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還咲の桜  作者: 占地茸
第一章  旅立ち編
2/32

嘘つき

どうも占地茸です。

初投稿かつ完全処女作品なので拙い文章で申し訳ありませんが、気に入っていただいたら幸いにございます。

感想の方も受け付けているので、ダメ出しや改善点なども感じられましたら、自身の文質も上がるので気軽に書いてくれるとありがたいです。


どうぞよろしくお願いします。


「…あえ?」

見知った天井だ。むくりと起き上がると、ここが家だということに気づく。お父さんがいつの間にか寝ていた僕を連れて帰ってきていたみたいだ。手当もしてくれている。



「ああ、やっと起きたのね」

「よおさん寝とったねぇ、坊っちゃん」

優しい二つの声の方に振り向くとお母さんとこの家唯一の付き人、梅が布団のそばで座っていた。お母さんは眉尻を下げていて心配そうにこちらを見ている。



まずい。僕に何かあったことを完全に察している。

何か言わなきゃ。

「あ、あのねお母さん。実は」

「大丈夫?何があったの?貴方が目を腫らしてお父さんに担がれながら帰ってきた時はびっくりしたのよ?お母さん心配で心配で仕方なかったわ。あ、今も心配しているのよ?身体中怪我だらけだし頭からも血が出ていたから寝ている間に絆創膏と湿布、包帯もたくさん巻いたの。動きづらい?キツくないかしら?熱も出るかと思ってね、氷水の枕と濡れタオルを用意したの。あとは」

始まってしまった。こうなったら言い終わるまで止まらないぞ。お母さんは体が少し弱いのに心配性だから、あんまり興奮させちゃまずい。


「まぁまぁ楓さん。その辺で落ち着いてな。そんな慌てとると、坊ちゃんが落ち着いて話せへんよ」



止まらなくなったお母さんを梅が止めてくれた。

助かったよ梅。

だけどお母さんは頬を少し膨らます。

「だって、お父さんに聞いても笑うだけで何があったか言ってくれないんですもの。最後に「アイツは、いい子に育ってるよ、ありがとうな」って言うだけで…。心配してるのにそれにそれに、なんだか私たちだけ除け者みたいでちょっと嫌になっちゃうわ」

「まぁまぁ、旦那さんが言わんのは何か理由があるんよ。」


どうやらお父さんは、僕に気を遣ってお母さんには話していないみたいだった。お母さんだけでも心配かけたくないと思っていた僕にとっては、とてもありがたかった。



「お母さん」

「ん?なにがあったの?お母さん、何でも力になるから。ゆっくりでいいのよ。相談してみて」

僕は少し間を開けてから、決心して




「なんでもないよ。転んで怪我をしちゃっただけなんだ」




お母さんに嘘をつくことにした。

これ以上心配かけたくない。余計な負担を増やしてお母さんの、体調を悪くさせたくないと考えたから。そんな理由だけどいいんだ。と自分を納得させながら、笑って僕は嘘を吐いた。

「え?」

「森の中で遊んでいたら、転んで変なところに入っちゃってさ。帰り方がわからなったから、怖くなっちゃって泣いちゃったんだ。心配かけてごめんね?」



だけどお母さんはまだ心配そうに見ていた。

「本当に?首にもあざがあったけど、こんなところも擦りむいたの?」

「え、首にも?」



少し驚いて首に少し触れたら、ツンッとした痛みが走った。

変だな。皆からは首なんか絞められてないぞ?ましてや転んでも怪我なんてしにくいし。



「お、やっぱり起きたみたいだな」

考えて混んでいると奥の廊下からお父さんが歩いてきた。



「なるほど、わかったよ」

一瞥して、状況と僕の答えを理解したようだ。

やれやれといったしぐさを見せて、顔を上げる。



けれど首を触る僕を見て、すぐに神妙な顔を浮かべた。


「なあ春人、その首なんだが」

「ん?」

「お前、何があったか覚えているか?」



どう言う意図なんだろう。状況を理解してくれているはずなのに、わざわざ聞いてくるなんて父にしては珍しい。

「…いや、何も覚えていないんだ。その、転んだ時に擦りむいたとかかな」

僕は正直に答えた。


それを聞いて、お父さんは少し間を開けてから「そうか」と一言だけ発した。




だけど僕は見てしまった。

たった一瞬だけ、ただ一言発したその瞬間だけ、父の顔が



ひどく悲しそうな表情をしていた。





………………………

…………………

……………

………






その後、後僕は自分の部屋に戻って考えていた。

あまり気にしないようにしていたが、父の最後の顔が気になって仕方がなかった。

何故お父さんはあの質問をしたのか。その問いに答えたら何故あんな表情をしたのか。けれど本当に何も思いつかない。

「…やっぱり、情けないって思ってたのかな」



「そんなこと思ってたなんて、私は思えへんよ」

「っ!!」

びっくりして後ろを振り返ると、いつの間にか梅が部屋に入って座っていた。僕の反応を見て、目を細くしてクスクスと笑っている。襖の引く音なかったぞ。


「びっくりしたぁ。梅、入る時は一声かけてよ。入れないわけないんだからさ」

「いやぁごめんねぇ。本当は声かけよう思おとったんよ?ただ、坊ちゃんがあんまりにも考え込んでようだったから。折角やし、少し脅かしたろうかなって意地悪したくなったんよ」


時々、彼女はこうして僕をからかってくる。毎度とても楽しそうに笑うものだから、なんだか怒る気もならないのがずるい。

けれど今日は少し意地を張ってみる。

「ふん、もう梅なんて知らない」

「あぁごめんごめん。もうせえへんから、ンフフ。坊ちゃん、許して。ね?」

「そう言っていつも守った試しが無いじゃないか」

「今回はホント。だから、ね? お願い」


梅の顔はまだ笑っている。きっと今回も守らないなんてことは分かりきっている。けど、僕自身嫌とは思っていないので許すことにした。

「ホントだね?じゃあ許してあげる」



そう言うと、とても嬉しそうにまた笑ってくれた。

「やったぁ、坊ちゃんは本当に優しい子やねぇ。少し嫌われてしもうたかと思ったわぁ。やっぱり坊ちゃんは出逢うた時から、ずっといい子やね」


許すと調子に乗って世辞が飛んでくるのもいつもの流れだ。

やれやれと思いつつも、何故わざわざ来たのか疑問が浮かぶ。

「ところで、何で僕の部屋に来たんだ?」



それを聞いた途端、梅は姿勢を正して笑うのをやめた。

「坊ちゃん、本当のこと、お母さんに話さへんの?」

「っ…。何の事?」

「惚けんくてもええんよ。たとえ聞いても、私から楓さんに話すなんて、そんな無粋な真似はせえへんから」


嘘をついていたことはバレているようだった。

まぁ何となく分かってたけどね。



「やっぱり見てたのか、まぁやるとは思ってたけど」

梅は人の心の揺らぎを視ることができ、この能力のお陰で彼女に隠し事をできた試しが一度もない。


「…ん。坊ちゃんには悪いと思うたんやけど、その、目ぇ腫らして苦しそうに寝ているの見たら、私もやっぱり心配が勝ってしまって、ごめんね?」

眉尻を下げ、心を視てしまったことをとても後悔しているようだった。でもいつも優しく声をかけてくれるお陰で、助かっていることがあったのは事実だ。


「いいよ、元々梅には色々話してるし。今更ね?それにいつも心配くれての行動だから」

ここで、今回の件も彼女は察しただろう。




「やっぱり、その、今日も虐められてたんやね?」

「…うん」


それを聞いた梅は、僕の手を両手で優しく包みながら、悲しい表情を浮かべた。

「揺らぎ方が同じようだったから、何となく分かってたんやけど。…坊ちゃん、もう行くのやめよう?お願いやから。もう泣いとること見たくないんよ。あの揺らぎ方が、見ててとても辛い。私と一緒に遊ぼ?家にあっても楽しいこと、よおさんあるし、お勉強も教える、だから」

「梅」

「っ…」



彼女の名前を呼ぶ。

まだ何か言いたげだったが、止まってくれた。

ありがとう。けどいつまでも守られてばかりではいけない。

だから、ごめんね。



「お父さんが、強いって言ってくれたんだ」

「…うん、そうやね。分かってる。けどね」

「本当の強さを、僕は持ってるんだってさ」

「…本当の、強さ?」



お父さんに励まされた時の言葉を、自分にも言い聞かせるみたいに、刻み込むように、梅に伝える。

「うん。それは心だ。どんなにへこたれても諦めずにいつか必ず立ち上がる、立ち向かえる心を持ってるひとが、この世で1番強いんだって」

「…」

「だからさ、梅。心が視える君には信じられないかもしれないし、頼りなく見えるけど、側で見守っててよ。僕、皆んなよりももっと強くなって必ず勝つからさ」



「…うん、分かった。坊ちゃんのこと、信じて見守っとるよ」

梅は頷き、眉尻を下げながらも、笑ってくれた。僕を信じるって言ってくれた。この信頼に応えられる様に、この笑顔をもっと素敵にできる様に、精進しようと改めて心に誓う。



「よし、じゃあ、今から私とあーそぼ?」

「え?わわ、むぐっ」

梅はまた、にやけ始めて手を引いて僕を抱き寄せた。


「もう、急に引っぱったらびっくりするだろ?」

「ンフフ、男の子って言っても、坊ちゃんはまだまだ身体はちいさいなぁ、簡単に包み込めたわぁ。大人になるのもとっても楽しみやけど、小さいままでも坊ちゃんは可愛らしいけん、このまま大きくならんでほしいわぁ。ねぇ坊ちゃん。まじないかけてええ?坊ちゃんが大きくならんでぇーってまじない、どお?」

「もうそれ呪いじゃん。流石に困るよ…。君がやったら、なんだか本気で効きそうだし」

「アハハハ!呪いなんて、ひどいわぁ、んふふ」

僕を抱きしめたまま、また楽しそうに笑う。

「全く、もう」


だけど、あの時の顔が何故かチラつく。

(なんでお父さんは、あんな顔を浮かべたんだろう?)

納得していて頭もスッキリしているのに、何処か心が晴れなかった。







読んでいただき本当にありがとうございます。

この作品がお気に召しましたら引き継ぎご愛読の方、お願いいたします。

ただいま、諸事情により投稿が遅くなってしまい、大変申し訳ないですが、ご理解していただけると幸いです。





原神の煙緋はかわいいですね。

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