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還咲の桜  作者: 占地茸
第二章  入隊編
23/32

早朝の訓練

ご飯を済ませた後、僕らは動きやすい体操服に着替え校庭に出て体操を行う。その後、基礎体力作りのために長距離走と短距離走、そして筋肉増強訓練、「筋とれ」なるものを行う様だ。



「5、6、7、8!よし、体操は終わりだ!すぐに長距離走の準備をしろ!!」

『はい!』

返事をした後にニ列程に並び、開始の合図を待つ。


「全員並んだな!?通る道はいつもと同じで、距離も同じく45キロだ!今回も能力は使うな!」

食事の際にひかりさんから今使う新しい単位について聞いておいたので、どの程度の距離かはすぐに分かった。





「……ん?よんじゅうご?」

「よしじゃあ始めぇ!!」パンッ


先生が手を叩いた瞬間一斉に走り出す。

『おおおおお!!』

「え!?わわ!!」

聞き難い発言に気を取られ、皆んなより出遅れてしまった!

「葉っぱ!!何しとる!さっさとついていかんか!」

「は、はい!」

僕は急いで皆んなの後を追う。だが、




(お、追いつけない!?皆んな全力疾走じゃないのに!?)

こっちは必死になって走るが距離が詰まることはなく、一定の距離をずっと保たれる。

さっきは皆んな手を抜いて走っていたのか!


今思えば当たり前だった。少しばかり父から体術を習っただけの僕と、毎日毎日苦行とも言える様な作業を繰り返してきた彼らとでは、歴然の差がある。何より、あの時彼らは眠気と闘いながら追いかけていた。あの速度が全力ではないことはわかる、いや分かっていたのに……。



けど皆んなに遅れるわけにはいかない!

僕は先程より走る速度を上げて、みんなの背中を追いかける。




……………………

………………

…………

……




その後、距離は少しづつ離されながらも何とか周回遅れは免れた。



「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!」

汗が滝の様に出てくる。冬場なのに程よく涼しいと思える程、体温が上昇しているのが分かる。さっき食べた物が全部出そうだ。こんなに走りづけたのは初めてだ。けど、何とかやり遂げたぞ…。



「よし!次は短距離だ!さっさと準備しろ!葉っぱ!手を膝につけずに歩いて息を整えろ!少しでも培った体力を逃すな!」

「は、はい…ハァ、ハァ」

言われた通りに僕は歩いて息を整えながら、長距離開始時と同じ場所に向かう。周りを見るが、肩で息をしている人は一人もいない。



さっきの長距離で体力をほとんど使ってしまい、歩くことすら辛いが、開始位置につく。

「よし、距離は一キロ!緩めずに全力で走り抜けろ!」

その距離は短距離ではなくないか?

「始めぇ!」パンッ

『おおおおお!!』

「く!!ふぐ!!」



今度は何とかみんなについていくが、やはり最後尾になってしまった。


気づいたが、開始の合図を聞いてから走り出すまでの反応速度が恐ろしく早く、その後も自分の最高速度を如何に維持し続ける工夫がされている。

走り方の技術だけでも僕とは天と地の差があり、先ほど使った体力の差で距離がどんどんと離れていく。




…………

………

……




何度も足がもつれて転びそうになる所を、何とか堪えて追いかけたがその背中に迫ることはできなかった。



「休むな休むな!!次は筋トレだ!30秒で息を整えろ!」

すぐに次の項目が始まる。たった30秒で息を整えるなんて出来ないが、少しでも息を整えられる様努力する。



「さあ30秒経ったぞ!初めは腕立て伏せと腹筋を50回、それを2回繰り返す!」

要は合計両方とも100回ずつってことか。さっき甲坂くんが言ってた更にえげつないというのはこういうことだったのか…。



「ではまず腕立て伏せからだ!ワシの掛け声に合わせて動かせ!……せーの!いーーーち!にーーー!」


一回が長い!

これがとてもしんどく、一番筋肉を使う瞬間をなるべく長く維持する様に出来ている。その為淡々とこなす一回よりも、ずしんと体に負担がかかる感覚がある。


これを後48回か……。しかもこの後更に腹筋も合わせてもう一度やると思うと、それだけで気が遠くなる。

「ぐ、ぐぐ」

一回一回が遅いおかげで何とかついていけてはいるがまだ息が整っておらず、力を振り絞るが酸素が足りなくていまいち力を入れ切れない。



………………

…………

……




その後、腕立てと腹筋だけでなく様々な筋とれが追加された。僕は初日の朝からボロ雑巾の様に絞られ、惨めに地面に這いつくばっていた。



「ぐぐ、か、身体が」

「お前、初日なのによく俺らについてきたな」

「先生もその辺わかってる筈だし、もう少し緩めても良いんじゃない?体持たないよ?今日もまだまだあるんだし…」

僕の姿に甲坂くんとひかりさんが心配したのか、気にかけてくれた。



「い、いや…これくらい、何とも…ない」

「そんな状態で言われても説得力ねぇよ…」

「もう少し抑えなよ。遅くてもやり遂げることが大事なんだからさ」

緩める、か。初日だし、僕はみんなと違って鍛えてきた訳でもない。ついていけないのは当たり前だ。皆んなの最初の頃は此処まで気づかなかったのかもしれないが、僕は途中入学だから彼らの今の状態に合わせた内容で、きついものばかりなのも分かる。


もう少し、楽をしても良いのかな?



すると先生や他の生徒が僕らへ近寄ってきた。それに気づいた僕らは先生の方は目を向ける。するとひかりさんがスッと立ち上がり、先生にくってかかる。


「先生!いくら何でも飛ばし過ぎだよ!同じメニューやらせるなんて、私たちですらキツいものなのに…。それに、最初ここまでひどくなかったよ?何で別のメニュー用意してないの?」

「む?ワシは行けると思ったから同じ内容をさせたまでよ。さらに此処にきてまで甘えた考えでは困るからな。その洗礼も兼ねてのことだったが………。まぁ、少しばかり些かやり過ぎたか?」

「まあでも、甘い考えだと困るのは分かるけどな…」



「ナオまでそんなこと言うの!?アンタだって最初なんか、これより緩いものでヒイヒイ言ってたじゃん!!」

「それを言われると耳が痛いけどさ…、でも事実だろ?」

「そうだけど、うーん、そうなんだけど!うーん!でもやりすぎだよ!」

ひかりさんは僕用の別の内容を請求し、先生と甲坂君はもし僕が諦めなければ、同じ内容を続けさせたい様だった。



「あれ、転入生大丈夫か?」「なんか辛そうだね?」「そりゃそうだよ。私たちについてきただけ凄いよ」「でも確かに今さら途中入学されてもなぁ。俺たちとはもう力の差が出ちゃうのは仕方ないし」


他の生徒も、この二つの意見で揉めていた。先生も後ろの意見を聞いてどうするか迷っている様だった。



情けない。



情けない。




僕は、なんて情けないんだ!

僕はここに来ても尚、甘い考えをしていた様だ。この学校には、お父さんの様になろうと日々努力し続けるためにきた筈だ。こんな事では一生かけても成りっこない。



此処に入った理由は何だ。わざわざお母さんの記憶を消してまで、自分の帰る場所を無くしてまで来た意味は何だ。



僕は地面を手のひらで押して、身体を持ち上げる。

「春人君!」

僕はまだ彼女が僕の身体を支えようとするが、止める様に目で訴える。何か言いたそうだったが、その目線の意味に気づいてくれたのでその場で止まる。



身体中から悲鳴が聞こえながらも、僕は何とか立ち上がった。



此処にきた理由、


それは、梅と交わした約束を、



お父さんとお母さんとの願いを叶える為だ。




「問題、ありません。引き続き、同じものをお願いします」

その発言に、ひかりさんと他の生徒は驚き、甲坂君と先生は感心した表情を浮かべた。

「え!?本気!?」

「ふむ」

「へえ」



僕は先生にまっすぐ目を向け、暫く僕と向き合った後何かに納得して頷く。


「貴様の覚悟、しかと分かった。ではこのまま続けよう」

先生は振り返り、指示を出していた場所に向かう。

「ちょ、先生!」

「ひかり、もう無理だ。あーなったらもう聞く耳持たねえよ。それに、こいつ自身がそれを望んだんだからな」

「だけど……」


「僕の為にありがとうございます。ひかりさん」

「春人君も何で!無茶だよ!」

「……それじゃダメなんです」

「え?」

僕の答えに甲坂君までもが、不思議そうに顔を傾ける。




「それじゃあ、約束が守れない気がするんです」

「約束?」

「はい。それを叶える為には、きっとこれを乗り越えなきゃいけない」

「どんな、約束?」



「……ごめんなさい。その、まだ、言いたくないです」

「…そっか」

その答えにひかりさんは肩を落とし、眉尻を下げる。

甲坂君も答えに期待していたのか、鼻でため息をつく。


するとひかりさんが眉尻を下げながらも笑いかける。

「じゃあ、いつかまた聞いてもいい?」

「はい。勿論です」

僕は彼女へ笑い返す。



「ん、ありがとう……後それと」

「何でしょう?」

「敬語、やめようね?さん付けも」

「う、善処します」

「します?」

「もうしない!もうしないから!」


焦って直した返事をしたけど、彼女はそれで満足したのか満面の笑みを浮かべる。

「よろしい」


ダメだと言われてたのに、自然と敬語を使っていた。だけど敬語を使ってしまう様な雰囲気がたまにあるんだよなぁこの人。



「花宇田」

「ん?」

高坂君の方を見ると腕を組んで、目を少し細めながら笑顔を浮かべていた。

「気持ちは分かる」

「!…ふはは、やっぱりそうなんだ」

「何のこと?」

ひかりは僕らの会話の意味が分からないので、顔を傾け僕らに問い詰める。

僕らは顔を見合わせた後笑い、二人同時に彼女に向かって口を開く。



「「いえ、何でもございません」」


「もう!二人とも!!」

その答えを聞いて、ひかりは頬を膨らました。


読んでいただき本当にありがとうございます。

この作品がお気に召しましたら引き継ぎご愛読の方、お願いいたします。

ただいま、諸事情により投稿が遅くなってしまう可能性があります。大変申し訳ないですが、ご理解していただけると幸いです。



甲坂直也

年齢 : 11歳

容姿 : 少し緑掛かった黒髪(焦緑みたいな色)

   背が高く、ゴリマッチョ寄りの細マッチョ

好物 : 揚げ物全般

能力 : 物を頑丈強化したり、強度の高い緑色の壁を作り出す。

   

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