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還咲の桜  作者: 占地茸
第二章  入隊編
24/32

ここは森の中




次の訓練は場所を移動すると言われ、校舎の外の森の手前に連れて行かれた。この森の中でやるのか?



「全員揃ったな?今からこの森を真っ直ぐ抜けると別校舎にたどり着く。昼の12時までに辿り着け。できなかった場合は飯抜きとする」

『な、なにー!?』

「分かったらさっさと行け!」パンッ



『うおおお!!』

僕らは急いで森に入った。



……………

………




「うおああ!何今の!」

「危ねぇ!」

「わぁ!!びっくりしたぁ…」

森の中は、丸太や刃物が四方八方から飛んできたり、落とし穴、捕獲用の網が敷かれてあるなどさまざまな仕掛けが組み込まれていた。気を抜くと一気に押し込まれる。


「ひかり後ろ!」

「くっ!!」

木で作られた槍や刃物が飛んできたが彼女の体から炎を出て、全て燃やし尽くした。



ホワッ

今何か見え

「花宇田危ねえ!!」

「っ!!」

背後から大きな丸太が迫ってきた!これまず


ボオッ!!

「ぐっ!!……あれ?」

当たると思ったその時、丸太が燃え尽きて無くなりコチラに届くことはなかった。



「ふー、間一髪だったね」

「ありがとう、ひかり」

炎を自由自在に操り、創り出す。これが彼女の能力なんだ。

「やっと名前で読んでくれたね!けど気を抜くのは早いよ。まだまだありそうだからね」

「え?」

聞き返し、彼女が指を指した方向を見ると、何人か生網や落とし穴で捕まっていたり、地面に伏している同級生の姿があった。



「ねぇ、二人とも一つ聞いていい?」

「何だ?」

「ん?」

「この訓練、もしかして皆」

「「ああ(うん)、初めてだ」よ」



やっぱりだ。その証拠に二人とも辺りを見回す姿にどこか焦りが見える。

これは本当に慎重に行かなければ、身体が持たなくなるぞ。かと言って時間制限がかかってるので、チンタラやっている暇もない。

かなりいやらしい訓練だが、実戦では似た様な状況下がきっとあるだろう。



「どうしていつも私たちに向かって来るの?私たちが通った場所に不自然な場所はなかったのに」

「紐のような仕掛けもないし、何かに触った感触もないのに急に作動して、どこに居ようと俺たちに必ず向かってくる。作動音もねえし…」



三人で背中を預けて四方を見る。

「ここからどうしようか?」

「どうしようも何も、進まないわけにもいかないだろ?昼飯抜きは嫌だ」

「とは言っても、そこら中罠だらけで進もうにも……」


周りからは依然として、どこからか叫び声が聞こえる。きっと今被害にあってる同期の声だろう。


そう言えばあの時…



僕は徐に前に出る。

「おい勝手に動くな!危ねぇぞ!」

「試したいことがあるんだ」

「何する気なの?」

「いいから見てて」


僕は右手光らせてながらそっと前へ突き出す。



ホワッ

「!!花宇田、右!」

「くっ!!」

右から突如、木の槍が飛んでくるが、予期していたおかげでなんとか躱した。二人が驚いた表情でコチラを見つめる。



「春人君、今なんで躱せたの?飛んできた方向、完全に死角だったのに」

「もしかして何かわかったのか?」

「うん。多分これだと思うよ」

今度は体全部を光らせて辺りを照らすと、蜃気楼のように歪んでいる丸い靄が、そこら中に浮かんでいた。



「もしかして、この透明な球か?」

「僕はさっき右手を光らせて見えた球にわざと触ったんだ。するとさっきみたいな罠が発動した。どんな罠かは触ってみないと分からないけど、どんな罠でも引き金になるのはこの球に触ることが必要みたいだ」

「つまりなに?この夥しい数の動く球を避けながら辿り着けってこと?」

「しかも速度も軌道もバラバラで予測も付かないときてる。だが唯一救いなのは、風邪に影響されない所と球同士が触っても作動しない所だ」



しばらく球に見合っていると甲坂くんが一息付き、覚悟を決めたような表情を浮かべた。

「二人とも、まだ走れるか?」

「行けるよ」

「少し回復したから大丈夫」

「よし花宇田、そのまま光り続ける事はできるか?」

「うん。まだ全然余裕だよ」

「ひかりは花宇田を飛び道具から守ってくれ」

「おっけー」



どうやら何かする気みたいだ。だけどこの大量の球を掻い潜って行ってたら、どう頑張っても間に合わない。



「どうする気なの?」

僕は気になって問いかける。すると彼はコチラをみてニヤリと笑う。



「勿論、正面突破だ!!」

「へ?」

「間に合わねえから別校舎に向かって猪突猛進って事だ!見えた球はなるべく避けて進む!」

「いやいや!危ないよ!」

何をどう考えたらその考えになるのか、僕には全く分からなかった。発動したらどこから罠が来るか分からないのに、一直線に走って行ったら文字通り蜂の巣だ!!



「安心しろよ!何も玉砕覚悟ってわけじゃねえから」

「けどどうやって…」

「チラッと見せたと思うけど、俺の能力を使えば大丈夫だ。二人とも、俺に寄れ」

僕らは甲坂くんの背中に寄る。


「"殻甲守(からこうもり)"」


そう彼が腕を交差させ、唱えた途端僕らの前を少し囲い込むように、緑色の壁が出て来た。

「これで前に一直線に走り抜ける。お前ら二人は俺の後に続いてくれ。色々と時間がねえから行くぞ!!」

「う、うん!!」

僕とひかりは彼に続いて走り出した。




………

……





ドドドドドドド

「のわあああ!やべぇやべぇ!」

「ヒイイイイ!!」

「わああ!!てか、私が一番大変なんだけど!!」



そこら中から罠の嵐が飛んでくる。飛び道具は勿論、落とし穴や網を彼らは壁や炎で完全に防ぎ、走り続ける。訓練学校の生徒といえども流石だ。自分の能力を精密に維持し続ける力はしっかり身に付けている。



「多分もう少しだ!!二人とも頑張れ!」

「ていうかさ!そんな技持ってんだったら最初からやればよかったじゃん!!」

「これ、まだ慣れてないからめちゃくちゃ疲れるし長続きしないんだ!」

「ていう事は、もし甲坂君が疲れたら……」

「後はひかりにおまかせです」

「私だって炎を出し続けるのは無理なんだけど!!」

ほぼ玉砕覚悟じゃないかこれ!!



ゴンッ

バギッ

「のわ!?」

僕の直ぐ横の壁から丸太が当たり、ヒビが入った。

前を見ると苦渋の表情を浮かべながら、汗を大量にかいて必死に走り続ける彼の姿があった。そろそろ限界が近いようだ。



「ぐっ!おおおああ!!」

最後の力を振り絞るように彼は声を上げる。



「!!出口だ!」

ぼくらは前の方を覗くと太陽の光が見えた。

もうすぐごーるに辿り着く!

後、十数めえとる!


「ぐっ!!」

突如、側にあった緑の壁が霧散した。

もしかしてこれは!



彼が突然目の前からいなくなる。

横を見ると、僕らの邪魔にならないように飛び退いた甲坂君の姿があった。僕はすぐに彼に駆け寄ろうとする。

「っ!!甲さ」

「行け!!」



だがすぐに彼は僕らを先に行くよう促す。彼に向かって背後から飛び道具が向かっている。

ひかりをみるが、彼女もすでに限界が近いのか先程の彼と似たような状態だった。

このままでは彼が!だがどうする!僕に防ぐ能力はない!





「ひかり!先行ってて!」

「へ?春人君!?」

僕は彼に向かって走り出す。

防ぐ能力がないからなんだ。そんなの置いていく理由にはならない!!彼には散々守ってもらったんだ。いまこそ助けなきゃいけない。



僕は彼の背後に立ち、飛んでくるものと向き合う。

「ばか!早くどけ!…ぐっ!」

僕を守ろうとしたのか一瞬緑色の壁が見えたがすぐに消える。

一か八かだけどまず一本目の槍を防ごうとする。がしかし、速すぎて目で追いきれない!!


まずい、刺さる!!




ビリ……





ギュンッ!!

ゴオオオオオ

「…え」

目の前に突如、大きく分厚い雪の壁が現れた。そのおかげで僕らに罠があたることはなかった。



「無事?」

後ろを振り返ると、女性にしては短い髪や目の色が真っ白で綺麗な人が立っていた。

「あ、あの、無事?」

「は、はい。助かりました…」

「そう」

彼女はあまり関心がないのか、淡々とした声色だった。この人自身の性格なのだろう。普段から表情の起伏が小さいのがうかがえる。


「まさか、お前に助けられるなんてな。冬村」

甲坂君に名前を呼ばれた冬村というこの女性は、首を振る。


「貴方の幼馴染に頼まれたの」

「そうか。すまねえ手間をかけて」

「そう思うなら、もっと維持できるよう頑張って」

「ぐっ、相変わらず手厳しいな」

「事実よ」


何だか言葉が鋭い。こんなボロボロの状態の彼にもお構いなしに苦言を入れる。

「それと貴方」

「ぼ、僕?」

彼女は僕の方に目を動かした。何だろう、別に睨まれているわけでもないというのに彼女にみられると、体が恐ろしく冷えていくような感覚を覚える。



「できないくせにやろうとするなんてやめた方がいいわ」

「ぐはっ」

「お、おいおい。いくらなんでもその言い方は」

「貴方にも言えることよ」

「ぐふっ」

二人して彼女の鋭い言葉の槍で胸を撃ち抜かれ地面にひれ伏した。しばらく立ち直れないかもしれない…



「ありがとー!!冬村さん!」

ガバッ

「ふおっ」

「「!!」」

冬村さんの背後から、先にごーるに到着していたひかりが思い切り抱き着いた。急に抱き着かれて体制がよろけながらも受け止めた冬村さんは、彼女に対して困った顔を浮かべている。僕ら二人はひかりの命知らずの行動に戦慄を覚えた。



「天菜さん、急に抱き着くのは危ないからやめてほしいわ」

「えへへ。ごめんごめん。私のお願い聞いてくれたのがうれしくてさぁ。へへへ」

「これくらい別にいい。そんなことより離れてほしいのだけれど…」

「ふおお…、冷たくて気持ちいい」

ひかりは抱き着きながら、冬村さんに体を摺り寄せて涼しんでいる。



「あの、聞いてる?」

「うん、聞いてる聞いてるー」

「それはほぼ聞いてないと同じ答えよ。早く離れて」

グイグイと手を使ってひかりと距離を取ろうとする冬村さん。ひかりって思ったより大胆な人なんだなぁ。



「ちぇー」

「ちぇじゃない。全くもう」

(あ……)

彼女の反応に呆れている声を漏らす冬村さんの顔は、どこか少し優しげだった。

本当はいい人なのかも。怖いけど……。



「あら?貴方以外とやるのね」

「え?」

冬村さんが僕に目を向けて、少し目を張った。

「ほらその右手」



自分の右手を見ると、僕に刺さりそうだった矢がしっかりと掴まれていた。

「え?なんで?」

「変な人、自覚なかったの?」

「う、うん掴むどころか見切れなかったから」

「まあ、一つくらいは間に合わないと思ってたから。貴方が自力で防いだおかげで、彼女のお願いはしっかり果たせたわ」



ふう、と一息付く冬村さん。

しかし、何故僕の右手に追いきれなかった筈の矢が収まっているのだろう?無我夢中でよく分からなかった。



「それよりも、早かゴールしないとご飯食べられなくなるわよ」

「はっ!!そうだった!!花宇田!行くぞ!」

「……うん」


まだ気になったが、僕は彼に続いて目標地点に走った。





………………

…………

……





「よし、合格者はこれで全員だな?では貴様らは手を洗って食堂に向かい昼食を食べてこい!ワシは脱落者たちを迎えに行ってくる」



何故か先に着いていた先生にそう言われたので、僕らは食堂に向かい席に着く。僕らがごーるに着いた時には、既に何人か到着しており僕らのようにボロボロになっていた。



「やっとご飯だぁー。じゃあせーの!」

『いただきまーす』



今日はなんと僕の好きな鳥の笹身の揚げ物だった。

「うまそう…」

「唐揚げ好きなのか?」

「うん。家では僕の誕生日の日に作ってくれたんだ」

「へぇー、て事は結構でかい家の生まれか?」

「え、どうしてそんな風に思うの?」

「だって油なんて高いからよ、毎年毎年できるかって言われたら無理な所の方が多いもんだ」



し、知らなかった。じゃあ梅やお母さん、それを知ってていつも作ってくれてたって事は…………。

本当に僕は、ただの穀潰しだったのか…。

「ま、ここのもんが美味いかは分からんがな?」

「あはは。大丈夫、きっと美味いよ」

「ほら、冷めちゃう前に食べな食べな!」



僕は少し恥ずかしかったけど、唐揚げを箸でとって口いっぱいに頬張った。





「ッ!!むぐ!!げほ、ごほ!!」

だがすぐに顔を下にして、吐き出してしまった。



「うえええ!?だ、大丈夫!?」

「お、おい!?大丈夫か!?熱かったか!?も、もしかして本当にまずいのこれ!?」

横にいたひかりが僕の背中を摩り、前にいた甲坂君が唐揚げに目を向けて少し慄きながらも口に入れる。



「え、普通に、おいしい、けど」

少し前から予感していたけど、やっぱりそうだった。



「ち、違う……」

「ち、違うって味が?」

「そうだけど、そうじゃない」

「?どう言う事?」











「味が、感じない」







「「え?」」

「こんなこと、なかったのに…口に入れても、味がなくて、ただぐにゃっとした食感だけ伝わってきて…どうにも気持ち悪くなっちゃって、出しちゃった」

「た、たまたまじゃない?」



「思えばずっと前から感じてた。ひかりと朝食べた時も、妙な石を舐めた時も、ずっと味がなかった」

「そ、そんな…」



緊張してたからだと納得してたけど。

そうか、違ったんだ。

じゃあ僕は…



「僕は、一体どうしちゃったんだろう?」





「花宇田……」

「ごめん、少し休んでくる」



僕は、そのまま食堂を後にして立ち去った。

読んでいただき本当にありがとうございます。

この作品がお気に召しましたら引き継ぎご愛読の方、お願いいたします。

ただいま、諸事情により投稿が遅くなってしまう可能性があります。大変申し訳ないですが、ご理解していただけると幸いです。



天菜ひかり

年齢 : 11歳

容姿 : 毛先とインナーカラーが赤い黒髪

   橙色の目

好物 : 甘いもの

能力 : 炎

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