表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

BL

最後の夜の天気予報

作者: 相沢ごはん

pixivにも同様の文章を投稿しております。


(ゆるふわ設定なので、細かいことは気にせずふんわり読んでいただけると助かります)

 強く繋いだ夜道の手が、とても冷たいので大和は泣きそうになった。泣きそうになっただけで、しかし大和は泣かない。これは、悲しいことなんかじゃない。喜ぶべきことなのだ。だから、泣くなんてことはできない。だが、夜道は気づいている。大和の気持ちに気づいている。ぎゅっと固く繋いだ手のせいで、大和の気持ちは夜道にだだ漏れなのだ。

 ふたりで、とぼとぼと夜の道を歩きながら、山の頂上の展望台を目指す。夕方の天気予報でも、今夜は晴れると伝えていた。夜空を見上げると、確かに星は音がしそうなくらいに瞬いている。視線を少し落とし、木々が風にざわざわと揺れるのを眺めて、

「聞こえるのか?」

 大和は夜道に尋ねた。

「はい。聞こえます。良かった、母船はすぐそこまできています」

 夜道は目を閉じて、頷いた。仲間との緊急通信に成功したようだ。とうとう帰ってしまうんだな、と大和は思う。大和は夜道の手を、ぎゅうぎゅうと握る。夜道は少し困ったように微笑んだ。

「大和」

 夜道が大和の名前を呼ぶ。

「大丈夫ですよ」

 なにが大丈夫なのか。軽くそんなことを言う夜道に対して、大和は半ば八つ当たりのように腹を立ててしまう。

「大和は大丈夫です」

 夜道は、もう一度言った。

 大丈夫なんかじゃない。おまえがいなくなったら、俺は。俺は?

 いや、大丈夫なのかもしれない。大和はそう思い直す。夜道がいなくても生きていける。今までだって生きてきたのだ。

 だけど、でも、だって、夜道がいないと寂しい。寂しくても人は生きていけるけど、寂しい思いをしながら生きていくなんて、きっとしんどい。

「大丈夫ですよ、大和」

 夜道は笑っている。夜道は寂しくはないのだろうか。そう考えて、思い直す。夜道が寂しかったのは、それは今までのことだ。仲間とはぐれて心細かった今までが寂しかったわけで、夜道はこれから帰るのだ。仲間のいる船へ。自分の家へ。やっと帰ることができるのだ。

 大和は、下唇を噛んだ。夜道がそれを見て、手を繋いでいないほうの指で大和の口をこじあける。

「また、血が出ます」

 わかっている、わかっている、わかっている。少しイラつきながらそう思ったが、言葉が出なかった。代わりに嗚咽がもれる。堪えようとすると、咽喉がひくひくと引き攣った。

「やまと、やまと」

 夜道が幼子をあやすようにやさしく呼ぶものだから、どんどん泣けてくる。うーうーと唸りながら、大和は泣いた。泣かないつもりだったが、もういい。どうせ夜道には、全部わかっているのだ。大和は、涙をこらえることを諦めた。生ぬるい滴が、たらたらと頬を伝う。

「やまと、やーまと」

 夜道は、唄うように名前を呼び続ける。繋いだ夜道の手は、まるで金属のように、やはり冷たい。


   * * *


 大和が夜道と初めて出会ったのは、新歓コンパの帰り道だった。入学したての大学で、何かサークルにでも入らないと友人がひとりもできないような気がしていた大和は、意欲的にそういうコンパに参加していた。要するに、ひとりで過ごす夜が寂しかったのだ。

 その日も帰りが遅くなった。駅からの道を大和はひとりで歩いていた。もう夜も更けて、ぽつぽつと点いている街灯の光がぼんやりと心細かったのを覚えている。

 ふと、目の前に影が過ぎった。立ち止まると、銀色の猫がいた。猫は、こちらをじっと見つめている。

「にゃあ、にゃあ」

 言いながら、大和はその猫に近づいた。一瞬びくりと反応しただけで、猫は逃げなかった。

「この辺に住んでんの?」

 猫に手を伸ばす。猫はおそるおそる大和の手に近づいてきた。抱き上げても全く嫌がらない。

「いい子だ。慣れてるね。飼い猫かな」

 大和がそう呟くと、猫は大和の口もとをザリザリと舐めた。

「いてて、いていて」

 猫の舌は普通に痛い。大和は思わず猫を抱く手の力を緩めてしまった。猫は、ストンと地面に下り立ち、ぷよぷよとスライムみたいにその銀色の形をくずした。そして、ゆるやかに、波打つようにして変形し始めたのだ。

 大和は驚きのあまり、声が出なかった。ついに出会ってしまった、というようなことを考えていたように思う。ゆうれいか妖怪か。なんだかわからないものだが、とにかくこれは猫でもヒトでもないものだ、大和はそんなふうに思った。

 銀色のスライムは、どんどんどんどん盛り上がっていって、それは大和と同じくらいの大きさになった。というよりも、それは大和だった。耳の上で切りそろえられた短い髪の毛、奥二重のちんまりとした目、薄茶のそばかすのある白い頬。自分だ、と大和は思う。猫が形を変えて、大和と全く同じ形になったのだ。

 茫然と目の前のそれを見つめる大和に、目の前のそれが言った。

「こんばんは。はじめまして。おれ、わたし、ぼく、シキベツする、※※※です。どうぞ、よろしく」

 機械音のような声。どうやら名前らしいと思う単語は、すごいスピードの妙な連続音で全く聞き取れなかった。未だ言葉の出ない大和に、大和モドキはにっこりと笑う。言葉は変だが、自分よりも笑顔が上手だ。のんきにも、そう思ったのを大和は覚えている。

「あなた、きみ、は、しらない、おれ、わたし、ぼく、に、クツウ、を、おしらせ、しません。きれい、な、ひと、です。わたし、ぼく、しあわせ、です」

 よく意味がわからなかった。後になって聞いてみたところ、「きみは得体の知れない僕にも決して乱暴をしない、そんなきれいな心を持っているんだね。きみみたいな知的生命体に出会えて、僕は本当に運が良かった」という意味だったらしい。うそつけ、と大和は今でも思う。本当にあれがそういう意味か?

 それが、大和と夜道との出会いだった。

 目の前の大和の形をしたなんだかわけのわからない生き物は、唐突に大和の手をぎゅっと握った。ひんやりと冷たい両手が、大和の右手を包み込む。なんだか、何かを吸い取られるんじゃないかと怖かったが、まさにその恐怖のせいで、大和の身体はコチコチにかたまってしまい、動けなくなっていた。

「きみの情報をもらいました。きみを識別する記号は、イマニシヤマト」

 大和モドキは言った。さっきよりも言葉が格段に流暢になっている。

「僕たちは、皮膚接触によって相手の情報を読み取ることができます。一度に少しずつですが」

 やはり吸い取られていた。情報を吸い取られていた。大和は驚愕する。僕、ということは、こいつはオスなのか。それに、僕「たち」? こいつみたいなのが、まだたくさんいるのだろうか。大和は動揺した頭でぐるぐると考える。

「あああ、あああなた、あなたは、なな何者なんですか」

 震える声で、大和はやっと尋ねた。

「そうですね。きみたちの言葉でいうところの……」

 そう呟いて、大和モドキは大和の唇に自分の唇を重ねた。その行動が、あまりにも自然すぎて、大和は避け損なってしまった。

「な、な、な、なにを」

 わけがわからなくてまた言葉を失う大和に、「すみません。先程も失礼してしまいましたが、手を握るよりもこうした粘膜接触のほうが、情報がより鮮明なのです」と大和モドキは言った。

「僕は、きみたちの言葉で言うところの、地球外生命体。いわゆる、宇宙人です」

 彼はにっこりと笑って言う。やっぱり、大和よりも笑顔が上手い。

「う、うちゅ、宇宙人?」

「そう、宇宙人です」

「すごい。はじめて会った……」

 大和が呟くと、彼は言う。

「きみの心は、とっても純粋ですね」

 大和が反応できずにいると、

「※※※は、僕を識別する記号、名前です。翻訳します」

 彼は呟き、また大和の唇を奪おうとするので、大和は咄嗟に避ける。危なかったが、今度はちゃんと避けることができた。

「だめですか」

 彼は残念そうに言って、大和の手を両手で握った。

「僕の名前に該当するニホンゴが見つかりませんでした」

 彼は勝手に続ける。

「好きに呼んでいいです。ニックネームというものがあるのでしょう」

 今、こうして手を握られている間にも、彼は大和の情報をどんどん読み取っているのかもしれない。おそろしさがぶり返し、大和は思わず彼の手を振り払った。

「ニックネームを」

 動じない彼は言う。ニックネームをつけなければ、解放してもらえない雰囲気だ。

「よ、夜道」

 咄嗟に大和は言った。

「夜道で出会ったから、夜道」

「ありがとう。いいニックネームです」

 夜道は、うれしそうに笑う。その笑顔に、大和は少しだけ警戒心を解いた。

「あの、落ち着かないので、姿を変えてもらってもいいですか」

 これは自分ではないとはわかっているのだが、自分がふたりいるみたいで、やはりなんとなく気持ちが悪い。

「どういう姿がいいですか。さっきの猫さんのような……ああ、でも、それだと僕はきみの情報を読み取ることができますが、きみは猫さんの言語を理解することができないので、意思疎通に不便です」

 状況を理解しようと夜道の言葉に耳を傾けるのだが、頭のどこかがこの状況を拒否してでもいるのか、言葉がどうも上滑りだ。言語としては理解できるのだが、意味が入ってこない。

「どういうこと?」

 大和は、素直に疑問を口にした。

「僕たちは、緊急の場合を除き、皮膚接触によりコミュニケーションを取ります。なので、僕がきみの意思を理解するのに言語は必要ありません。触れるだけでいいのです。しかし、きみは僕たちではないので、僕たちに接触してもきみが僕たちの意思を理解することはできません。今このようにきみに通じる言語を話すことができているのは、僕がきみと同じ種に擬態しているからです。同じ形なので同じ音で話せます。猫さんと同じになってしまえば、猫さんの音でしか話せません」

 夜道は流暢にべらべらと喋り、急に言葉を止める。そして、少し首を傾げた夜道は、素早い動作で大和を引き寄せ、その下唇にやんわりと噛みついた。ここで、大和の意識は暗転してしまった。


 目が覚めるとアパートの自分の部屋で、大和は横になっていた。その布団の傍らに夜道がいる。いつの間に帰ってきたのだろう。そう思いながら、大和は横になったまま夜道の顔を見る。

「気分はどう、大和」

 夜道は親しげな口調で言った。懐かしい顔だ。誰かに似ている気がする。夜道、と呼ぼうとして、大和は、おかしい、と直感的に思った。夜道とは、さっき出会ったばかりではなかったか。しかし、夜道と大和は親しい友人で、大学入学時から、この部屋でいっしょに暮らしていたような記憶が、なぜかある。

「変だ」

 大和は言った。

「どこが変?」

 夜道が尋ねる。

「俺とおまえは、今日会ったばかりだよな?」

「そう思いますか?」

「思う。けど、おまえのことを前から知っているような気もするんだ」

 頭でも打って、記憶がどうかなったのだろうか。不安がじくじくと拡がり始める。わけがわからない。少し泣きそうになっていると、夜道は大和の手をぎゅう、と握り、それから大和の唇に自分の唇を重ねた。下唇をやんわりと噛まれる。大和はされるがままになっていた。避ける気力がなかったというより、避けるという行動を思いつけなかった。

「ごめんなさい」

 夜道は言った。

「失敗しました」

「失敗?」

 わけがわからないまま大和は、ただオウム返しに問い返す。

「さっき、僕は大和の情報に細工をしました。僕が昔からの友人であるという情報を、無理矢理ねじ込んだのです。でも、失敗しました。大和の心は外側からのガードがかたくて、うまく細工ができなかったみたいです」

「細工って、おまえ」

「どうですか? まだ僕が昔からの友人のような気がしていますか?」

「あ、あれ……?」

 頭の中のもやもやが晴れていくようだった。自分は、今日初めて夜道と出会った。夜道は最初、猫だった。それから、夜道は大和になった。夜道は自分のことを宇宙人だと言った。大和は夜道にニックネームをつけた。記憶が鮮明に蘇る。変だと感じた部分が、直っている。

「今、もとに戻しましたので」

 夜道は言った。

「なんで、細工なんて」

 こいつは他人の情報を読み取るだけでなく、記憶をいじることもできるのか、と思うと背筋が冷たくなる。おそろしい。

「しばらくここに置いてもらおうと思ったのです。実は僕が乗ってきた小型船は壊れてしまったみたいで、母船に連絡が取れないのです。緊急通信を試してみますが、いつ母船と連絡が取れるかわかりません。なので、問題が解決するまでの間、ここでお世話になろうと思いました。だけど、いくら大和が地球外生命体の存在を素直に認めたからと言って、いっしょに暮らすとなると話は別でしょう。だから、友人になってしまおうと思いました。大和の持つ情報にそういう記憶を埋め込んでしまえば、大和に不快感を与えず、いっしょに暮らすことができると考えたのです」

 理屈はわかるが、やりかたが少し強引すぎやしないか。おそろしいを通り越して、だんだん腹が立ってきた。

「その姿は?」

 大和は、むっとしながら尋ねる。夜道は、もう大和の姿ではなかった。知らない誰か。でも懐かしいような気がする誰か。そんな姿をしていた。

「大和の持つ情報と、こちらを参考に形成しました」

 夜道は布団のわきに置いてあった高校の卒業アルバムを手に取り、ページを開いて見せた。そこには、大和が高校生の頃に好きだった同級生の写真があった。

「大和は、こちらの方を大変好ましく思っているようでしたので」

 言いながら、夜道はその同級生の写真を示す。確かに、大和は彼に好意を抱いていた。夜道に手を握られたりキスを(あれはキスなのか?)されたりするだけで、こんなことまでばれてしまうなんて。驚きとおそろしさと、やっぱりこいつ宇宙人なんだという納得が入り交じった、複雑な感情が大和の中をマーブル模様に渦巻いている。

「この方の外見を参考に、大和と同年代の男性の姿を形成してみました」

 そう言われてみると、確かに夜道の外見は、どことなく彼に似ていた。だから、懐かしいような気がしたのだろう。夜道は涼しい顔で続ける。

「僕は大和よりも、もっとずっと長く生きていますが、僕と同じくらい長く生きている知的生命体は、この星にはいないようでしたので、大和と友人になりやすい同年代の姿がベターかと思いまして」

 大和は言葉も出ない。人間の外見が他人に与える影響の大きさについて考えてしまう。夜道を「人間」と言い切ってしまうのは少し抵抗があるが。

「夜道の、その、本来の姿っていうのは、あの銀色のどろどろした感じの?」

「そうです。我々は擬態という性質を持っている種です。擬態していない状態を本来の姿というのであれば、あの銀色のどろどろがそうです」

 夜道は言いながら大和の手を握る。そして、「スライム、というのですか?」と言ったものだから、大和は慌てて手を引っ込める。

「だめですか」

 夜道は残念そうに言う。

「ここにはそういう、情報を読み取る能力を持ったやつがいないから、慣れていないんだ」

「わかります」

 夜道は頷いた。本当にわかってんのか、と疑わしく思う。

「でも、僕は情報がほしいのです。僕はここのことを、ほとんど知りません。予備知識はあったつもりですが、実際にここに降り立ってみると、随分と勝手が違いました。この星の主導権を握っている種を猫さんだと勘違いして、最初は彼に擬態していました。そうしたら、大和に捕まりました。その時に大和から読み取った情報で、間違ったこっちだ、と思ったくらいです」

 そういえば、あの猫に口もとを舐められた。あれも情報を読み取られていたのか。

「全く知らない土地では情報が必要不可欠です。この土地を知って、不安をなくすために」

 夜道は言った。大和はその時、初めて気がついた。夜道は、不安だったのだ、と。

「わかった。いいよ」

 大和は言った。

「迎えが来るまで、いっしょに暮らそう」

「ありがとう、大和」

 地球の言葉で礼を言い、夜道は、大和が好ましく思っている顔で微笑むのだ。


   * * *


「夜道は、食べなくても平気なの?」

 夜道といっしょに暮らし始めて数日、大和は夜道が食事をしているところを見たことがなかった。食べる? と勧めても、「僕はいいです」と言うだけなのだ。

「そうですね。数年は何も食べなくても平気です」

 テレビで夕方の天気予報を観ながら夜道がそう言うので、大和は驚き、「数年?」と問い返す。

「僕たちは、はるか昔から星から星を転々と移動しています。立ち寄った星々の液体や食べものが身体に合うかどうか不明な内は、何も口にしないという習慣ができています。そのため、身体がそんなふうに進化したのでしょう」

「へえ、便利だな」

 大和は素直に感心する。夜道は大和の手を取り、その指に、ちゅむ、と口づける。そして、

「止むを得ず、ですよ」

 新しく仕入れた言葉を口にする。

 夜道は銀色のスライム状になり洗面器の中で眠る。いっしょに暮らすと決めた当初、そう決めたはいいが、布団は一組しかない。買うにしても一人暮らしを始めたばかりで金も持ち合わせていない上、この狭い部屋では、布団をもう一組敷くことも不可能だ。しかし、やはりいっしょの布団で眠るのは多少の抵抗がある。悩んでいたら、

「僕は何か入れものがあれば、そこで休みます」

 畳の上、向かい合って座っていた夜道が、事もなげに言った。

「入れものとは?」

 それが具体的にどういうものかわからず、棺桶のようなものを想像しながら大和は尋ねた。

「入れものとは」

 夜道は大和の言葉をそのまま口にし、正座をしたまま、胡坐をかく大和へとにじり寄り、両手で大和の肩を掴み固定すると、その唇に自分の唇を重ねる。にゅるん、と舌らしきものが入ってきて、大和は慌ててしまう。にゅくにゅくと口内の粘膜をやわらかく撫でまわしている舌は、しかし、愛や快楽とは無関係の、情報取得のための手段なのだ。

「入れものとは、バケツや洗面器です。僕は、それらの中で休むことができます」

 夜道はにっこりと笑って言ったのだ。慣れない、と大和は思う。夜道の不安を軽減してやりたい、そう思うからこそ、この行為を受け入れようとはしているが、やはり慣れない。最近では、少し気持ちよくなってしまって、もっとしてほしいと思うようになってしまった。そんな心の内が、夜道にはまるわかりなのではないか、と大和は夜道に口づけられるたびに戦々恐々としているのだが、夜道はそれに関しては一切何も言わなかった。


   * * *


「僕は、大和と外へ行くことができますか?」

「へ?」

 いっしょに暮らし始めて数週間は経った朝、夜道が唐突に放った言葉に、大和は間抜けな声を返してしまう。

「大和が毎日どこへ行っているのか、そして、それがどんなところなのか、僕は見てみたいのです」

 洗面器から銀色のままどろどろと這い出し、人間の頭を形成しながら夜道が言う。そして完全に頭から足まで人間に擬態すると、流れるように自然な仕草で大和の身体を引き寄せ、その唇に口づけるのだ。

「大学。大学へ行ってみたいです」

 夜道は言った。

「わかった。まあ、その姿なら目立たないだろうし、いいよ」

 大和は首肯する。大学では、友人は未だにできない。それなので、夜道が誰であるかとか、自分とはどんな関係だなどと、誰かに説明する必要もないことを思うと、悲しくも気楽ではあった。

 スライスチーズを載せたトーストとトマトジュースだけの簡単な朝食を済ませ、大和は通学用のトートバッグの中身を確認する。夜道は、テレビの朝の天気予報を観ている。

「じゃあ、行こうか」

 支度を終え、夜道に声をかける。夜道はテレビを消し、嬉しそうに立ち上がると、大和のうしろにくっついてくる。玄関で靴を履く大和を見ながら、夜道は自分の裸足の足をどろっと崩れさせ、大和のものと同じスニーカーを形成した。

「うわあ、おそろいかあ」

 呆れながら言う大和に、「おそろい?」と夜道は疑問符を呟くと、さっそく大和に口づける。わからないことがあると、すぐにこういうことになる。またかよ、と思いながらも、大和はそれを受け入れる。ちゅくちゅくと音をさせながら吸われる舌の感覚に耐えられなくなり、大和は思わず夜道の胸元を拳でこつんと殴る。

「夜道、やりすぎ」

 荒く呼吸をしながら窘めると、

「ごめんなさい」

 わかっているのかいないのか、夜道はあっさりと謝るのだ。そして、「おそろいは、仲良しの証拠です」と、にっこりと笑って言った。

「それ、本当に俺から得た情報なわけ?」

「そうですよ。なぜ?」

 不審そうな大和に、夜道は無邪気に返す。


 大学へは徒歩二十分程だ。その道すがら、あれはなんだこれはなんだと夜道はきょろきょろふらふらと落ち着きなく、隙あらば大和から情報を得ようと顔を近づけてくるものだから、大和はそれを避けるのに難儀した。

「夜道、ここは外だから。粘膜から情報を得るのは家の中だけにしろ」

「そうするのがこの星のルールですか?」

「そう、それ。ルール」

「とっても不便です」

「仕方ないだろ。そういう習慣がここにはないんだから。それに、ああいうのは、人に見られたらだめなんだよ」

「死にますか?」

「いや、死にはしないけど……」

 突然、夜道が極端なことを言い出したので、大和は驚き口ごもってしまった。そして、ぐるんと思考が渦巻き、過去に遡ろうとする。死にはしないが、社会的には殺されるに等しい。中学時代のあの出来事を思い出してしまい、大和は思わず胃の辺りを手で押さえる。

「大和?」

 夜道が心配そうに大和の手を取ろうとする。それを避けながら、

「大丈夫、なんでもない」

 大和は口角を上げ、笑顔を作って見せた。きっと笑顔と呼べるかどうかもわからない下手くそな表情になっていたはずだ。


 大学構内でも、夜道はそわそわと落ち着きがなかったが、授業が始まると、大和の隣できちんとおとなしくしていた。周りの若き地球人たちがそうしているので、ただ単に真似たのだろう。

「漱石と言えば、『月が綺麗ですね』の逸話が有名ですが、しかし、これは事実としての裏付けは取れていません。似たような話で、『三四郎』にこのようなエピソードが出てきます」

 そう言って、教授は黒板に短い英文を書いた。

 Pity's akin to love.

「これは諺ですね。三四郎の友人の与次郎が日本語に翻訳したんですが、ええと、そこのあなた」

 授業は、筋道と少し逸れ、雑談に近い内容に入っていた。

「僕ですか?」

 夜道がきょとん、という感じに答える。

「与次郎は、どんなふうに翻訳したのでしょう。教科書にも書いてありますよ」

 しまった、こういうことが起こるなんて想像していなかった。大和は慌てる。夜道は背筋をピンと伸ばし、ノートこそ取っていないもののにこにこと楽しそうに授業を受けていた。やる気のある学生だと思われたに違いない。

 大和は教科書のその部分を夜道に指で示してやる。夜道は首を傾げ、困ったように大和と教授を交互に見て、そして、素早く大和に口づけたのだ。

「う」

 大和も驚いたが、講義室内もざわついた。そのざわざわをどこか遠くに聞きながら、大和は、そうか夜道はまだ字が読めなかったか、と変な納得をしていた。

「可哀想だた惚れたつて事よ」

 大和を解放した夜道は、はつらつとした口調で教授に言った。大和から情報を読み取ったのだ。

「そ、そうですね。与次郎はそう翻訳して廣田先生に下劣の極だと叱られるのですが……」

 教授は先刻の出来事を見なかったことにしたらしい。つらつらと喋りながら黒板にチョークで文字を書いていく。しかし、講義室のざわついた空気は収束しそうにない。起こってしまったことは、なかったことにはならないのだ。居たたまれなくなり、机の上のものをバッグにしまうと、大和は立ち上がり出口へと向かう。

「大和?」

 背後から夜道の声が聞こえたが、振り返りもせずにその場を後にした。

「大和!」

 夜道が追いかけてきたのがわかり、小走りで逃げるように廊下を進む。

「待ってください、大和」

 トイレに逃げ込んだところで、夜道に手首を掴まれた。

「もう、いやだ!」

 大和は思わず言ってしまう。

「俺にさわるな!」

 その言葉は以前、悪意と共に自分に突き刺さった言葉そのもので、大和は苦い気分になった。

 なあ今西、あいつのこといつも見てるけど好きなの? ち、ちがっ……。うわあ、顔真っ赤。わっかりやす。へえ、そうなんだ、俺ホモって初めて見た。えーマジで? 今西ってホモなん? 聞いたかよ、今西がおまえのこと好きなんだって。マジかよ、キメぇ。近寄んなホモ野郎。今西に近付くと襲われるって。なんだよ、キモイんだよおまえ。おれにさわんな。

 無遠慮な笑い声と共に脳内を渦巻くのは、思い出したくない記憶だ。できれば、なかったことにしたい。けれど、起こってしまったことはもう消えてはくれない。だから、せめて自分は忘れてしまえるように努力していたのに。

「大和」

 夜道は大和の名前を呼ぶ。また口づけられるのだろう、と抵抗の構えを示していたら、予想に反して夜道は大和の身体をぎゅっと抱きすくめただけだった。本来ならぬくもりを感じるはずの行為なのだが、夜道の身体がひんやりと冷たいために、大和はなんだか落ち着かない気分になる。しかし、それでも、この抱擁は、大和の昂った神経を鎮めることには成功した。大和は、夜道の背中に手を回す。

 高校に入学しても、親しい友人はできないだろうと思っていた。中学の頃の失敗のせいで広まってしまった噂は、高校に進学しても大和に付きまとっていた。男子からは遠巻きにされ、女子からは好奇の目で見られる孤独な毎日。それが三年間続くものだと覚悟してはいたが、やはり寂しかった。そんな時に声をかけてくれたのが、夜道が人間の姿を形成する際に参考にした彼だった。彼は、あんなのただの噂だろ、と大和に付きまとういろいろを一蹴し、普通の友人のように接してくれた。大和は次第に親切な彼に恋心を抱くようになっていたが、その想いを口に出すことはなかった。絶対に知られてはならないと思っていた。もし知られてしまったら、彼も大和にひどいことを言うかもしれない。キモイ、さわるな、そんな悪意を含んだ言葉が、彼の口から発せられるかもしれないことが怖かった。そして大和は、彼への想いを隠し通したまま高校を卒業し、知り合いが誰もいないであろう大学を選んで進学したのだ。

「大和、可哀想です」

 夜道はただ一言、そう言った。その瞬間、考える間もなく大和は、密着していた夜道の身体を突き飛ばしていた。ふらついた夜道は、水色のタイルの壁に頭と背中をぶつけたが、その背中がどろっと変形しクッションの役割を果たしていた。シュールな光景ではあったが、自分の咄嗟の行動のせいで夜道が怪我をせずに済んだことに大和は安心する。それと同時に、夜道の言った「可哀想」が胸に突き刺さって痛い。

 知られた、と思った。ずっと心の奥底に閉じ込めていた記憶を、掘り起こされてしまった。夜道の言葉により、大和が守ってきた何かが、いま粉々に砕けてしまった。

「おまえ、おまえはいつもいつもそうやって、人の知られたくない過去までほじくり起こして、何がしたいんだよ! 俺の心は俺だけのもんだ! 勝手に読んで勝手に可哀想がるな!」

 ダムが崩壊したかのようにあふれ出した涙を、大和はどうにも止めることができないでいた。

「でも」

 夜道は戸惑い、困ったように言った。

「『可哀想』と思うのは『惚れた』ということで、『惚れた』というのは、『好きだ』ということです」

 淡々と落ち着いた声で夜道は言う。

「僕は、大和が好きです。何か間違っていますか?」

 可哀想だた惚れたつて事よ。

 大和は、先程、飛び出してきたばかりの授業のことを思い起こす。ずるい、と大和は思う。そんなふうに言われたら、何も言えなくなってしまう。

「大和、愛しています」

 そう言って夜道はもう一度、大和を抱きすくめ、そっと口づけた。それを受け入れながら、どっちだろう、と大和は思う。これは、どっちなのだろう。親愛を示す行為なのだろうか、それとも、いつもの情報収集なのだろうか。そもそも、夜道はその言葉をちゃんと理解して遣っているのだろうか。大和にはわからない。わからないので、余計に悲しくなってしまう。

 夜道の身体はどろっと銀色に溶けはじめ、大和の身体を自分に取り込もうとでもするかのようにゆっくりと包み込み始めた。冷たさの中で、自分が自分でなくなるような感覚を覚えて怖くなった大和は、

「夜道、やめろ。誰かきたらまずい」

 まだその形を変えていない夜道の耳もとで言った。

「今日はもう帰りましょう、大和」

 夜道はそう言った。

「大和はきっと疲れています」

「そんなことない。大丈夫だよ」

 そう言ってしまったあとに、自分が確かに疲労感を覚えていることに気付き、

「それも、俺から読み取った情報?」

 思わず、大和は嫌味な声色で言ってしまう。夜道は困ったように笑っただけだった。


   * * *


 次の日、おそるおそる大学へ行った大和は、自分が遠巻きにされているのか、それともいつもどおりの状況なのか判断ができないでいた。もともと友人のいなかった大和であるので、ひとりでいることが普通になってしまっている。しかし、「昨日のあれ、なんだったの?」と尋ねてきた学生が一人だけいた。同じ学部の学生だが、名前は知らない。

「いや、あいつ地元の友だちで、いま遊びにきててさ。大学行ってみたいって言うから連れてきたんだけど、ちょっとふざけすぎだよな」

 下手くそな作り話に、下手くそな作り笑いをして見せると、彼は、「びっくりしたよー」と笑って、じゃあね、と手を振り行ってしまった。意外となんでもないものなのかな、と大和は肩の力を抜く。


 夕方、大学から戻り、

「夜道、提案がある」

 無精して腕を溶かして伸ばし、テレビのリモコンを絡め取ろうとしていた夜道に大和は言った。

「なんでしょう」

 夜道はリモコンを取ることを諦め、正座をし大和に向き直る。

「もう、今までみたいにいちいち粘膜接触で情報を得ようとするな。俺に聞いてくれたら答えてやるから。どうせ、俺が知ってること以上のことはわかりっこないんだろ?」

「そうですね。了解しました。郷に入りては郷に従え。この星のコミュニケーションの取り方を覚えなくてはいけません」

 夜道は、うんうんと頷きながら大和の提案を受け入れた。

「夜道、おまえ難しい言葉を知ってるんだな」

「大和に教えてもらいましたので」

 にっこりと人の好さそうな顔で微笑む夜道は、もう大和以上に人間であるような気がする。十八年と少し、地球で暮らしてきたものの、大和は未だに地球での生き方がよくわからない。夜道のほうが、よっぽどここで生きていくのに向いているように思える。適度に強引で、適度に無神経で、そして勉強熱心で素直な夜道は、きっとどこでも上手くやっていけるだろう。

「ほら、リモコン。天気予報観るんだろ」

「ありがとう、大和」

 リモコンを夜道に手渡して、大和は夕飯の支度を始める。


 それ以来、夜道はおとなしくしている。些細なことなら、大和に言葉で尋ねてるように心がけているようで、夜道とキスをする回数は格段に減った。大学へ行きたいとも言い出さない。しかし、時々ふらっと一人でどこかへ出かけているようだった。大和が大学から帰っても、夜道が部屋にいないことが増えた。

「夜道、俺がいない時、いつもどこに行ってんの?」

 布団に入り、電気を消して目を閉じた大和は、布団の脇に置かれた洗面器の中の夜道に尋ねる。

「ちょっと、情報収集に」

 夜道が答える。きっと、口周りと声帯のあたりだけ人間のものに変形させているのだろうと想像すると、なんだかおかしい。

「夜道は、ずっとここにいることはできないの? 絶対帰らなくちゃいけない感じ?」

 どうしてそんなことを聞いてしまったのか、大和自身にもよくわからない。心のどこかで、いつか夜道と離れることを思い、寂しくなってしまったのかもしれない。たとえば、夜道が毎日観ている天気予報。最初は気にも留めていなかったが、最近は夜道が天気予報を観ていると妙に胸がざわつく。夜道が帰るために必要な情報を集めているのかもしれないと思うと、なんだか苦しくなってしまうのだ。

「そうですね。帰るというよりも、僕たちは次の星へ行かなくてはいけません」

「次の星?」

「実は、僕たちの故郷と呼ぶことのできる星は、もうありません。とても小さな星でした。そのため隕石がぶつかった時、その半分が簡単に、本当にとても簡単に砕けてしまいました。一瞬のことでした。もう、ずいぶんと昔のことです。あとの半分には生き残りが数十名いました。しかし、そこはもう住めるような状態ではなかったのです。生き残った数十名を乗せて脱出した宇宙船が、現在の僕の家になります」

 夜道の話す内容が、思いの外ショックなものだったため、大和は言葉を失ってしまう。

「僕たちは安住の地を探しています。母船から離れ、小型の調査船で行く先々の星の状態を調査をするのが、僕の仕事です。この星へ降りたのも仕事のためでした」

「夜道、おまえ、社会人だったの? そんな大変な仕事をしてたのか」

 やっと出た言葉は、なんだか間の抜けたものになってしまった。

「ええ、今もしています」

 夜道は少し笑ったようだった。

「最近は、大和が出かけている間、山や林を散策し、情報を集めながら僕たちが暮らせる場所を探しています。状態的にはこの星は合格ラインです。でも、食べもののことはまだよくわかりません。昔、不用意に口にしたもののせいで死んでしまった者が数名います。僕たちは基本的に長生きですが、外部からの影響にはあまり強くありません。せっかく生き残ったのに、そんなことは二度とあってはいけません」

「えらいなあ、夜道は」

 薄明りの中、夜道はとろとろと人間の形を形成し、そう呟いた大和の身体に布団の上から圧し掛かってきた。

「大和、ここでの暮らしはどうですか?」

 唇がくっつきそうなギリギリの距離まで顔を寄せ、夜道はささやくようにそう問いかけてきた。夜道がどういうつもりなのかわからず、大和は少し怯む。最高だ、とでも言えば、夜道はずっとここにいてくれるのだろうか。一瞬、そんなことを考えてしまった。それとも、シンプルにここにいてくれ、と泣いてすがれば、夜道はそうしてくれるのだろうか。あの日、大学のトイレで夜道が言った、「愛しています」が本当ならば。さらにはそんなことまで考えてしまい、自分の浅ましさに情けなくなる。

「楽しかったり、つらかったり、いろいろだよ。けど、それはどこにいたってそうだろ?」

 大和は結局、そう無難な答えを返した。

「ええ、そうですね」

 夜道はそう言い、「おやすみなさい」と、どろりと洗面器の中に戻ってしまった。

 ここが、この地球が、夜道たちの安住の地になればいいのに。大和の右目から、涙がこめかみに伝う。


   * * *


「それを食べてみようと思います。ひとくちもらってもいいですか?」

 朝、大和がトーストを食べていると夜道がそう言った。

「え、でも」

 大和は躊躇ってしまい、皿の上に戻した齧りかけのトーストに視線を落とした。市販のピザソースを塗った食パンにスライスチーズを載せて、トースターで焼いたものだ。一度にこんなにたくさんの成分を摂取しても大丈夫なのだろうか。大和は、先日夜道から聞いた話を思い出していた。不用意に口にしたもののせいで死んでしまった仲間の話だ。

「大丈夫なのか?」

「挑戦してみないとわかりません。実は、何か食べないと体力が足りないかもしれないのです」

 夜道は言う。人間だって食べないと力がでないもんな、と大和は納得する。宇宙人とはいえ、生きているのだから夜道だってそうなのだろう。

「食べなくても死にはしませんが、緊急通信に思ったより時間がかかってしまいました」

「緊急通信?」

 その響きに、大和の気持ちはざわっと乱れた。

「大和、いいですか?」

 夜道が唐突に言う。

「へ?」

「キス」

「あ、うん」

 夜道は大和ににじり寄ると、その頬を両掌で挟み、ゆっくりと丁寧に唇を重ねる。ぬるりと口内に入ってきた冷たい舌に、大和の舌は甘く痺れた。夜道は比較的すぐに唇を離そうとしたが、大和はもっとしてほしい、と夜道の首の後ろに腕をまわし、繋ぎとめた。夜道は何も言わず大和の身体を抱きしめると、さらに深く口づける。久しぶりのこの行為が気持ちよくて、大和は夜道にしがみつき、もっともっとと無言のままにねだってしまう。

「僕たちは、接触せずとも思念を送り合うことができます」

 長い長いキスのあと、夜道は言った。なんの話をしていたのか忘れかけていた大和だったが、そうだ緊急通信だ、と思い出す。

「しかし、思念を飛ばすのはとても体力が必要なのです。なので、この方法は緊急の時にだけ、と決められています。ところで現在は緊急の時です。今日まで、晴れた日には思念を飛ばしていましたが、そろそろ疲れてきました。何か食べないと持ちません」

「晴れた日だけ?」

「地球に降りて初めて知りましたが、ここでは晴れた日でないと、うまく思念を飛ばせないのです」

 緊急通信を試してみる、と、そういえば、初めて会った日に夜道は言っていたような気がする。ずっと試していたのだろう。晴れた日は毎日。

「通信は繋がりそうなのか?」

 尋ねると、「はい」と夜道は笑顔になった。

「上手くいけば、今晩にでも。母船が近くにきているのだと思います。ひそひそとした気配だけですが、わかります。きっと母船のほうにも、僕の気配が伝わっていると思います」

 うれしそうに話す夜道に、大和は、「そうか」と短く答えた。

「よかったな」

 そう付け加えると、「本当ですか?」と夜道が言った。

「え?」

 ふいを突かれ、大和は問い返す。

「本当に、そう思っていますか?」

 夜道が大和の真意を確かめてくるというのは初めてのことかもしれない。いつもの夜道ならば、こんなふうに話題を蒸し返して本音を言わせるようなことはしない。それが夜道なりの最低限の礼儀なのだと、大和は思っていた。大和が本音を隠そうが言葉にしようが、夜道にはわかっているはずなのだから。

 何も言えずにいる大和の頭を、夜道はくしゃくしゃと撫で、そして、「ごめんなさい」と言った。

「今のは、土足でした」

 夜道の妙な言い回しにも、大和はやはり何も言えずにいた。夜道が母船に帰ってしまう。次の星へ行ってしまう。夜道にとってはきっといいことだ。しかし、大和にとっては悲しいことだった。先刻の「よかったな」も、心からのものではない。夜道がいなくなると、寂しいと素直に思う。しかし、次の瞬間、

「先程のキスの際にピザソースを少し食べましたが、なんともないようです」

 夜道がそんなことを言ったものだから、大和は恥ずかしさで死にそうになった。こいつにはデリカシーがない。そう思った途端、

「食べてみます」

 夜道は大和の食べかけのトーストに手を伸ばすと、止める間もなく大きく口を開けてがぶりと齧りついた。

「なんともありません。おいしい、と思います」

 けろりと夜道は言った。大和はほっと息を吐き、夜道が死ななくてよかった、と思った。

「亡くなった仲間がどこの星で何をどういうふうに食べたのかは知らないけど、夜道はいま人間に擬態してるんだから、人間が食べられるものは平気なんじゃないのか?」

 夜道は、大和の言葉に目を瞬き、「なるほど」と呟いた。

「その仮説は検討してみる価値があります。母船に帰ったら班長に報告します」

「班長?」

 妙に日常的な言葉に思わず問い返すと、

「班長……リーダー? ブライトさんみたいな人が母船にいます」

 大和の持つ情報を頼りにしている夜道なので例えが変なふうに偏っている。

「そりゃ艦長だ」

 そんなくだらないやりとりに笑いながら、そうか、夜道はとうとう帰ってしまうのか、そう思うと大和はやはり寂しくなってしまう。

「それもう冷めてるから、新しいの焼いてやるよ」

 大和は立ち上がってキッチンへ行く。

「ありがとう、大和」

 背後に夜道の声を聞きながら、涙が出そうになるのを下唇を噛みしめてこらえる。う、と詰まったように咽喉が鳴り、大和はさらに下唇を強く噛む。

「大和?」

 そんな大和の様子に気づいた夜道が立ち上がり、大和の隣で顔を覗き込んできた。なんでもない、と言う前に、

「大和、血がっ」

 焦ったように夜道は言い、半ば無理矢理に大和のきつく噛みしめていた唇を指でこじ開けた。その瞬間に、夜道にはわかったのだろう。

「大和、僕はもうすぐ帰りますが、ずっとお別れというわけではありません」

 大和の下唇に滲んだ血を指で拭いながら夜道は静かに言った。

「きっとまた会えます」

 なんとか涙をこらえ、大和は自分の意志に反してひくひくと動く咽喉に力を入れた。

「大和、大丈夫ですよ」

 夜道は言う。何が大丈夫なのか、そう思わないでもなかったが、大和は頷くしかできなかった。言葉を発したら、涙腺が決壊しそうだったのだ。

 その後、新しく焼いてやったピザトーストを夜道はにこにこしながら残さず食べた。そして、朝の天気予報を観ながら、

「今朝から今夜にかけては晴れの見込みです」

 夜道は、気象予報士の言葉を繰り返している。それを複雑な気分で眺め、大和は支度をし、大学へと向かう。

 部屋を出たところで、カンカンと音をさせて鉄の階段を下りてくる人物と鉢合わせた。

「あ、今西くん? おはよう」

 声をかけられて驚く。よく顔を確認すると、先日大和に声をかけてきた同じ学部の学生だった。相変わらず名前は知らない。

「おはよう」

 大和は挨拶を返す。

「同じアパートだったんだね」

 彼は言った。目的地は同じなので、自然と並んで歩くことになる。

「地元の友だちはまだいるの?」

 そう聞かれ、大和は頷く。

「でも、もう帰るみたい。明日か、明後日か、そのくらいに」

「また一人暮らしに戻れるね。このアパート、部屋が狭いからさ、ひとりのほうが絶対のびのびできるんだけど、でも、ちょっと寂しいよね」

 彼の言葉に、大和は小さく頷いた。

「今度、うちの部屋にも遊びにきてよ。鍋とかやろうよ」

 彼が言い、大和は、うん、と頷いた。彼と友人関係を築けるかもしれない、と思うとうれしかった。そして今更な質問をする。

「あの、ごめん。名前、教えてくれる?」


   * * *


「今日の昼間、母船との通信に成功しました」

 大和が大学から戻ると、淡々とした口調で夜道が言った。

「すぐに迎えに来てくれるそうです」

「すぐって、いつ?」

「明日の……日中は目立つので、夜を指定しました」

 明日、明日の夜か。大和は俯く。そのくらいだろうとは思っていたが、まだ別れの覚悟ができていない。また会える、と夜道は言ったが、そんなの、いつになるかわからない。長生きだという夜道たちと、大和たち地球人の時間の感覚は大きく違うかもしれない。夜道が再び地球に降りた時、大和はすでにこの世にいないかもしれないではないか。

「夜道。今夜はいっしょに寝てもいい?」

 頭の中をぐるぐるとめぐるいろいろに蓋をするように、大和は言った。

「この姿で?」

 夜道は立ち上がり、自分の身体を見下ろした。

「窮屈ではないですか」

 そう言われ、大和は考える。そして、「じゃあ」と提案を口にした。

「猫になってよ。初めて会ったときみたいに」

「大和は猫さんが好きですからね」

 夜道が知ったかぶってそう言うので、大和は笑った。


 夜、猫になった夜道と、初めて同じ布団で眠った。猫に擬態していても夜道の身体はひんやりと冷たい。体温までは真似できないんだなあ、と大和は思いながら、ふわふわの夜道の背中を撫でる。やーん、と、か細く鳴いて、夜道は額を大和の胸に擦り付けてくる。姿が猫なら、仕草も猫だ。

 明日の夜、泣かずにさよならを言えるだろうか。大和は夜道の小さな身体をぎゅっと抱く。眠れそうになかった。


   * * *


 眠れなくとも、夜は明ける。ぺらぺらのカーテンを通して射し込んでくる朝日が、瞼ごしにも眩しくて、大和はむくりと起き上がる。背中をゆったりと上下させている猫夜道を抱き上げ、頬ずりすると、夜道はずるりと形をくずし、畳に落ちた。そして、いつもの人間の姿になると、「大和は、僕が猫さんでいたほうがやさしいです」と複雑そうな表情で言った。

「そんなことないって」

 否定はしたが、確かにそうかもしれない、と大和は思う。猫はかわいがるべきだという固定観念が大和にはある。なので、猫の姿をしたものならば、無条件にかわいがってしまうのだ。

「もっと早く知っていたら、僕はたくさん猫さんになりましたのに。そして、たくさん大和にかわいがってもらいましたのに」

 夜道が言う。もっと早く知っていたら、という言葉が、今知ってももう遅いということを暗に表現しているようで、大和は寂しくなった。

 今夜、大和は夜道を見送らなくてはならないのだ。


 最後の日だったが、大和は普段通り大学へ行き授業を受けることにした。サボってしまおうかとも思ったのだが、夜道とふたりでいても寂しさが募るだけだと思ったのだ。普段通り過ごしたほうが気が紛れるかもしれない。

 夜道は、大和が焼いたトーストを齧りながら、テレビの天気予報を観ていた。

「今夜は晴れそうか?」

「晴れそうです」

 夜道は、大和にピースサインをして見せた。

「そうか、よかったな」

 大和はそう言って、部屋を出た。


 夕方、授業が終わっても、アパートの部屋に帰りたくなくて、ぐずぐずと学食や図書館で時間を潰していた。

「帰らないの?」

 生協の書店で声をかけてきたのは、同じアパートの田丸くんだった。先日、名前を教えてもらったのだ。外はもう薄暗い。

「田丸くんは?」

「サークルに顔出してたんだけど、おれはもう帰るよ」

 田丸くんはテニスサークルに入っているという。活動的なんだね、と言うと、なに言ってんの、と笑われた。

「今日の夜、友だちが故郷に帰るって」

 大和はなぜかそう吐き出していた。

「寂しくて、見送るのが嫌で、ずっとぐずぐずしてた」

「でも、見送ったほうがいいでしょ?」

 田丸くんはあっさりと言う。

「また会えるんでしょ?」

 その言葉に、大和はただ頷いた。

「だったら、見送った後、また会える日を楽しみにしてたらいいんじゃない?」

 目から鱗が落ちる思いで、大和は田丸くんのポジティブな言葉を受け取った。


   * * *


「ただいま」

「おかえりなさい」

 灯りもつけずに、夜道はテレビの天気予報を観ていた。遅かったですね、だとか、最後の日なのに、など、そういう言葉を夜道は全く口にしなかった。ただ、「そろそろ行かないといけません」と静かに言って、微笑んだ。

「見送ってください」

 そう言って夜道が差し出した手を、大和は強く握る。


 強く繋いだ夜道の手が、とても冷たいので大和は泣きそうになった。泣きそうになっただけで、しかし大和は泣かない。

 ふたりで、とぼとぼと夜の道を歩きながら、山の頂上の展望台を目指す。夕方の天気予報でも、今夜は晴れると伝えていた。夜空を見上げると、確かに星は音がしそうなくらいに瞬いている。視線を少し落とし、木々が風にざわざわと揺れるのを眺めて、

「聞こえるのか?」

 大和は夜道に尋ねた。

「はい。聞こえます。良かった、母船はすぐそこまできています」

 夜道は目を閉じて、頷いた。仲間との緊急通信に成功したようだ。とうとう帰ってしまうんだな、と大和は思う。大和は夜道の手を、ぎゅうぎゅうと握る。夜道は少し困ったように微笑んだ。

「大和」

 夜道が大和の名前を呼ぶ。

「大丈夫ですよ」

 なにが大丈夫なのか。軽くそんなことを言う夜道に対して、大和は半ば八つ当たりのように腹を立ててしまう。

「大和は大丈夫です」

 夜道は、もう一度言った。

 大丈夫なんかじゃない。おまえがいなくなったら、俺は。俺は?

 いや、大丈夫なのかもしれない。大和はそう思い直す。夜道がいなくても生きていける。今までだって生きてきたのだ。

 だけど、でも、だって、夜道がいないと寂しい。寂しくても人は生きていけるけど、寂しい思いをしながら生きていくなんて、きっとしんどい。

「大丈夫ですよ、大和」

 夜道は笑っている。夜道は寂しくはないのだろうか。そう考えて、思い直す。夜道が寂しかったのは、それは今までのことだ。仲間とはぐれて心細かった今までが寂しかったわけで、夜道はこれから帰るのだ。仲間のいる船へ。自分の家へ。やっと帰ることができるのだ。

 大和は、下唇を噛んだ。夜道がそれを見て、手を繋いでいないほうの指で大和の口をこじあける。

「また、血が出ます」

 わかっている、わかっている、わかっている。少しイラつきながらそう思ったが、言葉が出なかった。代わりに嗚咽がもれる。堪えようとすると、咽喉がひくひくと引き攣った。

「やまと、やまと」

 夜道が幼子をあやすようにやさしく呼ぶものだから、どんどん泣けてくる。うーうーと唸りながら、大和は泣いた。泣かないつもりだったが、もういい。どうせ夜道には、全部わかっているのだ。大和は、涙をこらえることを諦めた。生ぬるい滴が、たらたらと頬を伝う。

「やまと、やーまと」

 夜道は、唄うように名前を呼び続ける。繋いだ夜道の手は、まるで金属のように、やはり冷たい。

 止まらなくなった涙が風で冷えてひどく寒い。泣かずにさよならなんて、言えるわけがなかった。また会える日を楽しみにしていよう、そう思い直したはずなのに、目の前の別れがどうしても悲しい。

 展望台に到着した夜道は、繋いでいた大和の手を離し、茂みに分け入った。空いた手で、大和は涙を拭う。

「何かあるのか?」

「僕が乗ってきた小型の調査船です」

 大和の問いに、夜道の声だけが答える。

 戻って来た夜道は、両手に楕円形のタイムカプセルのようなものを抱え持っていた。薄汚れてはいるが、銀色をしている。

「それが調査船?」

「ええ、壊れているので、母船での修理が必要です」

 夜道は調査船を地面にそっと置き、瞼を閉じて、耳をすませているような仕草を見せた。緊急通信を試みているのだ。

「母船は少し大きいので目立ちます。なので、何度も調査を行って安全が確認されるまで、星には近づかない決まりです。でも」

「今は緊急事態だ」

「そう。なので、母船自らここにきてくれるそうです」

 そう言って、しばらく無言の後に夜道は大和を見た。大和は初めて自分から夜道にキスをした。

「大和」

 夜道が大和の名前を呼んだ。風がざわりと吹いて、木々を揺らす。

「俺の情報を全部やる。まるごと全部、おまえにやるよ。俺の今までの記憶、全部持って行ってくれ。それで、時々でいいから」

 きっと夜道にはすべてわかっている。それでも大和は言葉を紡ぐ。

「時々でいいから、俺のことを思い出して」

 語尾がふにゃふにゃと湿ってしまい、大和は唾を飲み込んだ。夜道は大和を引き寄せ、ゆっくり丁寧に口づける。夜道の身体が徐々に形を崩し、銀色のどろどろが大和の全身を包み込む。まるごと包み込まれても、不思議と息苦しさは感じなかった。ひんやりと冷たい心地よさが、大和の全身を包んでいる。夜道はしばらくそのままでいたが、とろとろと流れるようにゆっくり大和から離れると、今度は大和と同じ姿に形を変える。

「おそろいです」

 夜道は言った。

「おそろいは、仲良しの証拠です」

「変なことばっか覚えるな、おまえは」

 大和は泣きながら笑う。

「おまえのことが好きだ、夜道」

 初めて口にする言葉だったが、想像していたよりも自然に、するりと外に出た。

「大和、ありがとう。うれしいです」

 大和の姿の夜道は感動したように言った。

「大和が僕のことを好きだということは知っていました。だけど、言葉にしてくれたのは初めてです」

 けろりと放たれた言葉に、大和はあっけにとられてしまう。

「大和、僕も大和のことが好きです。宇宙でいちばん、大好きです」

 夜道は大和の姿のままで大和よりも上手に笑って手を振った。その瞬間、ごうっ、と大きな音がして、風が強く吹いた。「あ」と大和は声を上げる。夜道の頭上に、夜道の調査船の何百倍もの大きさのカプセルが浮かんでいたのだ。白い光を放っているのは、夜だからなのか、それともそういう物質なのか、そんなのんきなことを一瞬考えてしまう。巨大カプセルは、くるりと一回転すると、まず、調査船をシュッと素早く吸い込んだ。吸い込んだように見えたのだが、どこが入り口なのかはよくわからない。

「さようなら。また会いましょう」

 夜道は、風の音に負けないようにはっきりと大きな声で言った。夜道は再びどろどろと形を崩していくと、どこが入り口なのかもわからない発光する母船に吸い込まれるようにして乗り込んだ。母船はぷかりぷかりと不安定に上昇すると、どういう技術なのかわからないがふわんと空気に溶けるように消えてしまった。あっさりとした別れに、取り残された大和は、

「知ってたって、なんだよ……」

 夜道の特性上、知っていて当たり前ではあるのだが、やっぱりそう言いたくなってしまう。

 しばらくそこに突っ立っていたが、くるりと身体の向きを変えると、大和はひとり山道を下り始めた。日常に戻らないと、そう思った。早く夜道のいない毎日に慣れないと。そして、また会える日を楽しみにしながら、暮らしていくのだ。


   * * *


 夜中に、扉をカリカリと引っかくような音がする。田丸くんかな、と思う。最近、お互いの部屋をよく行き来しているのだ。しかし田丸くんならば、早朝だろうが夜中だろうが、遠慮なくチャイムを鳴らすかドアをノックするだろう。夜道が行ってしまってから数ヶ月、この田丸くんの存在に大和は随分と救われた。傍から見ても大和が寂しそうに見えたのだろう、田丸くんは事あるごとに声をかけてくれた。今ではいい友だちだ。そんなことを回想しながらドアを開けてみたが誰もいない。「え」と声をもらし、大和は首筋にちりっとした恐怖を感じた。心霊現象かもしれない、そんなことを考えた瞬間、

「やーん」

 足下から猫の鳴き声がした。見ると、銀色の猫が大和を見上げている。考える前に、大和はその猫を抱き上げて頬ずりをしていた。ひんやりと冷たい。

「夜道?」

 小さく呼ぶと、猫はどろりと地面に垂れた。そしてむくむくと人間の姿を形づくった。

「ここを安住の地にするためには、もう少し調査が必要です。そう艦長に言われました」

 夜道は言った。

「調査続行です。僕たちは、ここで植物や動物に擬態して生きていく術を探さなくてはいけません。人間は戸籍がいりますので、ずっと人間でいることは難しいと判断されました」

 べらべらと一通り喋ってから、夜道は大和の身体を抱きすくめた。

「また、ここでいっしょに暮らしてもいいですか?」

 言葉が出てこない大和は、ただ、何度も頷いた。

「大和のいるところが僕の安住の地です。母船よりも、もっとずっと安住の地です」

 夜道はそう言って、大和の唇に軽く口づける。

「大和は、僕にまた会えてうれしいですか?」

 わかっているくせに、夜道は尋ねてくる。

「うれしいよ。うれしくないわけ、ないだろ」

 大和は夜道にしがみつき、少しの間、ぐずぐずと泣いた。

「大和、僕はたくさん猫さんになりますので、たくさんやさしくしてください」

「おまえ、やっぱまだ日本語変だよ」

「これからまた勉強します」

 時間はたくさんありますので。夜道の言葉に大和は頷いた。



ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ