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還咲の桜  作者: 占地茸
第二章  入隊編
27/32

勝負の行方は

更新が遅くなり申し訳ございません。

クリぼっちだったので「ぼっちざろっく」観ました。

(12/26)

とある部分を削除いたしました。

理由はまだ展開が早いかなと感じたためです。

ついでに大幅に変えた部分があります。

理由はキャラクターがぶれていると感じたので。

度重なる変更、大変申し訳ありません。

甲坂が一直線に原栄との距離を詰めると同時に、右手に力を集約させる。

少し遅れて天菜と冬村が原栄を囲む様、左右に大きく開く。

原栄は最初こそ左右の二人に注意していたが、距離的に先に仕掛けてくるであろう甲坂の方へすぐに意識を向ける。

彼の間合いは把握していたが何かあると感じた為、いつもより少し多めに距離を取る。



「ふっ!」シュッ

「っ!」

突然、原栄の腹の前で風を切る音がした。何が起きたかを確認するために、さらにもう一歩後ろへ下がり前を見ると緊張して細くなった目を少し見開いた。


そこには、彼の能力で形どられた刀が甲坂の手に収まっていた。

原栄はすぐに刀身の長さと反りの角度を覚える。甲坂は更に一段二段と刀を振るうが、そのどれもが皮一枚で避けられていく。甲坂は最初の一太刀で今の間合いを原栄に把握された事を自覚し、「くそっ」と悪態をつく。



しかし彼は心の中でほくそ笑んでいた。

(よし。このまま今の間合いを意識させる…)

何度も刀を振るい、原栄を後退させていく。

甲坂は元武家の出である為、その一つ一つが鋭く、重く、洗礼された一振りだ。

剣の筋もいい。おそらく代々受け継がれてきた流派を叩き込まれてきたのだろう。

しかし、やはりまだ未熟であり、未完成な剣技や彼特有の癖がある。



その癖すらも完全に見抜いたのか、原栄は回避に余裕を見せる。

甲坂は上がりつつある息を整えるため、動きを止めて彼を睨む。

原栄は甲坂を警戒しながらも、斜め後ろに位置していた二人の方へ少しだけ意識を向ける。

どちらも張り詰めた顔をしており、動く様子はない。何かに注意しているようだ。


(残り5分。後ろの二人はまだこちらの様子、或いは出方を伺っている?いや、どちらかというと甲坂の方に意識をむけているような…)



少し考えて混んでいると、前にいた甲坂が徐に横へ少しずれる。

ずれると同時に、原栄に見えたものは、


左手で支えながら右の手の平をこちらに向けている、"葉っぱ"の姿だった。



春人が見えた途端、原栄の視界が真っ白になった。

「ぐっ、目が!」

日が落ちて辺りの暗さにようやく目が慣れてきた所に、前に見た時よりも何倍もの明るい光で一気に照らされ、且つ光源元を見てしまった原栄の目には視界のほとんどを埋め尽くす残像が濃く映る。

しかし彼はこの間に間合いを詰めていた甲坂の存在を足音で気づき、目をつぶりながらも先ほどより大きく距離を取った。

甲坂はニヒルに笑う。

「かかったな…」



「今だ!二人とも!」

そのまま手を光らせながら張り上げる春人の声に応えるように、左右から何かが燃える音と雪崩のような音が聞こえる。

かろうじて視認できる視界の端で音源先を見ると、大きな炎と雪の壁が同時に押し寄せていた。



「くっ!」

原栄は自身の力、植物を自由に操作する能力を使い、足元から巨大な根を生やし、後方へ瞬時に下がる。飛び跳ねた後、根はすぐに枯れてしまい、炎と雪の渦へと消えてしまった。



「っ!しまった!」

間一髪で避ける中、原栄はすぐに自身の失態に気づいたが、もう時すでに遅し。

それは今まで頑なに使わなかった能力を、発動したことではない。


炎と雪が混じったおかげで、大量の霧が噴き上がる。原栄の周りだけでなく、校庭全体に濃い霧が広がり、残像も相まって更に視界が悪くなってしまった。


(奴らの狙いは自分の視界を潰しながら、ワシに下手な動きをさせない様に霧を作り出す事だったのか!)



「!」

視界が悪すぎてよく見えないが、春人があの場所のまま霧の外で光をこちらに浴びせている事に気づいた。

(そんな事をすれば自分の位置が、…!!なるほど!)



原栄は光の意味に瞬時に悟る。

自分の視界が悪いのと同じ様に、彼らの視界も又、この霧に阻まれてしまっているのだ。

故に春人は攻撃に参加せずその場で照らし続ける事で、自分の位置を他の三人に知らせて、霧の中でも攻撃しやすい環境を作り出している。


(ならば!)

先に春人を潰しておこうと考えた。

先ほどよりも目に映る残像が薄くなり見やすくなった為、光源へと足を進めようとすると、


目の端で霧が少し揺れたことを視認する。

その直後に斜め左前から先ほどよりも低く構えている甲坂が、霧の中から姿を現した。



「ハアァァ!!」

逆袈裟斬りを繰り出す。

今の視界をもってすれば避ける事は容易いと考えた原栄は、既に覚えた間合いで距離を取ろうとした。


ギュン!

「っ!」

しかし突如刀身が伸び、間合いが広がる。

その距離は完全に原栄を捉えていた。



(当たる!!)

偽物の刃が、原栄の脇腹に迫る。


メキメキッ

「なっ!」バギッ

しかし、渦巻きながら瞬時に伸びてきた木々の根が刀の行手を阻む。渾身の力を込めて振り上げたはずの刀は、根っこの予想外の硬さのお陰で完全に断ち切ることはできずに、残り数センチというところで動きを止めた。



「チィッ!」

根からすぐに抜き、刀を真上に構える。


フォンッ

「!……嘘だろ…くそ」

しかし全神経、集中力を費やして振るった一太刀を塞がれた弊害は大きく、これまでの緊張や疲れ、何より自信を失ってしまい、甲坂はその場に座り込んでしまう。

肩で息をしながらも心底悔しそうな顔を浮かべ、拳を強く握りしめる。



「はあああ!」

背後から天菜と冬村が原栄を襲いかかる。

天菜は少しながらも拳を燃やして振りかぶるが、彼は悠々と避ける。

数時間前よりも明らかにキレの落ちた攻撃。

今の彼女達であれば誰だって避けるのは容易いだろう。

冬村は最後の力を振り絞った行動だったのか、拳を振り切った後動きに任せて地面へと倒れる。

だが天菜は決してその手を止めずに繰り出し続けた。



残り30秒。

原栄は最後の懸念を無くすために、今もなお奥で光を射し続けている春人の方へ向かう。

後ろから「ま、待って…!」という声を振り切り、春人の元へ真っ直ぐに走る。



残り15秒。

霧の中ではあるがどんどんと光が小さくなっていくのが分かる。

持続性が高い能力であっても流石に疲れた様だ。


残り6秒。

そして遂にその姿を捉える。

「終わりだ。葉っぱ」













「は?」

原栄は目の前の光景にギョッとする。

光っていたのは春人ではなく、




ただの小さな石ころだった。


残り5秒。

原栄はただ立ち尽くす。

その事実を理解するのに、僅かな時間を要した。

彼の知らぬ間に後ろの霧が静かに蠢めく。


たった一瞬、1秒にも満たないその刹那の隙を、

"小鬼"は見逃さなかった。



原栄が後ろを振り向いたときに見えたのは、

どんどんと大きく広がっていく子供の拳であった。




ポカッ

「ぐえっ」ドサッ

ピピピピピピピピピッ

原栄の首が少し捩れ、春人の体が落下で地面へ叩きつけた直後に、甲高い機械音が響き渡った。





「………え?……ね、ねぇ。今」

「……あ、あぁ。今、確かに……」

周りの生徒達は唖然としながらも、その一部始終を見ていた。




「ハァ、ハァ、ハァ」

「…」

原栄の目の前には、先程までとは随分と印象が違って見える子供が息を切らして這いつくばっている。


「せ、先生。判定は?」

顔を向けずに聞いてくる辺り、余程疲れていると感じた原栄はそれを咎めなかった。


少し間を置いた後、

小さい背中に向かって笑いながら勝負の反対を言い渡す。



「この勝負、お前達の勝利だ」



その言葉を伝えられた後、

春人は腰を下ろし、原栄を見上げて笑った。

「………へへ、よかったぁ」

勝者は地面に座りこみ、敗者はただ悠然と見下ろしている。

その光景は傍から見れば結果と正反対に見えるだろう。

しかし、


『うおおおおお!!やったぁぁぁぁぁ!!』

少し遅れて、周りの生徒が歓声を上げる。拳を高く上げる者、謂わゆるガッツポーズを何度も繰り返す者、友達同士で抱き合って分かち合う者など喜び方は様々で誰もが喜色満面であった。






--------------------






「はは…やったな」

「あ、甲坂君…」

彼はおぼつかない足取りで近づいた後、傍に座って僕の肩に手を回した。

疲労のせいかどこか元気がない様に感じる。

しかし今尚喜んでいる同期達の様子が可笑しい様ですぐに目を細めた。

その様子を見て、僕も同じ方向へと目を向けた。




「ごめんな」

「…え?」

彼のポツリと溢したその言葉を不思議に思ったので、目線をそのままにしながら聞き返す。


「予定通りに出来なくてさ…。本当なら、俺が決めなきゃならなかったのに。お前に尻拭いさせちまった」

彼が謝った意味は、作戦通りに行かなかった事の様だ。

僕は皆んなに、最後に決めるのは彼の役目だと話していた。

「……ううん、先生だもん。仕方ないさ」

そのことに対し、僕の胸に小さい痛みが走る。



「この借りは必ず返す」

「借りなんて思わなくていいよ!この方法、甲坂君への負担が明らかに大きかったんだしさ」

慌てて僕は両手を横に振って彼を宥めるが、その思いは固い様でさっきとは違い真っ直ぐな目をしていた。

「いや、俺がそうしたいんだ」

「…うん、わかったよ」

そんな目で言われたらぐうの音も出ないので、大人しく貸し付けておくことにした。

だがやはり、彼には伝えなければならないと感じた。

「ねえ甲坂く」


「ナイスパーンチ!!」

「「のわあ!?」」

本当のことを話そうとしたとき、ひかりが急に僕らの間にもたれかかってきた。

「なんでそんなに元気いいんだお前は」

「何言ってんの。ここに来るだけでもフラフラだったんだから。それよりも、いいパンチだったよ春人君!」

「ぱ、ぱんち?あ、ああ、ただ当てただけだよ」

「まあ確かに威力はちょい物足りなかったなあ」


急に痛いところを突かれた。思い返すと軽いぱんちにもほどがある。

「う、申し訳ない…」

「けど全然いい!めっちゃスカッとした!ね、ナオ!」

「はは、だな」

甲坂君は苦笑し、ひかりはとびきりの笑顔を向けてくれた。



「そっか。なら…その…良かった」

急に褒められたが、彼らを騙してしまったことが尾を引き、少し俯く。

「あ、ちょっと照れてら」

「え?あ、違う違う!?」

「余計照れてる。もう可愛いなぁ」

ひかりが僕の肩から手を回して頭を撫でてくる。

そのせいなのか、甲坂君は少しムッとした表情を浮かべた。

こればっかりは、僕が悪いわけではないのだが。


「あ、あの!2人とも、みんなが呼んでるから!ほら、早く行ってあげて!」

「「ん?」」

僕が指差した方向を2人が見る。その先には甲坂君とひかりを呼んでいる声が聞こえている。



「アイツら、俺らを巻き込んでまだ騒ぎたいのか。全く…」

「へへ、いいじゃん!よし、行くよ2人とも!」

甲坂君は少し困り顔で呆れた声を発し、ひかりは元気よく甲坂君と僕の手を握り、起こそうとする。


……ん?2人、とも?



「ぼ、僕は呼ばれてないけど…」

「何言ってんだ。花宇田がいなくちゃまとまらねえだろ?今回はお前のおかげなんだし。アイツらもお礼を言いたがってるはずだ」

「そうだよ。春人君のおかげで休み増えたんだし。ほら早く行こうよ!


皆んな、待ってるよ」



トクン…


?…何だ今の。僕は自分の胸に手を当てる。

一瞬過ぎてよく分からなかったが、なぜか心臓が跳ねた様な感じだった。

……まあいいや。それよりも2人と一緒にみんなのところへ行くとしよう。



「葉っぱ」

2人と歩き出そうとした時に、いつの間にか僕らの後ろに回っていた先生に話しかけられた。


「は、はい!」

「少しいいか?」

「え?」

なんだろう?軽いパンチとはいえ、ぶん殴ってしまったことに怒っているのだろうか。

いや、あれは不可抗力というかなんというか。


…まずい、なんか怖い。


「安心しろ。叱るわけではない」

「ほっ…」

「………本当に分かり易いやつだな、お前は」

まずい!顔に出てたか!しかしそんなに分かりやすい顔をしているのだろうか?


「!!ご、ごめんなさい!」

「先程と同じ者とは思えない程に」



呟く様に言った先生は何処か哀愁漂う雰囲気で、まるで何かと照らし合わせている様子だった。



「天菜、甲坂。葉っぱを借りるぞ」

「え〜やだ!」

「話したいことがあるだけだからすぐ返す」

「むー…もう少しタイミング考えてほしいんだけど?」

「何だよ、殴ったことに関してか?」

「違う、と言えば少し嘘になるが…。すぐに返すからさっさと馬鹿騒ぎしているアイツらを諌めてこい」


嘘になる!?やっぱり怒られるのか!?

「「はーい」」

「え!?」

今の返答の何処に納得出来る説明があったのか分からないが、2人は僕を置いてみんなの方へ足を進めて行った。

置いてかないで……。



「さて、と」

「ヒュッ」ビクゥッ!

恐る恐る振り向くと、先程とは正反対の様に険しい顔を浮かべる先生。

やはり怒ってるのか!?

そう考えているうちに、先生の手が伸びてきた。


あ!死!



「……あれ?」

先生は僕の頭を引っ叩くのではなく、優しく撫でていた。

……何がどうなっている?

訳が分からないので先生の方を見ると撫でるのをやめて、顔だけ僕の方に向けたまま口を開く。


「今回の件、見事だった」

どうやら先程の一連の流れを褒めにきた様だった。しかし僕としては複雑な心境だった。





----------------





「お前が考えた案なのだろう?」

「……はい。でも、大した方法じゃありません」

春人は俯いて先程のことを思い返していた。



「あれは僕らに有利な条件がたくさんあった上での方法でした。本当なら話になりません」

「ほう?その様な条件をたくさんつけた記憶は無いがな。俺は3時間一発でも当たればと言っただけだ」




「…先生は決して自分から攻撃を開始したことはありません。必ず後手に回って動いていたから…」

「ほう、気付いていたのか」

原栄は感心しながら顎髭を触る。

彼はなるべくバレない様、広く立ち回りながら間間に挑発して必要な時だけ反撃を行っていた。


「他にも反撃に能力を使わなかった…」

「むう」

元々回避にも使う気が無かった原栄とっては、複雑な心境である。

出す所まで追い込んだ張本人はそこまで気付いていない。



しかし原栄の中にはまだ疑問が残る。

「しかしまだ不可解な点がある。甲坂は最後の最後、このワシに秘密にしていた技まで使ってまで仕留めようとした。普段のアイツならお前が最後を決めると知っていたなら、もう少し妥協した動きになっていたはず…」


原栄と春人は甲坂達の方へ目線を移す。少し離れたところにある彼らは一緒に騒いでいる様だ。その様子に原栄は、少し呆れたため息を溢す。


「僕の最後の動きは伝えていません。皆には高坂君が最後を飾るように言いました」

「なに?なぜそんなことを?」

原栄は再度春人に目線を戻す。春人は目線をそのままにしながら話し始めた。


「理由は二つです。

一つ目は皆に僕の作戦を通りやすくするため。

あの局面は僕ら全員にとって最後の時間でした。そんな中、新参者の僕が最後先生を殴ると伝えても誰も信じないし、聞いてくれないでしょう。そこで最後は甲坂君が決めると言うことで僕の意見を通りやすくしました」


「二つ目は先生を欺くため。

皆が本気で動いてくれれば、先生も僕が最後攻撃に転じるなんて意識にも上らないと考えたからです」

「なるほど…な」


実際原栄は、彼が攻撃に参加する考えは、過りはしたがすぐに無くなっていた。その要因の一つに甲坂の全力の姿勢が確かにかかわっている。


「それに今回うまく行ったのは…」

春人は先生の方へ向き直す。どこか鋭く、凛とした目で見据えられた原栄は鼓動が一瞬早まる感覚を覚えた。

「先生が生徒思いだからです」

「ん?」

しかし飛んできたのは、原栄の予想とは違った答えだった。



「どういうことだ?」

「先生は皆んなをよく知っています。

あの大人数相手でも貴方が軽々いなせたのは、単に経験の差だけではなく皆んなの攻撃の癖、思考すら把握していたからだと、時間いっぱいまで観察していて確信しました」

「ふむ…」



「だけど、まだ会って間も無い僕への理解はまだ少なかった。先生が三時間という長い制限時間をとった理由は、あの戦いの最中で、僕の些細な動きや仕草を注意深く観察して、癖や思考回路を知るため…。実際先生は、僕の一挙一動に注意していたでしょ?」

「っ!」


原栄は少したじろぐ。あの鬼神の息子とはいえ、こんな幼い子供に自身の思惑と意識を見抜かれているとは思わなかったからだ。

実際、原栄観察する仕草はあまりに小さく、その合間も一瞬であった。先に訓練している甲坂達どころか、戦いの猛者と呼ばれる者でも気づくのはまず不可能と竜崎にも太鼓判を押されている程には難易度が高い。

か細い一瞬の光を捉えるような所業を、こんな子供にできるとは想像できなかった。



(こいつ、なんてガキだ…)

「自分の動きを極力減らしたのは、最後一発で決める確率をなるべく下げない様にするだけでなく、ワシの癖や仕草を冷静に見抜く為か」


「はい。それと、三時間という長さは僕にとっても幾つか都合が良かったんです。僕が使った小石を光らせる技はあの長さがあったからぶっつけで出来たもの。練習に気づかれない様、かなり気を使いましたが何とか間に合わせました。そして何より…」



「…陽の光か」

「今、大和は冬。この時期は日の沈みが早い為、夕方から三時間もあれば周りも暗くなります」

「お前がラスト10分で実行に移した理由が分からなかったが、光を活かす環境を整えるためか。

最初の光はワシの目をくらます為、小石に出し続けさせていた二回目の光は、その明るさにワシの目を慣れさせて、自分の存在を欺く為」


原坂の答えに春人は頷いた。

「僕の能力は戦闘向きじゃないから、こうやって皆に助けてもらいながら、頭を使って小細工を敷くしかないんです。だけど、この方法じゃ二度は使えません。それに、もし先生が本気で僕らを潰す気なら、その前に僕を再起不能にしたはずです。いやもっと前に全員を倒してた…」




「…」

原栄は恐ろしいほどの洞察力を発揮し、隙は在るも慎重且つ大胆な作戦を思い着いた春人に戦慄した。


かつて、一対一で教えていた生意気な子供に重なる。

その子供はいつの日か原栄と肩を並べ、追い越し、最強と謳われる者になった。

そんな男の子供が、またこうして自分の教え子となっている事に、彼は何処か運命を感じた。



(見てみたい。

この子がどこまで行けるのか。

これから何を成し、為していくのか。


その先でどんな男になっているのか)



「あと、その…」

「ん?どうした」

先程よりも更に顔を険しくして、俯く春人。


「立案者の癖にこんな事思うなんて変なんですけど、

みんなを騙してしまった事が、自分自身が、許せません」

「…そうか」

「…できれば、もう二度とあんなふうにやりたくありません」

春人は拳を強く握り締める。



「…」

原栄は、それについて何も言わなかった。本当であるなら軍人として、すぐにその()()()を訊さねばならない。

しかしまだ彼は子供。そんな考えを今から植え付けるには、あまりにも早計であり、何より可哀想だと感じた。


「よし、もういいぞ。あいつらの所に行ってやれ」

「は、はい。失礼します」

春人はお辞儀した後、走って甲坂達の元へ向かう。

どうやら彼を待っていたであろう同期たちに、次々に話しかけられ、春人が慌てふためいている様子が見える。



「性格は随分と違うが…。カカ、本当に面白い。

今夜は本当に気分がいい」



原栄は一頻り笑った後、いつの間にかその様子を見てドン引きしていた生徒たちに近づき、一人ずつ腹パンをかまして、意識のなくなった生徒全員を前の校舎に引き連れて帰って行った。

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