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還咲の桜  作者: 占地茸
第一章  旅立ち編
7/32

神隠しは突然に

空が暗くなってきたので、辺りの店を開く人が火を灯し始めた。木造建築が多い為、篝火には火事にならない且つお洒落になる様に工夫されている。店の前によって飾り付けが違うので、これだけでもこの祭りの出し物の一つとなっていた。まさに街の人全員が満遍なく楽しむという想いが感じられる。


篝火をつけ出したと同時に巫女服を着た人や、巫の格好をした男性がいろんな店からぞろぞろと出てきた。

「そろそろ、神来の時間か」

「もう見れる場所に移りましょうか」

「そうだな。その後穴場に行こう。他の2人も、それで良いか?」

「「はーい」」



神来とは、新しい年と神様を迎える儀式である。


この街唯一の神社の前で大きな火を焚き、禰宜(ねぎ)が神社正面以外の火の周りを大きく取り囲み、その内側で宮司様が舞を披露する。その後、火の付いた蝋燭を持ちながら神社の方へ歩み、それに続いて禰宜の人達も蝋燭を持って歩みを始める。

その後に初めて、僕ら一般の人たちも参拝することができる。



かなり長く退屈そうな儀式だが、代々行われている舞の間だけは、賑やかな街から一転して太鼓と笛、そして宮司様の詩声だけが響き、踊る姿、音に目を奪われ誰も妨げることができない独特の雰囲気が創られる。

まさに神様の領域だ。



「「「「おおー。凄いなぁ」」」」

神社前に着いた途端、家族全員で同じ感想を漏らす。

今年はかなり気合が入っており、真ん中の薪がかなり上まで積み重ねられている。前回は、その半分くらいの高さだった。



「今年は気合い入ってるって言ってたけど、ここまでとはな」

「ええほんとに。やっぱり明日から年号が変わるからかしら」

年越しとともに、この国は年号が変わる。華街の方でもお祭り騒ぎだと、お父さんから教えてもらった。時代の移り目というのは、やはり特別なものでどこか寂しさを覚える。たった九年弱しか生きてないけど、この年号に思い入れがないわけじゃない。特に父と母、梅には、僕の知らないいろんな思い出があっただろう。三人ともどこか少し悲しげな表情を浮かべている。



「あれ?新しい年号、何て名前だっけ?」

「〔幸奉(こうほう)〕よ。"お互いに奉仕し合って、幸福な時代を築く"、という願いが込められたみたい。この町はいろんな人が支えあって生きてるから、時代に先駆けてるわね」

「あはは!確かにそうかも」


僕の同い年は兎も角、確かにこの町の人達は誰にでもよく喋り、よく喧嘩し、よく助け合いながら日々生きている。

お母さんは前に、此処こそ国が目指すべき町だと豪語していたが、あなまち間違いではなかったようだ。



話していたら周りに人が多く集まり、宮司様たちも配置の確認を行なっている様だ。

本格的に始まる。太陽の光が完全になくなったら開始の合図だ。人盛りがあり騒いでいたが、もうすぐ儀式の始まりを察したのか、段々と人声は少なくなっていった。


そして人の声が一つとして無くなったと同時に光が消え、

その刻は来る。




その年の、その時代の最後である神来が始まった。








――――――――――









神来が終わった後、俺たちは街をゆっくり歩きながら花火を見るために穴場に向かう。願い事を終え、買い食いをして、町にあるダチと共に酒を少し嗜み、家族と共にいろんな出し物で遊んだ。



楓は寒い時期のはずなのに何故か出店していた金魚掬いをやったが、一匹も救えなかった。代わりに俺がとってやろうとしたが同じく惨敗。店主からお情けの金魚二匹をもらう。その後狐のお面を付けて回り、漆を塗った簪を買ってあげた。

息子と手をつなぎ、きれいな姿となり、金魚袋を持ち歩く姿はぐっとくるものがある。



梅は今の春人に似合う食べ物や品物を欲しがり、綿飴や林檎飴、風車をなどを持たせ、その姿を見て狂い悶えていた。お面に対して最初合ってないから外してくれと春人にせがんでいたが、途中からこの不恰好な感じもまた乙だと言い始めた。つまりなんでもよいのだ。


因みにその間、春人の碧く綺麗な目が、死んだ魚の目をしていた。こんなことになるとは思っていなかったんだ。本当にごめん。



そして春人は、射的やわなげ、型抜きをいっしょに遊んだ。我が息子ながら器用な子だ。射的は全弾命中、輪投げは狙ったところに必ず入り、型抜きに至っては寸分違わぬ精度で抜き切った。どれも一番高額なものな為、店主はどこも泣いていた。春人、恐ろしい子。



思えば、家族とこうして遊ぶのは久しぶりだ。仕事場ではそれなりの立場にいる為、よく緊急で呼び出される。事後報告用の書類作成、提出された書類の確認、部下の育成指導、任務の作戦会議とそれのまた書類作成。何より現場への出動。他にもやることが山積みなので、なかなか家へ帰る機会がない。


(家族の楽しそうな顔を見れるのは、やはり嬉しいものだな)

ひとしきり遊んだので、もうすぐ年越しと同時に上がる花火が始まる。

「みんなー、そろそろ移動するぞー」

「「「はーい」」」


いつも見る場所は少し街から離れて、人っ子一人おらず舗装されきっていない道を歩くのだが、その先にあるのは、家族だけで見ることができる特等席。俺はいつも必ず此処に連れて行き、皆で夜空に咲く豪華満点の花を見る。

年越しまで、もうすぐだ。




「貴方、少し早いわ。春人が少し疲れてるから、ね?」

「あ、すまん!悪いハル。疲れただろう?おんぶしてやろうか?」

今年は皆でこの瞬間を共に過ごせる。それがとてつもなく嬉しくて少し早歩きになってしまった。

「大丈夫だよ。疲れたけどまだまだ歩けるから」

「そうか?無理すんな?」

ありがとうと言われ、少し歩く速度を落とす。気持ちが流行りすぎた。父親として恥ずかしい。あんなこと言った手前、こんなことではいけない。しかし、おんぶが断られたことに少し落ち込む。


(あ、そうだ)

「よし、こうしよう」

「え?わわ!!」

息子の脇を持ち上げ、肩車をする。これなら逃げられまい。しかしさらっと持ち上げられたが、男の子なのに軽すぎやしないか?お父さんは心配だ。


「お父さん!お、重いからおろして!」

「全然重くねえよ。軽すぎだ。ちゃんと食べてるのか?」

「食べてるけどなぜか増えないんだ。と、兎に角、恥ずかしいから!ね?」

「ならおんぶは?」

「わかった!わかったから!はやく降ろして!」

「よっしゃ」

息子に許可をもらい、おんぶに移行する。ずっとこうしたかったのだ。悪いが付き合ってくれ。





「へへへへ。どうだいお客さん。乗り心地は?」

「まだ少し恥ずかしいけど、まあ、いいです…。」

「そりゃあ良かった!」




「…ねえお父さん」

「ん?どうした?」

「お父さんは、神社で何をお祈りしたの?」

「…」


「お父さん?」

「…ああ。もちろんお母さんや梅、そしてお前をこれからも守れるようにお願いしたのさ」

「そっか。えへ、そうなのか。えへへ」

「…」


「お前は?何をお祈りしたんだ?」

「ん-。内緒」

「な、俺は言ったのに。ずりいぞ」

「花火が上がったら教えるよ。僕にとっても大事なお願いだから」

「…そうか」




「二人とも!早く早く!もう上がっちゃうわ!」


「お父さん降ろして。自分で立ってみんなの横で見たい」

「おう。わかった」

「よっと。よし、じゃあいこう。お父さん」

「ああ」




「残り一分か。本当にいろいろあったね」

「ええ。誠史郎さんや梅、あなたと出会えたこの時代も、もう終わっちゃうのね。やっぱり、少し寂しい」

「なに、俺たちが離れ離れになるんじゃないんだ。新しい時が来るなら、そこでいろんな思い出をまた作ればいいだけだ。それに、培ってきた経験や思い出は消えない」

「ふふ、そうやね。来年もみんなで仲良うしながら、一緒にご飯を食べて、時々こうやって遊んで、ずっと過ごしていけばええね」


「あと15秒だ。最後、一緒に数えようよ」

「いいな、やろう」

「よし!…せーのっ!」


「「「「10、9、8、7、6、5、4、3、2、」」」」




「「「1!!」」」




"明けましておめでとう!"

ドーン ドーン ドーン



「わあ、綺麗!」

「ええホンマに!素敵やわあ~」

「ああ、今日帰って来れて本当に良かったよ」




「なあハル、お前のお願いは何だったんだ?」
































「…ハル?」





隣を見ると、息子の姿が消えていた。

___________________




















「目標、確保」

展開遅いやん。と思った方。

そのとうりでございます長くなってすみません。

自分でも書いてて「なっげなあ。まじで」っておもってます。許してください。何でもしますから。

(何でもするとは言っていない)

ここから少し盛り上げます。

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