② アングルボザの窓①「アイツ」
【前回のオレオー】
AI曰く「世界初。そして唯一無二」。ロキを巡る2人の女、その若き日の物語────
「今日は早く帰ってきなさいよ」
「はーい」
いつもの言葉にいつもの返事。
アタイはアングルボザ。巨人の両親から生まれた、ふつーに巨人の女の子。特に変わった能力なんかもなかったから、ふつーに暮らしてる。ふつーって、そりゃ家の手伝いとか、ちょっとは…ちょっとはやるけど、家の中でグズグズしてるの嫌いだからね、山へ行って木の実を取ったり、川で魚を獲ったり、外でそういうことをしてる方が好きだな。もちろん外で元気に『仕事』してくればお腹が空くわけで。今日の夕食、肉がいいな、肉。やっぱ肉を食べなきゃ元気でないでしょ!
名前、長くて憶えにくかったらボザでいいよ。アイツもそう呼ぶから。アイツ? ロキのことだよ。ロキとは幼馴染みなんだ。同じころに生まれたらしい。同じ村で近所に住んでて、気が付けばいつも一緒に遊んでたって感じ。
アイツ、小さいときはホントちっこくて、アタイの方が大きいくらいだったんだけど、みるみる背が伸びてもう追いつかれそう。でも体は大きくなってもやることは昔と同じ。イタズラばっかしてんの。アイツが率先してイタズラして、アタイたちはそれを見てゲラゲラ笑って。アイツが捕まって叱られてるところを見て、また笑って。どんだけ叱られても、アイツ懲りないんだよねぇ。それで新しいイタズラをまた見つけてはイタズラして叱られて。そんなんだから、アイツと一緒にいるといつでも新鮮、飽きることがない。
こないだなんかさ、隣村に忍び込んで鱒の燻製パクってきたよ。「タイムアタックだぜ!」って。バカだねぇ。それで「記録更新だぜ!」って喜んでるんだからさ。ホント、バカだよねぇ。それで『戦利品』の燻製、みんなでちょっとずつ分けて食べてね。なんだかアイツがやった悪さをみんなでちょっとずつ分け合ってるみたいで、自分も悪さしたみたいでドキドキしたよ。
そんなイタズラばっかして、叱られて、バカじゃないの?って思うだろ? でもね…たぶんアイツ、寂しいんだと思うんだ。アイツの口からはそんなの何にも言わないけど。アイツんちは…ちょっと家庭がいろいろ複雑みたいで…アイツんとこは上に兄ちゃんが2人いるんだけど、その二人とロキってお母さんが違うんだって。オヤジさんが家ん中で暴力振るうからって、前の奥さんのスカラさんは二人を置いて家を出てっちゃったんだって。今の奥さんでもそれは変わってなくて、力じゃオヤジさんに敵わないからさ、アイツ、家でなんかあるとウチによく逃げ込んできてたんだ。それで一緒に遊ぶ機会も多くなってね。だからアタシは小さい時からアイツとずっと一緒だったのさ。
ただアイツ…たまにおかしなことを言ってたんだよね。「なんか俺、誰かに見られてる気がする」って。でも周りを見回しても誰もいないし。「気のせいだよ!」って言ってやったさ。
オヤジさんがそんなんで、今の奥さんのラウフェイさんはどこかの神らしいんだけど、アースやヴァンじゃないそうだからさ、迫害、っていうの?結構肩身の狭い立場でさ。近所からもアイツんとこは、って言われてて。アタイは全然そんなの気にしないけどね。だってロキ、アイツ、いいヤツなんだよ? 家のことなんか一言も言わなくて、むしろ全然明るいし。それにすごくよく見てる。アタイだけじゃなくて、いつもつるんでる連中のこと、みんな。チビたちの面倒なんかもよくみてるんだ。だからみんなから慕われてて、当然のようにみんなのリーダーになってて。
それと、アイツって弱い者イジメとかが大っ嫌い。そういうことしてるヤツを見つけると、有無を言わさずブン殴ってる。相手が何人だろうと突っ込んでいく。それで最後には全員ノしちゃうんだから大したもんだよね。それでいて女の子にはとても優しい。もちろん…アタイにも。これについてはアイツ言ってたね。「女ってのは守らなきゃならねぇんだ。力ってのはそのためにあるんだ」って。この辺、家のことが影響してるんだろうけど、女にとっちゃ頼もしい存在だよ。
アイツは言ってたんだ。「絶対ビッグになってみせる」って。アタイもさ「ロキ、アンタならできるよ」って。「応援するよ」って。そしたらアイツ、とっても嬉しそうだった。アタイかい? アタイは…お母さんになりたい、かな。子供好きだからさ。相手が誰かなんて考えてないけど、自分の子供には自由にさせてやりたい。そんな風に育ててみたいな…なんてね!
今日もそれで、これからアイツと遊ぼうって出掛けようとしたところで母ちゃんから声を掛けられた。いつも、日が暮れても帰ってこなかったりするからね、言われても当然…なんだけど…うちの両親はロキのことが気に入らないみたい。普段の生活のことは何にも言わないくせに、アイツのことだけはその辺の近所の人たちと同じことを言う。「アイツは危ない」って。どうせアイツの家のこととかでそういってるんだろうけど。何にも知らないくせに。アイツが、ロキがどんなヤツかなんて、何にも知らないくせにそういうことを平気で言うんだ。つまんない人たち。自分の親もそんなのと同じかと思うと情けなくなるね。近所の人たちなら口を聞かなければ済むことだけど、家の中じゃそうはいかない。だからたまに大ゲンカになったりすることもある。アタイはアイツのいいトコロを知って欲しいだけなのに。だから…今はちょっと無理だけど、もっと大きくなったらアタイはこの家を出るつもり。父ちゃんも母ちゃんも大好き。だからアイツのことでケンカなんかしたくない。アイツのことで誰かを傷つけたりしたくない。ただ…それだけだよ。
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あとがきはこちらにまとめました。
→「なぜ?なに?オレオー!」(N7423LN)
各エピソードで使用したネタとその解釈なんかを書いています。
本編と併せて読むとより面白く!




