでイタズラでもしてんのかなって、それで村中探しても見つからない。誰も見てないって。それで、近所の村もあちこち行ってみたけどやっぱりいない。変なの、と思いつつも日が暮れたから帰ったけど…
…ところが翌朝、アイツはいた。どこからかの帰り。まさか、他の女…? 少しだけ疑ったりしたけども、どうにもそうじゃない。というよりむしろ、めっちゃ興奮しながら話すんだ。
「アースガルズに行ってきた」って。
◆
相変わらずよぉ、オヤジはお袋ブン殴ってんし、ムカついたからオヤジをブン殴ってノシて、家を出ちまったんだ。もう夜だったからお前んとこ行くわけにいかねぇから、どっかで野宿でもすっか、とフラフラ歩いてたんだ。ただ、霧が出てきちまってな、あーこりゃヤベェな、迷っちまう、なんて思ってたら、やっぱり迷っちまった。明るくなってからじゃねぇとどうにもならねぇなってんで、そのままそこで寝ちまった。
朝日のまぶしさに目を開けると、霧はすっかり晴れていて、それはともかく景色が違う。見慣れたヨトゥンヘイムの景色じゃねぇ。なんだこりゃ? ここはどこだ?ってウロついてっと、見慣れない服を着たおっさんがいたから聞いたんだ。ここはどこだよ、って。そしたらよ、おっさん、ここはアースガルズだっていうんだよ。マジか? だってよ、アースガルズって簡単に行けるところじゃねぇだろ? 俺たちヨトゥンだし。「俺、ヨトゥンなんだけどよ」っておっさんに言ったら、おっさんエライビックリして、「ちょっとここで待ってろ」って言うんだ。まぁ待ってろっていうから素直に待ってたら、おっさん、ぞろぞろと人を引き連れて戻ってきやがった。その中の一人のじじいが言うんだ。「わしはオーディンじゃ」って。マジかよ、オーディンってアースの最高神だぜ? 最高神サマのお出ましだよ。それがついてこいっていうからついていったワケよ。そしたらじじいたち、珍しい客が来たから宴会やるって、広場の真ん中に酒をガンガン出してきて、飲み始めやがった。まったく、夏至祭のおっさんかよって。それで、オーディンだけじゃねぇ、そこにいた奴らから質問攻めよ。そしたらお前面白い奴だなって酒勧められて。これがさ、めっちゃ強ぇでやんの。でも村の酒より全然美味いからついグビグビ飲んじまって、目が回ってバタンキュー。潰れちまった。目が覚めたらまだコイツら飲んでんだ。それでまた酒飲まされてバタンキュー。それを何度繰り返したことか。何度目かに目を覚ましたら、オーディンだけがちびちび飲んでてよ。また話し込んで。それでこのじじい、俺の何を気に入ったんだか知らねぇけど、「わしと兄弟になるか?」って。じじいと兄弟ってワケわかんねぇ、「まぁそのうちな」って答えたらじじいは嬉しそうに「それならこれは前祝いじゃ」って酒を注ぐもんだからまた飲み過ぎてバタンキュー、だったけどな。
そんなんで目覚めては飲んで寝て、目覚めては飲んで寝てでついに朝になっちまった。いや、そろそろ帰んねえとな。ボザも心配してんだろうし。だから帰り道聞いて帰ることにしたんだ。途中までは最初に会ったおっさんが道案内してくれたよ。名前聞いたらヘイムダル、だってさ。
それから、聞いた通りに歩いてたら、いつのまにやらヨトゥンヘイム。そして真っ先にお前んとこ来た、ってワケよ。
◆
って、ずっと一人でしゃべってた。それはもう、目をキラッキラさせながらさぁ。アタイはこの子供のままの目をしたアイツが好きなんだからさ、まぁそれは見てて楽しいんだけど、アタイをほったらかしにしてたことはおくびにも出さずアースガルズのことばっかしゃべり続けられたらシャクにも触るじゃない?
「アースの奴ら、よほど俺を気に入ったのか、また来いよ、っていうんだ。ボザ、次はお前も一緒にどうだ?」
「えー、アタイはごめんだよ。アースって秩序とか重んじるんでしょ? 女は黙ってろ!とかさ。そういうの、アタイは窮屈でイヤだな。アタイは笑いたいときに笑い、怒りたいときに怒れる、ヨトゥンヘイムの自由な風が好きなのさ」
「そういう感じじゃなかったけどなぁ? なんだかアイツら、めっちゃ自由だったぜ? まぁ酒も美味かったし、また行ってやんからよ」
「アタイはごめんだよ。好きにしな」
「でもよぉ、オーディンと兄弟とか、俺もアース神族の一員になったみたいだろ?」
「バカ言ってんじゃないよ。アタイらヨトゥンだろ?」
「まぁそうだけどよぉ」
ロキはよほどアースガルズを気に入ったのか、まだまだおしゃべりは続いた。ま、アタイはロキがアタイのところへ帰ってくるなら別に構わない。アタイはいつでもここにいるんだからさ。
◆
あとがきはこちらにまとめました。
→「なぜ?なに?オレオー!」(N7423LN)
各エピソードで使用したネタとその解釈なんかを書いています。
本編と併せて読むとより面白く!




