受信料を払ってもらいます
トン トン
俺は自分の家のドアがノックされた音を聞いた。
「は~い。どちら様ですか?」
「N◯Kの受信料の徴収に来ました」
エッ! 何で。鬱陶しいな。俺の家に来るなよー。
「悪いけど、俺、N◯Kを見てないんですが」
「見ている、見ていないは関係ないですよ。受信できるデバイスがあれば受信料を払ってもらいます」
アッ、コイツ、わかってないな。俺がテレビを持っていないことを。
「俺、テレビを持っていないのですが。その上、家にアンテナも設置していないし、ケーブルテレビも契約してないですよ」
「勿論、知っていますよ。ですが、鈴木さんはテレビやアンテナがなくてもN◯Kを受信出来ますよね」
はぁ~、何言っているんだ、コイツ。そんな事、出来る訳ないだろう。頭、おかしいのではないか。
「あなた、何、言っているんですか。まさか、俺がネット契約していて、その上、スマホを持っているから受信料を払えと言っているんですか?」
「いえいえ、違います。鈴木さん、仰っておられたではないですか。宇宙からの何らかの信号を、自分自身をその周波数を合わせることで受信できると」
アッ! 確かにそんな事、俺は言っていたな。
あれは、約6ヶ月前の話だ。俺はユーチューブでスピリチュアル系のチャンネルを持っている。そのチャンネルで1本の動画がバズった。俺はその動画で宇宙からのメッセージの受信方法を啓発していた。その動画で宇宙からのメッセージの受信方法を、テレビやラジオなどの仕組みを例にして説明した。
俺は自分のチャンネルの中で、世界には無数の電波が同時に飛んでいる事を説明した。それは宇宙からの物であったり、人が意図的に流した電波であったりする。我々は特定のデバイスを使ってそれらの電波を受信し、それを利用することができると。それがラジオであったり、テレビであったり、またはWiFiであったりする。
テレビの場合、テレビのチューナーを使ってテレビ電波を受信し、特定の番組をテレビで視聴することができる。ただし、特定の番組を選択したからと言って、別のチャンネルの番組が存在していない訳ではない。それは、色々なチャンネルの周波数が同時に存在しているからだ。だから、我々が別のチャンネルの周波数にチューナーを合わせれば、別のチャンネルの番組を見ることができる。
俺はテレビを例を上げて、宇宙にも色々なチャンネルが同時に存在していることを話した。そして宇宙からの電波の受信装置は、自分自身の脳がチューナーの代わりになると。脳の状態がよりポジティブであれば、それに合わせてよりポジティブがメッセージが宇宙から届き、よりネガティブであればよりネガティブなメッセージが届くと説いた。
そして、宇宙には無数のポジティブなメッセージと無数のネガティブなメッセージが同時に存在し、まるでテレビをチャンネルをチューナーで変えるかのように宇宙からの信号も自分の精神状態によって自由に切り替えることができるのだと説いたのだ。
コイツ、俺がテレビを例に上げたから、俺が自分の脳を使ってN◯Kの電波を受信できると勘違いしているのではないか。馬鹿なのか、コイツ。
「あなたねー、あれはだだの例えですよ」
「エッ! 鈴木さん、あなた、動画で嘘を言っていたのですか」
「嘘ではありません。あれは宇宙からの信号であって、放送局からの電波ではありません」
「でも、N◯Kからの電波も宇宙からの電波も同じ電波ですよね~。同じ電波ならどちらも鈴木さん自身で両方とも受信できますよね~。受信する、しないは関係ないのですよ。我々は鈴木さんがN◯Kの電波を受信できるかどうかしか問わないのですよ」
アホかー!コイツ。完全に詐欺士ではないか。
「あの~、出来る訳、ないではないか。仮にN◯Kの電波を自分の脳で受信できたとしても、……それを解読する方法を知らないと見ることできる訳ねーだろう」
「頑張って勉強して下さいね。では、受信料を支払いをお願いします」
「ヤッカマシイワー! カーナビの次はスピリチュアルかよ。お前ら、N国党の立花に通報するぞ、コノヤロー! お前、もう帰れ」
『お前、もう帰れ』がトドメの一言だった。それを言われたら集金人は引き下がるしかなかった。でなければ、不退去罪で刑事告訴される可能性があるからだ。




