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血剣の巫女  作者: mist rain
巫女の章
6/6

1-3 洗礼と別れ

 それにしても使徒ですか。私のように洗礼を受けるときに、使徒として指名されるものだと思っていましたが、いろいろあるのですね。


「というか、いつの間に洗礼受けたんですか」


「え?洗礼なんてどこで受けても一緒だろ?」


「え?」


「いやいや、知らなかったのか?あーでも、それを言われるのは洗礼の後だったな確か、うんうん」


「ちょっと、一人で話を進めないでください」


「そもそも、あーこれは言っちゃだめだな」


「えー」


「いや洗礼前のお前はもう少し純粋でなくてはならない。うん」


 むー、なんですかこの人は、いぢわるします。そういうの気になって夜も眠れなくなるんですよ。教えてくれたっていいじゃないですかー。


「まあそんなむくれるな、多分これは俺が使徒になった時についた知識だからな、『一般人には公開されない情報です、お引き取りください』、ってやつだ」


 お引き取りくださいと言われたので素直に引き下がるとしましょうか、このもやもやは後でお菓子でも買ってもらって何とかしましょう。


「そんなことより、だ。今は、俺が使徒になったことなんかはどうでもいい。ほら、久しぶりに会ったお兄ちゃんに話したい事とかないのか?」


「えー、なんですか急に」


「てかなんだよその改まった話し方は」


「あーこれは訓練です、お母さん曰く『領主様の前で粗相をしないように』ってことらしくて、街の中ではこうやってしゃべるように村を出る時言われました」


「はえー、いやなんか嫌われたのかと思ったわ...」


「まあ嫌っているわけじゃないですよ?」


「なにその含みのある言い方怖い」


「あーでも、もうお兄ちゃんとはしばらく会えなくなるんですか?」


「まあそうだな、少なくともノーズドコに行って、バルウーサの使徒コミュニティに入らなくちゃいけないし、使徒になったからには行商人に『ならなくてはならない』からな」


*注 バルウーサ:意思の精霊、のちに行商の精霊として信仰を受ける。彼の使徒は、言語に含まれた意思を解読し、意味を理解できる。また、自身の言語に意味を乗せ、相手に理解させることもできる。商人や外交官に信者が多く、特に『加護を受けた商人は行商人にならなくてはならない』という商人間の慣習が有名。


「そういえばありましたね、そんな慣習」


「まあ世界を回れる人間なんてめったにいないわけだし、この運命を受け入れていくことにするよ」


「そうして私は村で細々と麦を育てるのですね」


「いやそれが普通だから。なに悲劇の少女みたいになってんの」


 お兄ちゃんはいつもこんな感じです。冗談を言って、おどけて、私を楽しませてくれる、優しいお兄ちゃんです。

 でも、もう少ししたら、お兄ちゃんとは会えなくなってしまうんです。仕方のないこととはいえ、寂しくなります。だからこそ、今日はお兄ちゃんとたくさん話をしようと思いました。お母さんたちに感謝ですね。


 まあ、私はやっと十歳になろうという子供ですから、こんな意気込みもすぐ崩れて、寝てしまうんですがね。


 悲しいかな...

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