表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
還咲の桜  作者: 占地茸
第一章  旅立ち編
15/32

二人知れずの旅立ち

前回よりは短くしました。他にも付け足したかったけども、脱線事故起こすので止めました。

あ、でも物足りないと感じた方いらっしゃいましたらつけたそうかなぁと思うとりますはい。

「待って、春君」

先程まで黙ってみていた男が止める様、僕に話しかける。



「何ですか?まだ慣れているわけではないので集中したいのですが…」

梅が僕を覚えている状態は今後を考えるといろいろと都合が悪くなる。今ここで全ての遺恨を断っておきたいし、何よりあなたには関係ないことなのになぜ止めるんだ。



「梅さんの記憶は、消さない方がいいと思うよ」

急に何を言い出すんだこの人は。なぜ梅をかばうようなことをするのか全く分からない。



「ここで僕が彼女の記憶を消したとしても貴方には関係ないと思いますが?」

僕は彼の意見を突っぱねた。

だがこれだけではひるみもせず、彼は僕が必要としてないのにも関わらずさらに言葉を足した。




「私のことなんてどうでもいい。だがここで彼女の記憶を消すのは、君にとって得策ではないと言ってるんだ」

「はい?」

理解しがたいことを告げられ、意識が男の方へ向く。



「意味が分かりません。なぜそう思うのですか?」

理由が知りたい。彼がわざわざ止める意味を。僕にとってとは言っていたが、きっと彼にとっても何か不都合なことがあるのだ。それを探ろう。




「……、質問を返すようで悪いのだが、君は彼女たちが大事かい?」

「??当前です」

「私が言った意味は、これからも、てことだ」

「…」



質問の意図が読めない。その答えを聞いて何になるんだ?なんだか、手の内を探られているようで正直に答えていいものか悩む。



再度目の前にいる梅の顔に意識を向ける。今も目から涙をこぼしており、その雫達が僕の手を濡らす。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、こんなに悲しんでいるのは自分が何かやってしまったからだろう。

嗚呼、つくづく自分が嫌になるな。これからもずっと大切な人にこんな顔をさせるなんて。



この選択は絶対によくないけど、今は建前でも嘘をつきたくない。

だから、笑って答えよう。





「当たり前じゃないですか。僕は二人が、梅とお母さんが大好きです」






「坊ちゃん…」

「…そうか」

僕の答えに、男は何かに納得したように目をつぶりながら頷く。そして再度目力を強くして僕に語り掛けた。











「なら、彼女の記憶を消すな」

「いえ、だからこそ消すんです。…僕への情けですか?感情で選んでいい問題じゃないんです」

「違う。確かに、今の君にとっては不都合なことばかりかもしれない。だが今後のことを思うと、誠士郎との、君のお父さんとの約束は守りにくくなるぞ」

「!……なぜ?」

(少し、尻尾を出したな)



「君がこれから向かおうとしているのは、正直言っていつ死んでもおかしくない、危険な所だ。もし君が何らかの理由で二人を守れなくなった場合、一体誰が二人を守るんだ?」

「…それは」

「それに父親の死まで消したってことは、君は彼の代わりになるつもりなんだろう。君が死んだあとは、どう誤魔化すつもりだ?」



この人、やっぱり手練れの軍人だ。あれだけの情報で、僕が今後、二人にやろうとしていることまで見抜かれてる。何が小心者だ。ネコの皮をかぶってるくせに。



「君こそ一時の感情で動いてはだめだ。改めて言わしてもらうが、私のためじゃなく君が今後、彼との約束を本当に叶え続けるのなら、彼女にも協力してもらわなければならないよ」

彼が行ったことは最もであり、梅の記憶を消したことによる今後の損失の方が大きいだろう。

だけど…


「だけど、それは」

「そう、これは君が思う完ぺきな守りとは違う。だから今は力を蓄えるんだ。君が成長して、彼と同じくらい、いや、彼を超えるくらい、本当に強力な力を手に入れた時に消せばいい。それまでは彼女の記憶は預けておくんだ」

「…」













「……そう、ですね」

僕は惜しみながら、梅から手を離した。梅は途端に座り込み、上った肩の緊張を抜く。

男は座り込んだ梅に、片膝をついて彼女を慰めるように近づいた。



「くそ…」

お母さんだけでなく、お父さんの約束も先延ばしだ。本当に自分の弱さに腹が立つ。



「ごめんお父さん。ちゃんと約束を果たすためにはまだ時間がかかりそうだ」

僕は目の前の炎に向って少しだけ気持ちをこぼす。




---------------------------------------------






「ハァ、ハァ、ハァ」

息が詰まりそうな空気がなくなり、一気に緊張が解ける。



片膝をついて私の様子をうかがっている。この男のおかげで何とか坊ちゃんの記憶を守ることができたので、先ずは感謝しよう。



「大丈夫でしたか?」

「あ、ありがとうな」

私が応えられる状態を察したのか、私の肩に手を置き彼は急に無表情になる。























「これは貸しです」

「!!」

彼が小声で話しかけてきた。どうやら坊ちゃんに聞かれたくないようだ。




「あ、あんた…坊ちゃんに何を!)

!?…声が出ていない!?

「今、あなたの声は私にしか、私の声はあなたにしか聞こえていません」

こいつ、殊人か!!どうやら私に触れているのが能力の発動条件のようだ。すぐに払いのけようと手を出そうとする。



「もしこの手を払いのければ、彼との記憶はどうなるでしょうか」

(!!…貴様ああああ!!)

くそ!完全に記憶が人質に取られた!彼に貸しも作ってしまった!形勢が悪すぎる。

「そう怒らないでください。あなたにはお願いがあるのです」

(なに!?)



「貴方には彼と接する際に、私を既に知っている口ぶりでいてほしいのです」

(なぜそんなことを?)

「これを守ってくれれば、今回の貸しは返したことにしてくれて構いません。私がこれ以上貴女に何か頼むこともありません。それと彼がもう一度消そうとしたときは、何とか交渉してみます」



狙いが分からない。なぜわざわざそんなことを?。何よりわたしにとっては、割に合うような内容ではない。いくらなんでもこちらに都合が良過ぎるのだ。知った仲を演じて何のメリットがあるのだ?

心を覗くが、此奴、精神の水面に波一つ立たない。考えも読もうとするが、任務の事のみで深く知ることはできない。なら更に意識すれば!!




「では頼みましたよ」

(!!ま、待て!」

自分の狙いに気づいたのか、私から手を放して離れた。






「梅?どうしたの?」

能力はやはり触れることが条件のようで、彼が離れたとたんに声が出るようになった。

坊ちゃんは不思議そうにこちらを見ている。この男は危険だと伝えなければ!!

「ぼっ!!…っ!!」




伝えようとした瞬間に、気づいた。

嵌められたのだ。今ここで彼を危険だと伝えたら約束を違えたことになり、私の記憶は消されてしまう。そうなれば私は、もう二度と彼に逢うことができなくなる。私は今、あの男に一生続く呪いを撃ち込まれたのだ。

ここで伝えなければ彼の身に危険が降りかかる。だが、彼を知らない世界など生きていたくない。

「私は、その」



男の目を見る。その目は真っ黒でただ見定めるようにまっすぐ私を見据える。

まるで、言えばわかっているなと言わんばかりに瞳孔が開いている。

私はまた坊ちゃんに目を向けた。





彼が小さい頃から、ずっとお世話してきた最愛の人。

始めて一緒に遊んだ楽しい日、初めていじめの事を打ち明けてくれた日、少し怒らしてしまいしばらく口をきいてくれなかった日々、そして許してくれて抱きしめあった日、怪我を直してあげた日々、一緒にご飯を食べた日々、私の料理を美味しいと言ってくれた日々、川の字になって一緒に寝た日々、







始めて逢った時、






















始めて、()()()()()()










その全ての日、すべての瞬間が走馬灯のように駆け巡った。




嫌だ。



これを、この沢山の宝物を、私だけの宝物を失いたくない。






「……ううん。何でもない」



嗚呼、本当に私は救いようがない程に、惨めで愚かな女だ。






------------------------------



…………………………

……………………

………………

…………

……











「準備はいいかい?」

後ろから男が声をかける。すでに目の前では日は少し上ってきており、少し辺りは明るい。



「ええ、といっても、燃えた物の後かたずけと、墓を作っただけですが」

墓は簡素にしか作れなかったが、場所はあの花火が見える特等席。

家の中に作りたかったが、さすがにそういうわけにはいかなかった。



「持ち物は本当にそのお面だけでいいの?」

「ええ、これだけしか残していませんから……」

僕は、頭に巻きつけてある、最期に父から貰ったお面を撫でる。

「…そうか」



「君の新しい持ち物は、私が責任をもってそろえよう」

「何から何までありがとうございます」

「いいんだ。むしろこれくらいしかしてやれない」



「…先に車で待っているよ」

「…わかりました」

「…ゆっくりでいい。お参りが終わったら来てくれ」

そう言って男は、待ち合わせ場所へ歩いて行った。





お父さん、必ず二人を守れるくらい、お父さんみたい、いや、お父さんを超えれるように強くなって、またもう一度ここに戻ってくるよ。その時には、本当の強さを持っているかはわからないけど、期待に応えられるように頑張ってくる。



「坊ちゃん…」

すぐ後ろで梅が声を掛けたので、振り向く。

心配そうな目で僕を見つめる。だが何処かバツが悪そうな様子だ。



「梅、怖い思いをさせてごめんね」

「……ううん。私の方こそ、直ぐに気づいてあげられんかった」

「梅?」

梅はかがんでゆっくりと僕を強く、愛しむ様に抱きしめた。



「ごめんね……。ごめんね……。坊ちゃん、うぁあぁ、ああ"あ"あ」

梅は抱きしめながら、また、大粒の涙をこぼす。

僕も返すように抱きしめる。

「大丈夫だよ。梅は何も悪くないさ」

「ちがう……違うんよ……。私が……」

僕は体を少し離し、彼女の顔が見れるようにする。お母さんの雰囲気を少しだけ緩くしたような妙齢な女性。いつも、何時もの拍子にドキッとさせられてきた綺麗な顔。

彼女の顔をしっかり見るのもこれがきっと最後だ。



「お母さんの事、少しの間お願い」

「……う、ん」



ゆっくりと体を離すと、「あっ」と名残惜しそうに僕を見つめた。






「梅、お母さん、お父さん。本当に今までありがとう。行ってきます」

「っ!!………」





僕は二人を背にして、強くなるための道のりへの第一歩を踏んだ。

ここで第一章、終了でございます!!!

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

まだまだ続きますので、気に入ってくださった方は引き続き読んでいただけると幸いでございます!!

何卒かしこみ、かしこみ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ