龍王妃とクリスタルの謎
龍王妃とクリスタルの謎
貴族の家系で生まれ育った勇者は知的な性格で図書館によく通っていた。
ここアトラルカ帝国では貴族は王宮での生活が主であった。だが主人公のメルセスは
図書館で見た本での外での生活にあこがれていた。
思春期を迎えた貴族の子供は進路はみな往々にして私立校へ進学する。
だが主人公のメルセスは平民が暮らす公立校へ進学した。
家族は反対したが、メルセスは自分の意思を押し通した。
ラジエルト記念高等学校では、現実の世界でいう底辺高校で、その地区の出来の悪い
不良、もしくは知能の足りない子供が通う高校だ。
メルセスは私立に通うよりもこっちのほうが面白いと考え、ラジエルト高校に通うことに
した。
最初は貴族の子供ということで敬遠されたが、持ち前の知恵を使って薬草の効率的な繁殖
方法、フィールド遠征時の効率的な経験値配分理論について持論を展開し、夏に開催され
る
スクール対抗仮想レイドではラジエルト記念高校は優勝することになる。
この功績が認められメルセスは学園内でもカーストの頂点に上り詰める。
その過程で慈愛に満ちた髪の長い女リラと付き合うことになり、高校卒業後、
二人でギルドを開設し、貴族、平民と関係なく交流できる環境を形成した。
ギルドではフィールドワーク、他ギルドとの交易、町内での物販などで生計をなり建てて
いたが、ある時、ギルド内に裏切者が現れる。
平民出身のルスワードだ。
エメラルド鉱石の発掘方法をメルセスが発見したとき、この報告文書を魔導院に提出する
前に自らの手柄にしようとしたのだ。その父親は厳格な性格で、これを息子の責任とし、
ギルドから追放するようメルセスに進言する。メルセスはこれを了承。
しかしルスワードの父親カジリウムはメルセスに鉱石の採掘対決を挑む。カジリウムはア
トラルカ帝国最大のギルドをケツ持ちにしており、ドラゴンの巣の秘宝クリスタルを発掘
しようと、遠方の地図上にない地域、ダルマスカ地方まで進出するつもりらしい。このル
ートをどちらが早く確保し、クリスタルのアトラルカ帝国までの運搬経路を構築し、発掘
方法まで確立する競争を申し立ててきたのだ。
ダルマスカ地方まではアトラルカ帝国から海を渡らなければならなかった。
航海術、測量士、海に航路のシンボルを設置する技能士まで雇わなければならなかったメ
ルセスはカジリウムに大きく後れを取った。
だがその流れまでメルセスは楽しんだ。
クラーケン、巨大サメなど大型モンスターに襲われるが、それらを退け、ダルマスカ地方
まで進出した。ダルマスカ地方は巨大な火山が中央にそびえ、岩石地帯が7割がたをしめ
ていた。しかしメルセスは双眼鏡で村が存在していることも確認した。
ワイバーンの群れが頭上を飛んでいるのが確認できた。
飛竜はプライドの高い生き物で自分たちの縄張りがよそ者に荒らされることを嫌う。
対するカジリウム一派はカジリウム自身に狩猟スキルが足りないため、カジリウムを護衛
するランサーがついており、さらに直線経路で火山に上っていたため、飛竜族の妨害を受
けていた。
その地に住む龍人族を訪ねることにしたメルセスは、長老に挨拶をし、クリスタルの運用
で来ていることを説明する。
だが長老には断られる。飛竜と唯一コミュニケーションを図れる龍人族にとって、ワイバ
ーンはむしろ部外者との交流を避ける都合のいい存在だったのだ。
事情を知ったメルセスは、自分たちが競い合っていることがバカらしくなり、カジリウム
に鉱石採掘を辞めさせるように進言する。
だがあと少しでドラゴンの巣までたどり着こうとするところだったので、カジリウムはド
ラゴンの巣へギルドメンバーを引き連れ進出していった。だが中からドラゴンが現れ、カ
ジリウムはドラゴンの怒りを買ってしまう。カジリウムを助けるために、ドラゴンと対峙
しようとする主人公。ついにドラゴンの怒りを買ってしまったか。と呆れる長老。こうな
れば、もう討伐するしかありません。いや、それはならん、そなたたちでは絶対にかなう
ことはない。ではこの地を脱出すべきです。 いや、それもならん。ドラゴンはプライド
の高い生き物じゃ。怒りを買ったからには報復せねば気がすまんだろう。今我々が動かな
ければ、あの巣に入っていった連中は全員食われて死ぬ。だがそれでドラゴンのプライド
は確実に収まるはずじゃ。 それじゃ、かわいそうよ!とリラが進言する。そなたたちで
はかなわぬ…
その場に佇み、ことの展望を見守る主人公たち、だが長老がリラのペンダントを見てある
ことに気づく。そなたそのペンダント・・・どこで!? これは・・・母の形見なんです。
私は戦後、アトラルカの平民の家に養子として預けられましたが。そのペンダントはピュ
アクリスタル!かつてから龍王にのみ継承されてきた秘宝じゃ。もしかすると、この状況
を収められるかもしれん。 どういうことですか?村長。 18年前のことじゃ。、この島で
戦争が起こったんじゃ。そなたたちと目的は同じかは知ったことではないが、クリスタル
を求めて、この島にギルドの連中が押し寄せてきたんじゃ。さながら飛竜対人間族といっ
たところじゃ。当時の龍王妃は事の顛末を収めるため、このドラゴンを呼ぶ笛を使い、島
中の飛竜を目覚めさせた。そして人間どもを撃退するに至ったがドラゴンを呼ぶ笛は半生
分の寿命を費やしてしまう。戦争後この村では2派に別れた。龍王妃は思った。ドラゴン
を呼ぶ使命を果たした以上、この子が龍笛を使うことはない。普通の女の子として育てて
やりたい。と。かねてから交流があったアトラルカ帝国へ赤ん坊を送り届けるもの、その
旅は同時に龍王妃の死を見届けるということじゃったそしてドラゴンとの共存方法を確立
するもの、儂はもう年じゃ。今いる村の連中とドラゴンとの共存方法を確立する派閥に付
いた。当時龍王妃には赤ん坊がいた。船の中での記憶は、そなたが幼すぎるから記憶がな
いのかもしれんが、このダルマスカからアトラルカ帝国までの航路にたどり着いた時、龍
王妃は息絶えたと儂はこの村に住む当時の船員から聞いておる。
「母は、最期になんと・・・?」
「これからどんなにつらいことが待ちわびていても、このペンダントがあなたを守ってく
れるはず。だから、笑って生きるのよと、そういっておった。」
「・・・」
「まぁ驚くのも無理はないじゃろう。当の本人が一番困惑しているはずじゃ。この写真が、
当時のお前さんと、母の龍王妃じゃ。」
リラはコンタクトを外した。
黄金色の瞳の色、先のとがった耳、それだけじゃない。
目の形や口元からリラは自分の母親だと直感できた。「これが・・・私の本当のお母さん。」
「見せて。」「本当だ。リラにそっくりだ。 ・・・なんというか、怖くないかい?リラ。」
「大丈夫よ、こんな状況だけど、今すべてがわかった気がする。」
「このまま頬っておいても無法者が食われて、ドラゴンの怒りは収まるじゃろう。感傷に
浸ってしまうのも分かるが、この状況を収めるもう一つの方法は、ドラゴンを鎮める笛じ
ゃ。これを使えば、ドラゴンの怒りは収まり、あの無法者連中も助かるじゃろう。」
「私、やってみます!」
「早まっちゃダメだ!リラ。この笛を使うと、50年の寿命を失うんですよね?」
「いや、そのペンダントの輝きを見てみるのじゃ。煌々と輝いておるじゃろう。リラモン
ドの魔力が込められておるようじゃ。もしかすると、寿命を失わずに済むかもしれん。」
「そんな掛けには乗れない!」
「ごめん。メルセス、私、ずっと虐待を受けていたわ。あの汚らわしい竜人族の末裔だっ
て。
外に出すのも恥ずかしいと。コンタクトを強制的につけられて、髪を切ることも禁じられ
たわ。耳を出すなって。このペンダントだって何回売りに出されそうになったかわからな
い。だから逆に学園では慈愛に満ちた態度でみんなに接していた。あなたのどんどん世界
を構築して、他人との関係を気づいていく姿に、すごく安心していて、あなたと一緒にい
るときだけ、自分がみんなと同じだと気づくことができたの。」
「そうか。だったら猶更、このまま顛末が収まるのを見届けよう。これからも一緒に、ギ
ルドの仲間と農園をしたり、交易をしていこうじゃないか。」
「でもここで助けられる命を手放すことと、自分のできることがあるとしたら、私は自分
にできることはしたいの。」
「・・・。わかった。もし寿命がペンダントに吸われる結果になったとしても、50年後の
君を愛そう。」
「ありがとう」 (龍たちよ、どうか静まって・・・!)
村長から笛を受け取ったリラは鉱山の丘で天空に向けて笛を鳴らした。その旋律はドラゴ
ンの耳に届き、瞬く間に飛竜たちは島から消えていった。
カッ! そのときペンダントから光が解き放たれ、リラの身体を包み込んだ。
老けこんだ姿を想像したメルセスだったが、なんとリラは子を宿していた。
ペンダントにはめ込まれたピュアクリスタルの効果は、魔法の詠唱、もしくは神器の入力
操作を受けると大量の魔力と、愛情をため込むことのできるものだったのだ。
魔力と愛情の効果によって、寿命を奪うペンダントのはずが、新たな命をはぐくませた。
メルセスはリラと結婚して、子供が生まれない不妊症に掛かっていることに気づいた。メ
ルセスは子供が居なくても、満足いく人生にしようと、ギルドを開拓し、幸せな人生を築
こうとしていた。
だがこんな形で不妊症が治るとは思ってもおらず、思わずリラに飛びついてしまった。
「これからは子供を育てながら、旅を続けよう。」
「ええ。」
「あれ?俺たち何をしていたんだっけ? ミスリル炭鉱の採掘がまだ終わっちゃいねえ!
戻るぞ!「あいあいさー!」
カジリウム一派の欲望は笛の音色によって打ち砕かれ、出港し、島を後にした。
(カジリウムさんたち、帰っていくな、結局クリスタルで利益を得ることが目的だったの
か・・・。)
「村長さん、ごめんなさい。竜たちと共存して生活していたのに・・・。まさかみんない
なくなっちゃうなんて・・・。」
「いやあ、いいんじゃ。こんな素敵な光景がみれたんじゃ。14年前の生活にまた戻るだけ
じゃよ。強い子になって、リラモンドも、誇りに思っているじゃろうよ。」
それとメルセス君だったかな?君にはこれを。
村長はクリスタルの生成方法が書かれた手記をメルセスとサンプルであるクリスタルを手
渡した。
「これは・・・。いいんですか?村長?」
「ああ。君は生産技術確立のスペシャリストなんじゃろ?今去っていったギルドの連中と
違って、君ならうまく運用してくれるはずじゃ。それが成功したら、もう誰もわしらの島
をゆすろうなどとは思わんわい。」
「わかりました。ではこの島までの航路は、決して口外することのないように約束します。」
「そうじゃな。それだけは頼んだよ。ではリラ、メルセス君、この先幸せにな。」
「村長さんたちも、みんなも、元気でいてね・・・!」
「ああ、じゃが、たまにはメルセス君と、ギルドのみんなで遊びにきておくれ。それまで
儂は生きているかはわからんが、村のみんなは歓迎するよ。」
「それでは。」
「出航!―」
メルセスの旅はまだまだ続く。