今、君は
はじめまして。占地茸と申します。
今回、正真正銘の処女作品で、文章もとんでもなく拙いものですが、気に入って頂いたら幸いでございます。
私が創造する世界を楽しんで頂けるよう精一杯努めますので、よろしくお願いします。
私は気づいたら、奇妙で神秘的な所にいた。
この木を中心に透き通った水が円を描いており、その内側と外側には草花しか生えていない。奥にこの木よりも十数メートルは高い木々が生い茂り、他にも苔の生えた大きな岩々が覆っているが、まるでここを避けるように、付近には木や岩が一つもなかった。
私はもう一つ気づいた。
少年が木の下で寝ている。いや、気を失っていると言った方が正しいだろう。黒髪で10歳にも満たないような容姿で、淡い青色の着物を着付けているが、所々破けていて、体中怪我だらけだ。
ああ、懐かしい。
俺はこの子をよく知っている。本当に、昔からの付き合いだ。見間違える訳がない。
俺はその子の頭を優しく撫でて、
ゆっくりと首を絞め始めた。
数十分前
「ハァ、ハァ」
「おい!そっち行ったぞ!」
「雑魚能力で弱っちいのくせに、逃げ足だけ速え!」
「まて!まだ終わってねぇぞ!花宇田!!」
まだ追いかけてくる。殴られた場所がまだ痛い。苦しい。
でも逃げなきゃ、追いつかれる!
逃げている内に、奥に森が見えた。
あの森はよく茂っているし、少しだけ知っている。あそこに逃げ込めば!
「!アイツ森ん中に逃げる気だ!」
後ろも僕が森の中に入ろうと気づいたようだ。
急いで森の中に投げ込む。
「っづ!うぐ!」
ガサガサッ
急いで入ろうとした為、腰まである草木の枝や葉が体を引っ掻いていく。服が破れる音と同時に痛みが走るけれど、気にせず森の奥へと向かう。
「あぁもう!鬱陶しい!」
「変なとこ入りやがって!逃げられるぞ!」
「くそ!これでもくらえ!」
ゴツッ
「っが!〜っ!」
(石がっ、あたまに!)
「はっ!当たったぞ!」
「そら!鬼はぁ、外!」
逃げられると思ったのか今度は石を投げてきた。
けど足は止まってる。今のうちにもっと奥へ!
彼らの様子を確認した後、すぐに僕はさらに奥へ進むために立ち上がり足を進めた。
「…!!〜‼︎」
後ろから聞こえる怒声が小さくなっていく。
でもまだ追おうとすればできる距離だ。
もっと奥へ、もっと奥へ!
…………
………
……
…
「カハァ、もお、むり、ハァ、ハァ」
足場が悪いところを走り続けたので流石に体力の限界がきた。
逃げるのに無我夢中で気づかなかったが、あたりを見回してみると木々や伸びた草ばかりで人の気配が一つも感じられない。どうやらだいぶ奥まで来てしまったみたいだ。
「ハァ、ハァ、まずい、ハァ」
しかも高い木々に覆われている為、太陽の光が入ってこない。これじゃどの方角から来たかも全く見当がつかない。
どうしよう。自分が知っているところよりも置くに来てしまった為、完全に迷ってしまった。
前には獣道がある。ここはまずい。まだ冬眠していない動物が通る可能性もあるので、僕は早く移動しようと立ち上がる。
グラグラッ
「ぇ、うわ!」
すぐ下の地盤が崩れ出す。
どんどんと身体から浮遊感を感じると同時に目の前の景色が上へと昇っていく。
(あ、まずい、死ぬかも)
ドスッ
「うがっ、うぅ、…あれ?」
どうやらあまり高い位置からの落下じゃなかったみたいだ。
「た、助かったぁ〜」
自分のお尻を撫でながら安堵していると、後ろに大人一人分くらいは入れる洞穴があることに気づいた。
どうやら崩れたおかげで入口を現したようだ。
スンスンッ
中から獣臭さはしない。
季節のせいでとても寒いし、ここの中で少し休もうと考え、洞穴の中に入っていく。
少し奥へ進むと向こうに温かな光が見えた。
「!!陽の光だ!」
僕は光が見えたことに嬉しくなり奥へ入って行った。
ゴロゴロゴロ、ガシャッ
「?、え!」
後ろを振り向くとバラバラに崩れたはずの岩が元へ戻っていく。急いで引き返すが、間に合わなかった。
「そんな!くっ、この!開いてよ!」
懸命に開けようとするが、岩はびくともしない。
「こんなに硬いのに、なんでさっきは崩れたんだ...」
少しの愚痴をこぼしながら、再度光の方へと意識を向ける。
(うう、怪しいけど、行くしかない)
僕は最大限の注意をしながら、足を進めて、洞穴を抜けた。
「...うわあ、なんだここ」
そこはとても奇妙だけど神秘的な場所だった。
一本の木を中心にして周りは草花しかはえておらず、さらにその周りを水が円を描いて流れている。さっきまで光がなく空気も冷たく、季節のせいでとても寒かったのに、ほどよい光と暖かさが冷え切った体を包みこんでくる。
(あ、何か掛かってる)
僕は中心の木に向かってまっすぐ歩く。
小鳥の囀り、微風によって靡く草、そして穏やかに流れる水の音が聞こえる。
「お面?」
掛かっているものに手を伸ばすと、それは武者鎧の面の様な少し禍々しいお面だった。少しぼろく感じるが汚れてはいない。まるで誰かがつい先程引っ掛けた様だった。
(なんでこんなところにお面が?あんまり汚れてないし、人が来ているのかな)
ガクッ
「ぇ、あぇ?」
緊張が少し解けたのか、足から力が抜けると同時に、身体中から痛みがじわじわと押し寄せる。
頭がクラクラすると思い少し触ると、ピチャッと音が鳴る。手を見ると指先から血が手のひらへ血が流れていく。恐らく石をぶつけられた時にできた傷だろう。
後ろを振り向くと血痕が僕の方へ続いてきていた。
ここに来るまでに気付かぬ間に、血を出してきたようだ。さらには、ここに来て疲れも急に押し寄せる。
「ぅぐ、だめ、だ、めを、あけな、き、ゃ」
疲労と貧血でどんどん視界が狭くなり、
僕は遂に意識を手放した。
……………………
………………
…………
……
…
目を開けると木が緑色の葉をなびかせている。
「…ここは、そうだ僕は皆から逃げてきたけど迷ってここに入ったんだった」
上半身を起こし、後ろの木を見ると、あることに気が付いた。
「あれ?お面がない。それに木もさっきまであんなに……」
「お、起きたか?」
「うわ!」
びっくりして声の方へ振り向くと、毛先だけが青いという特徴的な黒い短髪をなびかせながら、お父さんがいた。
「お父さん!帰ってきてたんだ!」
「ああ、最近は悪い奴がいないから、仕事がすぐに終わって帰って来れたんだ」
お父さんは国が運営する軍隊、菊守隊に所属し、悪い人や化け物を退治する仕事で常に忙しくしている為、普段は家にいない。
「春人は元気にしてたか?」
「…うん。とっても元気さ」
さっきまで気を失ってたけど、僕は心配かけまいと笑って答えた。
「へぇ、じゃあ何でこんなところにいるんだ?」
「うっ」ギクッ
「それに、さっきまで気絶していただろ」
「うぐっ」ギクギクッ
「んはは!お前は相変わらず分かりやすい反応をするなぁ!」
「ち、因みにどのくらい前からいるの?」
「うーん、ざっと3時間くらい前からかな?母さんからお前がまだ帰ってこないって聞いてさがしてたんだ。だから気を失ってるお前を見つけた時は何事かと思ったぞ」
どうやらかなりここで眠ってしまったらしく、そのせいで帰って来て早々父に心配をかけてしまった。
うう、ほとんどバレてる。僕は、隠しても無駄だと思い、すこしため息をつく。
「話してみろよ。なにがあったんだ?」
「ええっと、その、あの」
ここにいる理由。お父さんに話して良いのか?もっと心配かけちゃうのは嫌だし…
「ゆっくりで良い。大丈夫だ」
そう言うと僕を真っ直ぐ、そして暖かい目で見守ってくれた。
僕はその言葉を聞いてお父さんに相談することを決めた。
「実は、ぃ、いじめられてたんだ」
そう事実を言葉に出すと、言葉と同時に涙が込み上げてきた。
「同じ組にいる人によくいじめられてて、ひぐ、その、僕も殊・人・なのに、光ることしかできないから、よわっちいって、だれにも勝てない、ぐす、雑魚能力だって、殴られて、追いかけられたから、逃げてきて、ここにいるの…」
ああ、情けない。心配かけないって思ってたのに。決めてたのに。
「そうか…」
お父さんは顔を落として考え込んだ。
あぁ、やってしまった。きっと僕を情けないと感じているに違いない。話すべきじゃなかったと、全て話した今になって後悔する。
少し間が空いた時、お父さんがまた僕の方を見た。
「なぁ、お前は言い返したのか?」
僕は首を振った。
「じゃあ、殴り返したか?」
再び僕は首を振った。
そしたら、お父さんはにっこりと笑った。
「じゃあ、その勝負はお前の勝ちだ。春人」
「え?」
つい父の言葉の意味が分からずに聞き返してしまう。
何故僕が勝ちなのだろう。彼らにはやられっぱなしで何もできなかった自分の何が勝って
「いいか春人、強さって言うのは力だけじゃないんだ。いつだって、どんな時だって負けない心、挫けない精神だって強ささ。お前は虐められたのにも関わらず俺に心配かけないように、笑いかけてくれた。お前のその心は、優しさは、そいつらよりも強い」
僕の心は、みんなより…
「だから、胸を張れ。お前は、そいつらとの勝負に勝ったんだ。1番難しい心の勝負で、圧勝したんだ」
どうしてだろう。なんでか涙がまた溢れてくる。
「僕は、…勝ったの?」
顔を上げると、お父さんは再度にっこりと笑った。
「ああ!お前の勝ちだ!よくやったぞ!」
そう言って僕の頭を強く撫でてくれた。
「ゔんっ、ゔん、 うぐっ、ズビッ」
「ははは、勝った奴が泣いてどうすんだ!」
僕はお父さんの前でまた泣き出し、そのままお父さんに寄りかかってまた寝てしまった。
お読みいただき本当にありがとうございます!
読みにくかったりしたら大変申し訳ありません…。
ダメ出しでも全然構いませんのでご感想などお書き頂いたら励みになります。気に入って下さったのなら、是非よろしくお願いします!