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③ シギュンの窓② 夏至祭、その前日

【前回のオレオー】

捕縛されたロキを支えるシギュン。幼き日の彼女の目はイタズラ小僧で有名なロキを追っていた――――

 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…

 あっ⁈ ごめんなさい! 溜息なんかついちゃって。

 でも溜息が出ちゃう話なんですよぉ…

 明日は夏至祭。冬至祭と並ぶ、ヨトゥンの村の大きなお祭り。私の村だけでなく、村同士の交流の意味もあって、他の村とも一緒にやるのです。夏は太陽がほとんど沈みません。白夜、って言います。だから深夜になってもあまり暗くならないので、大きな広場の真ん中に大きな火を焚いて、その周りで歌ったり踊ったり。一晩中騒ぐのです。いつもは夜になったら寝なくちゃいけない子供たちも、夏至祭の時には夜更かしが許されるので大はしゃぎ。ここぞとばかりにご馳走も振る舞われるのでみんなとっても楽しみにしているのです。

 …ですが。年頃の男の子女の子には、夏至祭にはもう一つ意味があって…火の回りで踊るのは、大体私と同じくらいの、年頃の子たち。そういうことになってるんです。そして、火の回りにぐるっと座って並んでて、男の子たちは女の子を踊りに誘うのです。誘われて、一緒に踊って、いい感じになったらカップル成立。中には踊りの輪から消えていくカップルもいたり…だから春ごろに生まれる子供が多いんです。かく言う私も春の生まれ…

 そういうことがあるので、私よりも…実はお母さんがはりきっちゃっているのです。今年は普段の年とは違って、春ごろから歌と踊りのレッスンが続いています。もちろんお母さんがコーチ。

「ほらシギュン! そこはもっと腰を落として!」

「あー、もっと手を高く上げて! 笑顔! 笑顔!」

 とか。熱血です。おかげで普段使わない筋肉を使いまくっているので、筋肉痛が…

 そんなやり取りを、お父さんは何も言わず、ただ見ています。すこし焦点が合ってない気がしますが。

 歌も練習するのですが…歌うことは大好きです。家のお仕事しながら歌ったり。でも歌詞を憶えるのが大変。今までも夏至祭ではなんとなく歌ってましたが、ちゃんと歌うとなるとしっかり歌詞を憶えなくてはダメで。おかげで普段使わない頭を使いまくっているので、頭痛が…なんてことはないですが。

 でも面白いのが、井戸へ水汲みに行くと、同い年くらいの子はみんな夏至祭の歌を口ずさんでいます。

「♪昇れ太陽 燃える火よ♪」

 なんて口ずさんでいると

「♪踊れ歌え 今日の日を♪」

 と誰かが一緒に歌い出し

「♪花咲き乱れ♪」

「「「「「「「「花咲き乱れっ!」」」」」」」」

「♪小鳥は歌い♪」

「「「「「「「「小鳥は歌いっ!」」」」」」」」

「「「「「「「「「♪大地の恵み 感謝せん♪」」」」」」」」」」

 って、いつの間にか井戸の周りは人だらけで大合唱。夏の夜のカエルたちみたい。

 簡単な歌詞? でもこれ、10番まであるんですよ? …こういう歌が何曲も…

「『夏至の火の回り』、何番まで憶えた?」

「私5番!」

「私8番まで歌えるよ」

「おー、すごーい」

 ずっとこんな話をしていて、戻るのが遅くなって叱られちゃいました。



 夏至祭に向けて、新しい服をお母さんが作ってくれました。作ってくれましたが…溜息の原因、実はここにあって…私はどうも成長が遅いようで、身長もさることながら、胸もお尻もあまり大きくなっていません。同い年の子なんかはもうすっかりボンキュボンと育っているのに。お父さんは「シギュンはそれでいいんだよ」と優しく言ってくれますが、やっぱり周りを見回すと、ね。ふと自分の足元を見下ろすと、そこに見える景色はずっと今まで変わっていません。足の先どころか足首までしっかり見えるから…

 そしてお母さんが用意した服。これが…その…

「ねぇ、お母さん…これちょっと派手じゃないかなぁ…」

「いいのよこのくらいで。あんたは地味なんだからちょっとくらい派手にしないと目立たないでしょ」

 …娘に向かって地味と言い切ってしまう母親というのもあれなんですが。

「えー、目立つのヤダなぁ…」

「何言ってんの。お母さんが若いときなんかね」

 ここからしばらく昔話を聞くことになります。

 着てみてさらにビックリです。

「ひぃぃぃぃ…スカート短いぃぃぃぃ? お尻見えそうぉぉぉぉ…」

「いいのよこのくらいで。男はお尻を見せとけば大体落とせるんだから」

「…何言ってるの?」

「だいたい、お母さんが若いときなんかね」

 ここからまたしばらく昔話を聞くことになります…

 でも…がんばって染めてくれたことはよくわかります。とっても鮮やかな赤いワンピース。麻布をこんなに鮮やかにするのは大変なはず。だからとってもありがたくて嬉しいのですけど…ワンピースは胸のところを紐で締め上げます。

「ほらほら。そんなに胸元締めちゃダメでしょう。もっと開けなきゃ」

「えー、だって締めないと恥ずかしいよぉ…」

「何言ってんの。夏至祭なんだから出すとこ出していかないと。お母さんが若いときなんかね…」

 …今日だけでも同じ話を3回は聞きました…

 服の刺繍も金色の糸で凝ってるし、髪飾りなどの小物もひと揃え。みんなどれもこれもかわいくて素敵なんですけど、それを全部私が身に着けると…私はおしゃれアイテムの中に埋まってしまったような感じに…

 こんなやり取りも、お父さんは何も言わず、ただ見ています。やっぱり焦点が合ってない。ちょっと寂しそうにも見えますが。


あとがきはこちらにまとめました。

→「なぜ?なに?オレオー!」(N7423LN)

各エピソードで使用したネタとその解釈なんかを書いています。

本編と併せて読むとより面白く!

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