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還咲の桜  作者: 占地茸
第二章  入隊編
21/32

賑やかな夜の入学式

「は!…知らない天井だ」

ここは何処だ?僕は確か、風に吹かれて階段を転げ落ちた。そのあと意識がなくなって、何故か建物の中にいる。なんか最近、意識を失う機会が多い気がする。




「あ、起きた?」

「え?」

横を見ると、赤色の毛先にかけて黒色へ変わる髪を肩まで伸ばし、橙色の目をした女の人が綺麗な顔を寄せてきた。



「うわぁ!?いだ!!」

びっくりして後ろに引くと、少し高くなっている寝具のせいで、ひっくり返ってしまった。



「わあ!大丈夫?」

女の人が回り込み、こちらの様子を伺う。



「なになに!?凄い音したけど!」

「起きたの?え!?男の子だよね!?」

「おいおい大丈夫か?」

「顔見せろ顔!此処に来て早々、天菜ちゃんの看病付きたぁ太え野郎だ!許すまじ!!」

物音を立てて気づいたのか、奥の扉から女の人と同い年くらいの人達がゾロゾロと入ってきた。

なになに!ここ怖い!

と、とにかく何か言わなくちゃ。



「す、すみません。起きて早々お騒がせを…」

「別にいいよ。いつもこんな感じだし」

どうやらこの人は天菜って言う人らしい。

優しそうな人でよかったぁ。



「そ、そうですか。ならよむぐ!?」

そう思った矢先に、天菜さんがいきなり両手で僕の頬を挟み、じっとこちらを見つめる。

「うお!もちもちだ!」

「急ににゃんでしゅか!?」

「…」

訳がわからず意味を聞いたのだが、何も答えてくれない。


き、急に黙った。…え??本当になんなの?

というか横からの圧が怖い。何故か知らない人に恨まれてる。まだ何もしてないのに。恐らく今の状況が原因なのは分かるが、その状況を作っているのは僕じゃなくて彼女だ。

しかしこれを言っても、火に油を注ぐ結果になるのは容易に予想できるので、あえて口を閉じる。



「へえ、君が編入学生ねぇ」

「へ?にゃんでしょのことを?(なんでその事を?)」

彼女は優しく頬から手を離してくれた。

もしかして…。



「私の名前は天菜ひかり。ひかりでいいよ!あなたの名前は?」

「は、花宇田、春人です」

「はると、ね。名前覚えた。これからよろしくね!!」

「あの、もしかしてここは」




「そう!ここが東鶴舞訓練学校だよ!」

「ありがとうございます!」

「ええ!?急な感謝!どうした!」



天菜さんが手を広げて紹介してくれたが、急に感謝されたことに驚く。

だがあり得ないのだ。僕が意識を無くした場所はまだまだ遠く離れた場所だ。あそこから無意識でここまで歩いてきたなんて、そんな訳がない。



「僕、ここにくる途中意識無くしちゃったんです。だからここにいることがおかしくて。誰かが運んでくれたとしか思えなくて、その方は今ここにいらっしゃいますか?ぜひお礼をしたいのですが」

すると天菜さんは顎に手を当て、頭を捻り出す。



「うーん、それについてなんだけどさ」

「俺が話すよ」

「あ、ナオ。やっと来た。遅いよ?」

「仕方ねえだろ。風呂入るの遅れたんだから」

天菜さんが振り向いた方向へ顔を向けると、薄っすら緑が見える黒髪を短く整えており、背が高く屈強そうな男の人がこちらに歩いてきた。


その姿を見た瞬間、直感する。

この人、相当強い。


直と呼ばれた男の人は僕の目の前に座りこみ、何処か敵を見るかの様な目でこちらを見る。



「よう、編入生。俺は甲坂直也って言うんだ」

「は、初めまして、花宇田春人です。えと、貴方が僕をここへ?」

甲坂さんはすぐに首を横に振る。



「いや、違う。お前は自分でここまで歩いてきた」

「え?」

恐らく事の顛末を知っている筈の人までもが、僕が自分の足でここまで歩いてきたと言った。だが、自分にはそんな記憶は一切ない。



「そ、そんなはずはないと思うのですが」

「ま、そう思うのも無理はないな。けどお前、本当に意識が無いままここに辿り着いたんだぞ」

彼の言っている表情に嘘臭い所は見当たらない。

どうやら本当に気付かぬ間に学校に辿り着いたらしい。



「そんな奇跡があるのか…?」

「まぁ生きてりゃそんなこともあるだろ。なんにせよ、これからよろしくな!俺のことは好きなふうに呼んでくれていいぜ」

そう言うと彼は笑って手を差し伸べてくれた。だけど何処か含みのある笑い方だ。その様子は、まるで何か起こっても対処できる様にこちらを警戒している風に見える。


うーんでも、失礼があっちゃいけないし…。




「じゃ、じゃあ、甲坂くん。よろしくね」

差し伸べられた手を握り返して、握手をする。

「おう、よろしく花宇田」



なんか初めてだ。同じくらいの歳の人に優しくされるのは。

ほえー、同い年の人の手ってこんな感じなのかぁ。




ニギニギッ

「お、おい花宇田?その、もういいか?」

「んえ?……はぅあ!!ごごごごめん!」

握手の時間にしては随分経っていたらしく、後ろでは同級生と思われる人達が騒ついていた。



「ねぇ今の…なんか凄いドキドキしたんだけど」

「わ、私も」

「お、俺もなんか」


「皆、新世界へようこそ」

「知っているのか雷電!」

「うむ、あれは…………」

一人が眼鏡を光らせ、何かの説明会を開き始めた。

何故かわからんが、誤解されてる気がする!止めなきゃ今後がやりづらくなる気がしてならないぞ!



「あ、あの!」

「貴様ら…」

『あ』

止めようとしたら、彼らの背後に恐ろしい程に怒気を放った老齢の男性が立っており、呼びかけられたと同時に全員の動きが止まった。

か、顔が四角い!



「奴が目覚めたら真っ先に呼べと言ったであろうがぁぁ!!」



途轍もなく大きな怒声が起きたばかりの耳を刺激する。

木造のせいなのか、建物の壁が揺れた。




………………

…………

……





さっきまでの騒がしさは嘘の様に無くなり、甲坂くん以外の生徒が居なくなった頃。

今僕は、四角い男性と向かい合う様に座っている。

まだ少し頭がクラクラするけど、そんな事考える雰囲気では無いことは明らかだ。

「出会って早々に叱るとは思わなんだ」

「すみません」

(わざと騒がした訳じゃ無いのに…)



「わしはここの教官を務めとる、原栄(はらさか)と言うもんだ。お前が編入学生の花宇田春人で間違いないか?」

原栄さんは背筋を立てて腕を組み、毅然と座ってこちらを見定める様な目線を向ける。

「は、はい!間違いありません!」

僕は第一印象が大事だと、身に染みて分かっているので元気よく返事をした。



「色々と話は聞いとる。龍崎大将に啖呵を切ったそうじゃな」

「ゔっ!!」

うん、第一印象は最悪だ!

と言うかもうそこまで伝わっているのか。まぁそうだろうな。どんな奴かと連絡しておかなければならないし。この感じだと、いい風には伝わってないんだろうなぁ。



「花宇田春人。わしのことは原栄先生、又は教官と呼ぶがいい。貴様のことは、ふむ、歳の割には身体が小さいな。そうだな貴様のことは、葉っぱと呼ばしてもらうぞ」

「はっぱ?」

「うむ。童と春人を縮めて葉っぱだ。文句あるか?」

「い、いえ、ありません…」

原栄さんは腕を組んで文句は言わせない様な表情をみせる。

なんか、いきなり変なあだ名をつけられた。みんなに付けてるのだろうか?



「なんじゃそら?あだ名の付け方がなってねぇな。花宇田、因みにこの人のあだ名は」

「直也!貴様は黙っておれ!」

「はいはーい。たく、癇癪ジジイが」

「聴こえとるぞクソガキ!」

「やべ!!逃げろ!!」


甲坂くんは急いで後ろの扉から慌ただしく出て行った。

甲坂くんのことは普通に呼んでるってことは、僕にだけ何故かあだ名をつけられたって事?

まだ授業も受けてないのに、色々やらかしたせいで早速目をつけられたぞこれ。



「はあ、全くあのクソガキは何度言っても治らん」

「あはは」

困り顔で愚痴を溢す先生。だが、僕には今のやりとりの中に、何処か愛情が込められている気がした。


「仲がよろしいんですね」

「今のどこにそう感じる部分がある?噂通りおかしな奴だな」

「ふふ、すみません」

どうやら自覚がない様で、不思議そうにこちらを見る。厳しい人だけど、その真は優しく情にとても深い性格なのが窺える。

だがしかし、すぐに先生の顔が、また何かを見定める様な目線になる。先程よりもさらに険しい顔つきだ。



「一つ貴様に確認しておくことがある」

「は、はい。なんでしょう?」

「貴様の能力についてだが、体が光るだけだと聞いているが、本当に()()()()()?」

「…え?」


これはまた意図が分からない質問が飛んできた。それだけも何も、殊人には一つしか能力はないのが常識だ。訓練学校の、それも軍が設営した学校の先生がそれを知らないわけがない。

「どうなんだ」

「は、はい。一つだけです」



そう答えると、先生は顔を俯き、頭を悩ます。

「ふむ、そうか……。では自覚はないのか」

「え、自覚がないとは?」


「いや、何でもない。忘れてくれ。それよりも葉っぱ、貴様はどれほど明るく出来る?」

「えっと、結構明るく出来ます!」

先生は、入口の方へ近づき小さい転轍機に指をかける。

「明かりを消す。どの程度か見してみろ」

「はい!」

パチッという音と同時に暗くなり、周りが見えなくなった。



「むんっ」ビカッ

少し力を入れた瞬間、辺り一帯が白い光で先ほどの部屋の明かりよりも明るくなる。先生は目を細め、手で覆いながらもこちらを見つめる。

「うお!本当に明るいな。目が痛くなるほどだ」

「やろうと思えばまだまだ明るく出来ます」


「それに展開も素早い。やり方次第では実戦でも使えるやもしれんな」

「え、そんな。ほ、本当ですか!?」





始めてこの能力を褒められた。

今まで使えない能力、雑魚能力だと言われて、自分自身もこの能力に対してそう思ってきていた。それを使えると、戦えるものだと言ってくれた。



その言葉が、僕にはとても嬉しくて堪らなかった。






「まあ、使えるようにするかは貴様次第だがな。よし、能力を解け」

「は、はい!」

僕はすぐに光を引っ込めた後、再度先生に向き合う。



「改めて葉っぱ、貴様の入学を許可する。貴様には明日から授業、実技共々参加してもらう。その為の用具も確認した。持ち物は既に男子寮に運んである」

「あ、ありがとうございます!先生、これからご指導なほど、よろしくお願いします!」

色々とあったがなんにせよ、無事に入学できたぞ!




「うむ。では葉っぱ、明日に備えて風呂に入り、就寝だ。朝は毎日5時半に起床する。ほら、ここの見取り図だ。わかったらさっさと行け!」

「はい!失礼します!」バタンッ



挨拶をした後、見取り図を見ながら浴場へ向かう。

今いた場所はどうやら保健室みたいだ。



ん?そういえば階段から落ちたはずなのに傷がない。

どうしてだろう?






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「はあ、ただ静かに、波風立てずにタバコを吹かしていただけの俺が、何故こんなことになったんだ。あのクソババアめ。このツケは、ただではすまさないぞ」






読んでいただき本当にありがとうございます。

この作品がお気に召しましたら引き継ぎご愛読の方、お願いいたします。

ただいま、諸事情により投稿が遅くなっています。大変申し訳ないですが、ご理解していただけると幸いです。

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