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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

帳尻


 先輩よく来てくれました。まずはそこにかけてください。お茶でも飲んでリラックスしてください。


 僕は幸せに生きてきました。人に優しく生きてきました。そんな僕の話を聞いてください。


 僕の母は言っていました。


 人は人に親切にした分だけ幸せになれる。逆に人に悪さをすれば不幸がやってくる。そういう風に世の中はできているのだと。


 母が言っていたことを僕は信じています。世の中は良いことをすれば良いことが、悪いことをすれば悪いことが返ってくる。


 信じてるんです。幸福と不幸はその人の行動に対するもの。そうであるべき。それが世のことわり。世のルール。


 僕の信じるルールをあなたにはしつこく話しました。それが前提だと考えてもらった上で本題に入りたいんです。本題に入って良いですか?


 先輩は知ってますよね。最近、僕にあった不幸を。僕の父と母、そして付き合っていた彼女が皆、事故で死んでしまった。僕も、ほら。車椅子になってしまいました。


 なんででしょうね。僕も、僕の家族もこんな目に会うような悪人ではなかった。僕の彼女も事故で死ぬような悪人ではなかった。おかしいんですよ。これでは帳尻が会わないんです。バランスがおかしいんです。


 僕は考えたんです。僕たちに起きた事故はなんの罪がもたらしたものなのか。なんだと思います?


 過去の悪事ではない。現在の悪事でもない。だとすれば、これは未来の悪事に対する罰なんだ。


 先輩、僕は帳尻を合わせなければならない。過去の罰に対し未来の罪でバランスをとらなければならない。


 先輩。そろそろ体の自由が効かなくなってきたんじゃないですか?


 さっきのお茶にね。体がしびれる薬を入れておいたんです。そのうち心臓もしびれて動かなくなります。すでに何人かで試しています。


 先輩、あなたは僕にとって数あるターゲットの一人なんです。あなたは色々悪いことをやってきましたよね。知ってますよ。あなたはあなたの過去に対して罰を受けなければならない。それが今日なんです。


 あなたはあなたの帳尻を合わせなければならない。


 そして、ありがとう。先輩の命を奪うことで僕の帳尻もひとつ合うんです。父や母や彼女の人生を思うと、一人や二人や三人の命では足りないけれど、僕はこれからも人を殺します。


 ありがとう先輩。僕のために死んでくれてありがとう。僕のために殺されてくれてありがとう。


 聞こえてますか先輩。もう死んでしまいましたか?


 あの世で神様に言っておいてください。


 僕は必ず帳尻を合わせますよ。

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