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おバカな婚約破棄

豆腐(屋)の角で頭をぶつけたら婚約破棄された

作者: た〜

「チグリス、お前との婚約は破棄させてもらう。オレは真実の愛に目覚めたのだ」

とあるパーティーの席上子爵家長女の俺に向かって婚約者で伯爵家の次男であるナイルが宣言した。

真実の愛に目覚めたって、なっぺ系の小説かよ。だがしかし


ゔわっはっはっはっはー

思わず馬鹿笑いしてしまった。うん、素晴らしい


「そーかそーか、婚約破棄か。うんうん、素晴らしい」

バシバシ。思わず両手でナイルの両の肩を思い切り叩く。気心のしれた男友達同士がご機嫌な話題で盛りがっているときのようにだ。わははははは。ご機嫌に笑う


上位貴族の男に対し子爵令嬢ごときが取って良い態度ではないが、ナイルのほうがいきなり婚約破棄を言い出したので、ショックで錯乱したものと勘違いされて不問となった。せーふせーふ


さて、なぜ子爵令嬢である俺が優雅さのかけらもない言葉遣いで一人称が俺なのか、なぜ婚約破棄でこんなに大喜びをしているのか


まあ、平たく言って異世界転生というやつだ。とある中堅企業の万年係長だったおれはある日豆腐屋まえの角で頭をぶつけて死んでしまった。豆腐の角じゃなくて良かったぜ。え?普通実際に豆腐の角に頭をぶつけるやつは居ないし、もし居たとしても死にはしない?まあ、そうかもな


で、とある子爵家の長女に転生したというわけだ。要するに冴えないおっさんから子爵令嬢にジョブチェンジというわけだ。


最初の頃は全く自覚がなかったんだ。幼少の頃から貴族令嬢としてしっかり教育されたので必要ならそれなりの立ち振舞はできたのだが、どうも常々違和感はあった。


そんな日々を暮らしていたのだが、成人を迎える日が近づいてきた頃、ナイルとの縁談が持ち上がったわけだ。もちろん貴族同士の縁談なんて本人たちの意思なんて関係ないところで進む。

全く知らない同士ではなかったが、特に悪感情を抱くほどではなかった。ところがいざ縁談となってみると、『この男と結婚するのは嫌だなー』と思うようになる。繰り返すが貴族同士の縁談なんて本人の意志なんて関係なしだ。


悶々としていると東風(とうふ(う))に吹かれて飛んできた板切れの角に頭をぶつけた。豆腐の角じゃなくて良かった。この世界で豆腐を見たことないけど。それと死んでないけど


で、この衝撃で前世の記憶を取り戻したわけだ。


なるほど、ナイルとの縁談が嫌なわけだ。この男ではなく()()の男と結婚なんてご遠慮願いたいわけだ。

俺は自分と関係ないところでの男同士の恋愛に対して別段特別な感情はないが、自分のことなら話は別だ。男に恋愛感情を抱くことはないし、男から恋愛感情を向けられるのもご遠慮願いたい。

ましてや結婚の先にある子作りなんて・・・・


困った困った


と、思っていたところに件の婚約破棄発言である。こんな渡りに船なんてめったにあるものじゃない。全力で乗っかるしかないでしょう。


そんなわけで双方やらかした感じで有耶無耶なうちに婚約は円満解消となったわけだ。めでたしめでたし。


そう思っていたら、別の問題が発生した。ナイルの『真実の愛』のお相手が妹のユーフラティスだというのだ。次男であるナイルはもともと婿入り予定だったのだが、妹と結婚した場合も婿入りすることだろう。その場合俺の立ち場ってどうなる?


前世の記憶を取り戻した時『近代日本の文明の再現で大活躍か』と皮算用しかけたが、冷静に考えると文明の利器を使うことはできてもそれを再現するなんて無理な話だった。

もっと冷静になると、没落しているわけでもない貴族令嬢やっているから別に近代知識で無双なんてしなくたって豊かな生活ができるわけだ。


故郷の味が恋しくなって再現ということもない。社畜な前世の食生活はコンビニ弁当とインスタント食品、外食は味より早さ重視のチェーン店。一方現在は貴族食のスローフード。今のほうがよほど充実している。


要するにのんびりと異世界ライフを満喫していて万一の自体の備えなんて何もしてこなかった。


やべー、どうしよう。このまま実家に居座ったら気まずいぞ。かといって、別の男のところに嫁入りなんて元も子もない。別邸なんて流石にもらえないだろうなー


なんて、悶々としていたら奇跡再び。ナイルの兄つまり伯爵家の長男が「真実の愛に目覚めた」と宣わって出奔したのだ。

おまえら、兄弟揃ってそれでいいのか?(俺にとっては好都合すぎるくらい好都合だけど)


こうなると、ナイルが家を出るわけにはいかなくなり、急遽ユーフラティスが嫁入りする事になった。

すると、今度はわが子爵家の跡取り問題が浮上するわけだ。

冒頭の騒動の影響で俺の婿取りは困難、そも、俺が男と結婚なんて嫌だー状態なわけだ。


ここで一計を案じた。ユーフラティスに子供を複数生んでもらってそのうち何人かを俺の養子として迎い入れればいいじゃないか。我ながらグッドアイデア。各家一人だと不安が残るので最低二人づつ、4人は生んでもらおうと、両家の間で合意が形成された。

男との結婚には忌避感がある俺も子育ては女の仕事などという考えはないし、むしろ子供は好きだ。肉体的に女なんで母性本能もある、らしい。早々に引き取って子育て頑張るぞ。父親母親一人二役だ。楽しみになってきた。


妹よ、ユーフラティスよ、頑張って早くたくさん生んでくれ。

何なら正式に結婚する前に生んでしまっても大歓迎だぞ。さあ、早く甥っ子か姪っ子の顔(俺の養子)を見せてくれ

元婚約者よ、ナイルよ。君も頑張ってくれたまれ。

(主に俺のために)

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